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ピアノ合わせに行ったら、出張レッスンを受けちゃいました

 そろそろ声楽の発表会も近づいてきたので、ゴールデンウィークの最中でしたが、第一回目のピアノ合わせをしてきました。ちなみに、Y門下では(ってか、たいていどこでもそうかもしれないけれど)ピアノ合わせは2回あります。ピアノ合わせというのは、本番ピアニストさんとの打ち合わせです。本番ではどう歌いたいのかをピアニストさんに伝えるわけですね。曲全体のテンポとか、ゆっくり歌う場所とか、逆に早目のテンポで飛ばしたいところなどを始め、ピアノの音に関するリクスエストなどもあればします。つまり、本来なら指揮者が決めるような事を、声楽では歌手が決めるので、それを事前にピアニストさんに伝えて、すりあわせておきましょうって事です。

 キング先生の時は、ピアノ合わせの時間が短くて、一回通して歌って、ちょっと話をすると、もうタイムアップって感じでした。で、ピアノ合わせを終えると、帰り際に先生から、あれをピアニストさんに伝えていない、これも伝えていないなど、ダメ出しを必ずされて、でもその内容をピアニストさんに伝えるチャンスももらえなくて、いつもピアノ合わせをすると凹まされてばかりいたので、ピアノ合わせには苦手意識しかない私でした。

 門下が変われば、色々とやり方は変わります。

 Y門下でのピアノ合わせは、デュエットもあるので、妻と合わせて1時間でした。時間的にはかなり長めに時間が確保されていますが、それでも決して時間に余裕があるわけではありません。でも、ピアニストさんがかなりの凄腕(音大でピアノを教えているそうです)なので、何をどうやっても合わせてくれる上に「こう歌うといいんじゃないの?」的なサポートもピアノで伝えてくれます。それほどの凄腕ピアニストさんなので、非力なアマチュア歌手にとって、とても頼りになる本番ピアニストさんなのでした。だから、本来的な“ピアノ合わせ”にはあまりならず“本番ピアニストさんを招いて、いつものレッスンをする”みたいな時間になります。ですから、時間が長めでも余裕がないんですね。

 人にもよるのでしょうが、私はY門下のやり方の方が、気持ちが楽ですし、本番に向けて「よしやってみよう」という気持ちになれるので好きですね。キング先生のやり方だと、色々と鍛えられるんでしょうが、それはメンタルの強い人だけで、私のようにメンタルの弱い人間は、本番前に自信をなくして、追い込まれて、自暴自棄になるだけです。

 さて、ちょっぴりドキドキしながら、ピアノ合わせに向かいました。

 場所はいつものお教室ではなく、先生の本宅のレッスン室で行います。ここのレッスン室は、個人の住居にありながら、かなり広くて、ちょっとした合唱団の練習もできるくらいに開放的な空間なので、私は好きです。本当は、ここで毎回レッスンが受けられたらいいんですが…ねえ。

 で、お教室に入ったら、Y先生と、いつものピアニストさんと…見知らぬ男性がいらっしゃいました。Y先生曰く「今日は、すとんさんの歌を、特別にK先生にみてもらう事にしました」ときました。K先生とは、今回の発表会に来てくださる、ゲストテノール歌手さんで、他の門下生たちとデュエットをたくさんしますので、その合わせのために来ていて、ついでだからテノールである私の歌もみてもらいましょう…という運びになったようなのです。K先生はY先生の留学仲間で、何年もイタリアの歌劇場で歌っていたという経歴の持ち主です。もちろんクラオタさんたちが知っているような有名な音楽家さんたちとの共演もあるほどの歌手さんです。「僕の英語はイタリア語訛りが強くてね」なんて事をサラっと言っちゃうほど、イタリア語ペラペラの人です。

 特別講師によるレッスンと聞いて「え?」と絶句の私。なんか、精神的に追い込まれた? 本番よりも、緊張するじゃなんですか?

 とりあえず発声練習などせずに、いきなり歌うことになりました。ちなみに、Y門下では、ピアノ合わせや本番の時には、発声練習はせず、たいていはそのまま歌うことが多いです。どうしても発声練習をしないと不安だという人は、事前にそれぞれで発声してきましょうというスタンスです。この点に関しては、短い時間でも必ず発声練習をしてくださったキング先生の方がありがたいのです。

 で、発声練習もせずに、いきなりモーツァルト作曲「コジ・ファン・トゥッテ」の「Un’aura amorosa/恋のそよ風」を歌いました。で、歌い終えると、さっそくK先生のレッスンが始まりました。

 「本番を見据えた歌い方としては悪くないけれど、練習ではそういう歌い方ではダメですよ。練習では常に120%の力で歌わないと、いつまでたっても歌の筋肉が育たないからね。本番用の歌い方は、本番でやればいいんですよ。大丈夫、本番の時は、スイッチが入るから、自然と本番用の歌い方になります。だから、練習の時は、出し惜しみせずにやるわけですが…今日はピアノ合わせです。まあ、本番みたいなものだから、今日はそれでいいでしょう」 とりあえず、歌い方はOKみたいだけれど、もう少し声を出しなさいって事だと判断しました。

 Y先生からは「そのテンポで行くの?」と尋ねられました。たしかに、今私が歌っているテンポは、かなりゆっくりめです。曲調から考えると、このくらいのテンポがいいかなって思っている私ですが、テンポがゆっくりだと、色々と演奏のアラが見えやすくなるので、もう少しテンポを上げた方がいいのではないかというアドヴァイスをいただきました。「それにテンポを上げた方が歌いやすいと思うし、速いテンポでも対応できるでしょ?」 まあ、そうですね。では、本番に向けて、少しテンポアップしてみます。

 ピアノ合わせという名のレッスンなので、曲の頭に戻って、細かく区切って指導を受けながら歌うことになりました。

 で、冒頭に戻って、歌い直そうとした時に、突然Y先生が「あれ、この曲、短くカットできますね」と言いました。

 私がこの曲を勉強するにあたり、音楽之友社の楽譜を使っていますし、日頃はY先生も同じ楽譜を見てレッスンをしてくださるのですが、今回はY先生、音楽之友社の楽譜でなく、ペータースの楽譜見ていたらしく、それで気づいたんだそうです。

 どれどれ…と思って私もペータースの楽譜を見せてもらいましたら…曲の最後近くの4小節ばかり、カットしてもいいですよと明記されていました。どの部分かと言うと“alcor porgera”を3回繰り返して歌う箇所があるのですが、それを1回だけ歌えばいいですよ、残りの2回はカットしていいですよって指示なんです。実際、この箇所にたどり着くと、もうヘロヘロで、同じようなフレーズ、それも残り2回の方が、最初のフレーズよりも音が高くて大変なんです。そこをカットしても良いとは…ううむ、甘い誘惑じゃないですか? でも私はそこは頑張る事にして、カットしない事にしました。ううむ、ほんと、誘惑だなあ。

 家に帰ってから、当該箇所を(ペータースは持っていないので)ベーレンライターで確認したら、もっと驚きました。ベーレンライターは、その4小節のカットの指示が無かったんです。「ああ、ペータースは歌手に優しいけれど、ベーレンライターは歌手に厳しいなあ…」と思ったけれど、もう少し詳しく楽譜を見ていたら、ベーレンライターだと、最後の4小節どころか、このアリアは大雑把に言えば、ABAという形式で書かれているんだけれど、最後のAにあたる部分を丸々カットしてもいいよと書いてありました。つまり、41小節まで歌ったら、73小節まで飛んじゃっていいよ…って、30小節以上もカットですかい! ベーレンライターは歌手に優しすぎますって! 確かに、40小節まで歌うと、歌手は本当にヘトヘトになります。私は、そこから立ち直る方法をY先生に教えていただいたので、41小節以降も歌えますが、以前の私なら、ベーレンライターの優しい誘惑に、まんまと乗っかっていたかもしれません。

 とにかく、このアリア、難しいので、あっちこっちカットしていいと楽譜に書かれていますが、私、どこもカットせずに頑張るつもりです。

 あ、そう言えばピアニストさんが「後奏はカットしていいですか?」とか言ってましたっけ(笑)。このアリア、後奏がかなり長いんですね。で、Y先生は「カット、OKです」とおっしゃっていましたので、この曲、歌はカットしませんが、ピアノは一部カットして発表会で歌います(大笑)。

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コメント

  1. wasabin より:

    いよいよ佳境に入ってきてますね。
    それにしてもすとんさん、ピアノ合わせに1時間!!
    羨ましい~
    K先生の教室は大きな問題無ければサラッと本番と同じ。

    M先生は「当日に一々止めて」、楽譜に無い音符や記号をピアニストさんに
    先生が伝え、私が歌う・・・音楽が流れないんですよ。
    で、嫌になっちゃって、「xピアニストさんで歌いたくないです><」と。
    ”Salute a la France”って結構暗黙の標準があるんです。
    コンサートピアニストでなくレッスンピアニストさんだから、慣れてないんですね。

    そんな事を思い出しながら、読むと、それも勉強かなと思えるようになり、
    (もちは餅屋!音が断然綺麗でしたーピアニストさんです)、
    今年はお膳立て通りにと思います。

    それと、先生が二人も付いてなんて有り得ない好環境!!
    プラス、プロ歌手さんですかぁ
    羨ましい~

    上達早いはずですよ~

    年2回位、他所の発表会みたいですが、その日は無理かも・・・

  2. すとん より:

    wasabinさん

    >それと、先生が二人も付いてなんて有り得ない好環境!!

     実は隣の部屋にソプラノのF先生もいて、じっと聞き耳を立てていたそうです(笑:後でアドヴァイスをいただきました)。なので、正確にはプロのオペラ歌手が三人+プロのピアニストさんが付いていたわけです。それに加えて、ピアノ合わせにたっぷりと時間が用意されていて、いやあ、ほんと、あり得ないくらいの好環境なのは、認めます。

    >コンサートピアニストでなくレッスンピアニストさんだから、慣れてないんですね。

     あ、分かります。私もY先生がお膳立てしてくださる舞台は、プロのピアニストさんが伴奏してくれますから、色々と助けてくれますが、秋のクラシックコンサートは、私の場合は、同じアマチュアのピアニストさんと組みますので、お互い何も知らないので、一つ一つ学び合いながら、確認しあいながら、舞台を作っていきます。慣れていないと言えば、お互い、レッスピアニストさん以上に慣れてませんが、一緒に舞台を作っていく感じがとても良いんですよ。

    >上達早いはずですよ~

     いやあ、それはどうでしょう。ただ、Y先生のところで勉強を始めてから、メキメキ腕が上がった事は感じてます。Y先生の教え方が上手なのと、先生との相性が良いから、上達しているんだと思います。

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