人は老います。老化します。年を取ると、若い時と比べ、カラダのあちこちに変化が生じます。いわゆる、加齢による影響が出てきます。今回の記事は、某音楽家の方と、加齢による影響について雑談をしたので、そこで出た興味深い話を書いてみます。
ちなみに今回、私と雑談してくださった方は、私と同年輩のオルガニストさんです。
やはり年を取って感じるのは、若い時ほどは指が動かなくなるそうです。もちろん、曲が弾けなくなるほど衰えるわけではないそうだけれど、動きに余裕が無くなってくるんそうです。まあ、これは素人でも、なんとなく想像できます。
面白いのは、指の動きは鈍るそうだけれど、足(オルガンは足も演奏に使います)は、それほど鈍るようには感じていないそうです。まあ、元々、足は指ほどスピーディーな使い方はしないので、まだ感じていないだけなのかも…と言われてました。
視力が弱まって、楽譜が見えづらくなるとも言ってました。特にオルガンの場合は、他の楽器と違って、演奏する場所がだいたい暗いんだそうで、元々楽譜は見えづらい傾向があるんだそうだけれど、年を取ると、それがますます顕著になってきたんだそうです。対抗策としては、楽譜の拡大コピーで乗り切っているんだそうです。
衰えるのは視力だけでなく、暗記力も衰え、暗譜するのがドンドン面倒になってくるんだそうです。暗譜に困難を感じ始めると、それに伴って、新しい曲にチャレンジするのが、ますます億劫になってくるんだそうです。若い時は、レパートリーの拡大に努めていたそうだけれど、今はレパートリーを増やすよりも、レパートリーを深めていく事を重点的に行っているそうです。まあ、実際の話、コンサートなどでは、限られた曲しか演奏しないので、レパートリーが増えなくても、職業的にはあまり問題ではないんだそうです。それに我々の年代だと人生経験も豊富ですから、同じ曲でも、若い時とはまた違った味わいになるので、レパートリーを深めていくというのも、それもまた良しなんだそうですよ。
時折、自分が老いた事を忘れて、うっかり若い時と同じような感覚で、思わぬ失敗をしてしまうのだそうです。感覚は若い時のままでも、カラダはすでにご老体って事なんですね。
意外に思ったのが、老化とともに、絶対音感が狂い始めてきたんだそうです。聞こえてくる音と認識する音にズレが生じるようになったのだそうです。ですから、そこを常に知的に修正していかないとマズくなったんだそうです。ちなみに彼女の場合、若い時と較べて、音が半音高く聞こえる(ってか認識してしまう)ようになったのだそうです。だから、耳で聞こえた音を頭の中で半音低く変換して処理しないと、色々とヘマるようになったんだそうです。
元々絶対音感なんて持っていない私には、理解できない世界の話でした。
あと、年を取るに従って、なんとなくリズムのキレが悪くなってきたなあと自覚するようになったんだそうです。速いテンポの曲に対応するのが面倒になる…と言うか、遅いテンポの曲を好むようになってきたんだそうです。
そして何より、年を取って、人も古びるけれど、楽器も古びるようになって、自宅の(練習用の)オルガンも頻繁に修理するようになり、自分と一緒に楽器も年取っていくんだなあって思うんだそうです。
音楽家ってカラダを使う商売ですからね。ある意味、老化というものを、我々一般人よりも強く意識する職業なのかもしれないなあって思いました。
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コメント
スポーツ選手と同じなんですよね。
この間息子が聞こえた高ヘルツの音が、私には聞こえませんでした。
一挙に年を感じてしまいましたわ。
おぷーさん
高周波は私もだいぶ聞こえなくなって、それはそれでうれしいです。だって、家電(クーラーとか冷蔵庫とか)が古くなって、ブーンと音を立てるようになっても、私はそれに気づかずに平気で使えるようになりました。息子は異音が聞こえるので、とてもイヤがってますが、私は平気です。音がする以外は、全く大丈夫なので、買い換えるのがモッタイなかったりしてます(笑)。
私も心配になり、モスキート音、聞いてみました!良かった、大丈夫でした!耳がやられたら、もう音楽は厳しいですもんね.
あと、10年は歌おうと思ってましたから!(*^_^*)
春だし、頑張るぞ〜〜
アデーレさん
モスキート音ですか? 私は余裕で聞こえませんよん。若い時は、寝室に蚊が一匹でもいたら、気になって眠れませんでしたが、今は分からないので、全然平気です。それにだいたい、血も美味しくないみたいなので、あまり蚊に食われなくなりました。
冷蔵庫のブーンという音、うるさいですよね。でもあれは高周波ではありません。関東なら50ヘルツの低音ですよ~。蚊の羽音もたいして高くありません。蚊だってそんなに速く羽ばたけませんから。絶対音感、半音も違って聞こえるようになるのだったら大体音感といったほうがよいのかも。1ヘルツ違えば一秒間に1回うなりが聞こえる理屈ですから。
こうじさん
高周波のお話は、こうじさんのおっしゃる通りで大正解なのですが…同じ言葉でも、専門用語として使う場合と、いわゆる一般用語として使う場合では、言葉の意味が異なるなんて事は、まああります。
代表例としては“放射能”なんてのがあります。
実際、ネットをググると“放射能”という言葉の用例として、次のような文章が出てきます。これらは“放射能”という言葉を、きちんと定義された専門用語として使っているわけではなく、あくまでも一般用語として“放射能”という言葉を使っているわけです。
「関東での放射能汚染の現状を教えてください」
「福島第一原発から噴出する殺人放射能の現実!」
「放射能で人々に出る体調不良」
でも、これらの言葉って、おそらく専門家さんたちに言わせれば間違えているわけで、、次のように書き改めた方が正しいですよね。
放射能汚染 -> 放射性物質の拡散状況
殺人放射能 -> 人間を死に至らしめるほどの高放射線量
放射能で人々に出る -> 放射線被曝によってもたらされる
“高周波”という言葉も“放射能”ほどではないけれど、やはり専門用語として使う場合と、一般用語として使う場合では、意味が異なると思います。音波に関して“高周波”と言えば「可聴音域を超えた高音」であり、超音波の別名です(だから人間の耳で聞くことはできません)が、一般用語としての“高周波”は、単に「甲高い音」という意味で使います。だから、蚊の羽音(モスキート音)も冷蔵庫の騒音(基音は低くても、倍音部分が強調されているので、聴覚印象では甲高い音として聞こえます)も、世間では普通に“高周波”と呼びます。
ここのブログでは、学会で科学論争をしているわけではないので、一般用語としての意味で言葉を使うのは、全然かまわないと思ってます。
絶対音感に関しては、素人の“大体音感”とは全く違うと思います。きちんとした職業音楽家の耳の話ですから、やはり「老化によって絶対音感が誤差を生ずるようになった(けれど、それを知的に修正して正確さを保っている)」だけの話だと言うべきでしょう。“大体音感”は不正確な音感ですが、彼女の音感は今でも(修正作業を加えるので)正確であって、きちんとプロとしての能力水準を維持しているものと思われます。