芸事における、良い師匠の条件というのは、色々あります。
たぶん、一番大切な条件は『天才ではない』って事じゃないかなって思います。芸術家の中には、いわゆる“天才”がいますが、天才と呼ばれる種類の人って、凡人が努力して、やっと手に入れた事を、生まれながらに持っていたりして、それらを使って勝手に成長してきたので、誰に教えられるでもなく、一流になれた人たちなんです。ある意味、神様に特別に愛された人と言えるでしょう。
そんな人たちは、芸術家の中でも一部の別格です。多くの職業芸術家さんたちは、みな天才ではなく、血と汗と努力で今の地位に辿り着いた人がほとんどでしょう。師匠にするなら、天才ではなく、こちらの“血と汗と努力”の人の方が良いと思います。つまり、さほど豊かな才能は持っていなくても、努力と切磋琢磨で駆け上がった人の方が良いのです。
こういう人は、上達するために、多くの事を学んでいますから、教える立場になった時も、教えるためのノウハウをたくさん持っているからです。
つまり、師匠にするなら、天才よりも苦労人の方が良いのです。
あと、声楽だと、声が分かる事が大切です。たまにいるんですよ、生徒の声種を間違える先生って。技術がない人は論外ですが、技術があっても、自分の演奏にしか興味のないナルシス系の人は、自分の事しか分かりませんからね。そういう先生だと、自分のところに来た生徒は、何でもかんでも自分と同じ声種に聞こえちゃうみたいです。そういう人の耳は、あまりアテになりません。当然、師匠には向きません。逆に言うと、自分の事はもとより、他人の事に気を配れるような、調整型の人の方が師匠としては良いんだろうなあって思います。
次は音楽に限らないけれど、レッスンプロよりも、演奏で食べている人の方が良いかな? もちろん、例外はあります。子どものピアノの先生を探すなら、演奏で食べている人よりも、レッスンプロの方が良いでしょう。と言うのも、子ども向けの先生って、演奏家であるよりも、保育者としての資質の方が多く問われるからです。で、演奏家と保育者って、ある意味、適性が真逆ですから、演奏家として成功しながら、子ども向けのピアノの先生が出来る人って、まあ有り得ませんからね。
でも、生徒が大人ならば、レッスンプロよりも演奏家の方が師匠としては良いと思います。理由は簡単で、生徒がそれを望んでいるからです。ま、実際、アマチュアを教える程度なら、教える方が、プロの演奏家として活動していようといなかろうと関係ないんです。
でも、大人の生徒って厳しいんです。師匠を尊敬したいんですよ。そんな時、自分の師匠がプロの演奏家なら簡単に尊敬できますが、自分の師匠がレッスンプロであり、演奏会もせいせい年に2~3回程度しか行えないレベルだと、生徒として、ちょっとばかり肩身が狭かったりするんです。ましてや、数年に渡って演奏活動をしていなくて、発表会などでも模範演奏をしてくれない先生だと、ほんと、がっかりするものです。
演奏活動をしているかいないかなんて、先生としての能力とは、全く関係ないかもしれませんが、生徒が尊敬できたり、自慢できるタイプの先生の方がいいに決まっています。
あと、演奏家としての職歴の豊かさとか、人脈の広さなどは、良い先生として大切な事だと思います。コネの力は馬鹿にできません。先生の人脈の広さのおかげで、多くのことを学べるチャンスがあるかもしれないじゃないですか。
後は、現実な問題として、近所でお教室を開催している事とか、お月謝が自分にとって適正であるかどうかという点も大切です。
逆にどうでもいい事としては、先生の出身大学とか、年齢あたりかな?
そして、実は、一番大切な条件は、自分と相性が良い事があげられます。やはり、先生と気が合う事は大切な事ですし、たとえ技術的に劣る先生であっても、人間的な相性が良い方が習っていて楽しいですからね。大人の習い事は、効率よりも楽しいことの方が大切です。厳しくて人間的に合わない先生に習って上達する方が良いか、上達するのは遅々たるものだけれど、毎回毎回レッスンが楽しくて、趣味人生がバラ色の方と、どちらが良いかって事です。
そういう点では、生徒とよく遊んでくれる先生って、最高の先生なのかもしれません。
…と条件を上げると、今のY先生よりも、前のキング先生の方が私にとっては良い先生だったという結論になるかもしれません。ええ、そうなの? 実際、キング先生はよく生徒と遊んでくれますからね。
でも私は、基本的に真面目だしハングリーなので、楽しい先生よりも、上達させてくれる先生の方が、やっぱり良いなあ。
自分で良い先生の条件を上げといて、最後にちゃぶ台返しもなんなんだけれど、やっぱり、楽しい先生は最高だけれど、自分を上達させてくれる先生には敵わないって思います。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村
コメント
大昔、某途上国に住んでいた頃、
狭い日本人社会に、2人の音大出身女性がいまして、
2人とも30歳、同い年。元々面識はなく、
ご主人の駐在に伴って、初の外国暮らしの有閑マダム。
自ら手を挙げたわけではなく、頼まれるのに応じて、
日本人子女にピアノを教えていました。
Aさんは有名音大の、非ピアノ科出身。
ピアノの腕は全く平凡で、日本では教えることなどあり得ない。
ただ、音楽全般の教養は大変なもので、
クラシックのみならず、別の某国の民族音楽にも造詣深し。
Bさんは無名音大の、ピアノ科出身。
ピアノの腕はなかなかで、かつ、日本では小中学校の音楽専任教諭。
日本人の有閑マダムたちは、
Aさん・Bさんのピアノ技能や音楽に対する考え方、などなどを
勘案することは全くなく、ただただ、有名音大の1点で、
我が子をAさんに教えてもらいたい、というマダムが大部分でした。
本格的にピアノをやるのならともかく、
数年の外国暮らしの、日本人社会での習い事、稽古事、という次元なら、
有名音大出身者の下で、ピアノは少し、でも、音楽全般とか、
プロになったお友だちの凄さとか、音楽業界の裏話とか、
そういった雑談を聞くのも、まあ、よいかな、と。
もちろん、無名音大とは言え、ピアノを本格的に勉強し、
実際、小中学校で音楽を教えてもらっていた方に習うのも、とってもグッド。
そんなことを思った、今日のすとん様エッセイでした。
あ、ちなみに、その女性同士(Aさん、Bさん)は、
大学の有名無名に関わらず、仲良しになり、
はい、私や私の友人も加わって、ロックバンドを結成しました。
おしまい
こんばんは
フルートの先生は体験レッスン受けて相性で選びました
右も左もわからない状態で長期出来る自信も無かったので、楽しんで通いたくなるようにかな
最近は生徒の方が先生総銀より高いフルート持ち始めました(笑)
operazanokaijinnokaijinさん
うーむ、Aさんを先生にするか、Bさんを先生にするか、選択肢としては難しいですね。まあ、私なら…生徒を多く抱えている先生の方にするかな? だとするとAさん?
でも学校の先生、とりわけ小学校での経験がある方は、子どものピアノの先生としては、すごく良いのですよね。そうすると、やっぱりBさん。
まあ、実際はピアノ以外の点、例えば雰囲気とか、自分の妻がどっちとより仲良いかとか、まあそんなところで選んじゃうかも(笑)。
>私や私の友人も加わって、ロックバンドを結成しました。
Bさんはキーボード担当だろうけれど、Aさんは何の楽器を担当したんだろ? 興味津々っですって。
chakoさん
>最近は生徒の方が先生総銀より高いフルート持ち始めました(笑)
H先生は、厚管18KのH管オーダーメイドフルートですから、これよりも高価なフルートって、24Kでも持ってこないと勝てないだろうなあ…。
まあ、生徒さん(特に大人の生徒さん)は趣味だから、高価なフルートを使用される方もいらっしゃいますが、先生はプロだから、ある程度、コストパフォーマンスを考えないといけないので、そんなに馬鹿っ高いフルートは使えないんですよね。
でもフルートって結局、奏者の音で鳴りますから、その人にとって、良く鳴るフルートなら、値段は関係無いのかもしれません。とは言え、高価なフルートって、良く鳴るフルートがたくさんあるんだよね。私も、ブランネン・パーカートのフルートが欲しいのよ。だって、とってもよく鳴るんですもの。
すとんさん、こんばんわ。
教わる側の年令や本気度によって、良い師匠の条件はいろいろですかね~
でも、『天才』より『苦労人』であることは、どんな生徒にとっても
良いことですよね。
『天才』系の方は、演奏に重点をおいていただければよいのでは。
あと『相性』ですね。それも、ただレッスンが楽しいというのではなくて、
知らず知らずのうちに出来ることが増えて、演奏することが楽しくなったというのが
本当に相性が良いということなんでしょうね。
もちろん、レッスンに通うのが辛くなるようではいけないと思いますが、
大人の生徒の場合、『だだほめ』をするだけで全然上手くなっていないのに、
生徒は褒められるもんだから気分だけは良く帰っていく・・というケースもあるような。
加えて、引き出しの多さ、というのも、私はよい師匠の条件と思います。
声楽の場合、イタリアオペラやドイツリートは大体の先生が大丈夫と思いますが、
フランスものやロシアもの、オペレッタ、バロックなどはダメだと
ちょっと残念な気が。
あと、個人的にはカデンツアのバリエーションとか詳しい先生が良いですね~
と、自分の実力はさておいて、勝手なことを言わせていただきました。
大人の場合だと、師匠よりむしろ生徒の方の心構えがホントは重要かも。
EKさん
>大人の場合だと、師匠よりむしろ生徒の方の心構えがホントは重要かも。
そうかもしれません。先生ばかりに条件をつけるのは一方的ですね。人間は相互に影響を与え合うわけです。よし、いずれそのうち、生徒の方の条件って奴も考えてみますか(笑)。
ご無沙汰しています。ブログはときどき読ませていただいておりますが、ありがたいことに本業が結構忙しくなってて、なかなか皆さんの所へ巡回する間がありません。
さて、私も生徒さんたちからありがたいことに「先生のところへ来てよかった」と言っていただけていますが、うまくいく生徒さんは「相性」がいいということは言えますね。
また、「レッスンプロ」ではあるけれども、自分も研鑽を続けている、というのも条件かもしれません。
ピアノの場合は、「年に2、3回の演奏機会」というのは、多い方です。
ソロも伴奏もそれなりにお客を呼べる方は、そもそも合わせ練習などがお忙しいので、レッスンプロになりえませんし。
また、子どもだけでなく、初歩者の大人の方についても、不定期にレッスンを受けるというスタイルではご希望の曲が弾けるようになる、という手応えは感じられませんから、私としてはおすすめしていません。
定期レッスンができる先生というのは、ある程度レッスンプロ的な仕事をされているケースが多いです。
(上級者とか、大人でも下地がある方は別です)
そういえば、たとえボランティアでも外部演奏をするという話を生徒さんたちにすると、喜んでくださいますね。やっぱり先生も演奏は続けないと、って思います。
ことなりままっちさん
忙しいのはお互いさまです…って、そう言えば、ふと気が付きました。私、もしかすると、最近、ままっちさんのブログ読んでないかも…。あれ?
今まではmixi経由でブログ(日記)を読んでいたのですが、最近はmixiの方をお止めになった?のかしら。慌てて、mixi経由ではなく、RSSリーダー経由にしたら、出るは出るは、ほんと私、最近のままっちさんのブログを読んでいなかったようです。
今から、読ませていただきます。いやあ、うっかりしておりましたです。
それはさておき、オトナと言うのは、基本的にワガママで贅沢ですからね。自分の実力はさておき…という部分があります。
「習うなら、レッスンプロではなく、バリバリの演奏家の方がいい」と思っている人って、少なからずいます。バリバリの演奏家の方がどれくらい忙しいかとかは、あまり考えていないようですが(笑)。あと逆に、謙遜しすぎて「私レベルでは、バリバリの演奏家の方なんて、恐れ多くて…レッスンを主体にやられている方のほうが…」なんていう、失礼極まりない人もいます。ほんと、オトナって困ったもんです。
ままっちさんのブログに書かれている通り、ピアノの場合、オトナを教えてくださる先生って、なかなかいないですね。こと、ピアノと言う楽器に関しては、子ども専科って部分があるかもしれません。実際、私の周辺を見回しても、大手楽器店でやっている『オトナのピアノ教室』ぐらいしかオトナを受け入れているピアノ教室って見つけられません。それでも「娘がお世話になっている先生のところで、昔ピアノをやっていたママも習う」ってのはあるみたいですが、ピアノの経験のない男性が習いにいけるピアノ教室というのは、ほんと、探すのに苦労しそうです。
私も、現役を引退して時間ができるようになったら、ピアノを習いたいと思ってますが、その時はきっとピアノの先生探しに苦労しそうだなって思ってます。まあ、それはそれでブログネタになるので、楽しみにしていたりしますが(笑)。