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やっぱり私にはバリトンは無理っす

 先日は、私の趣味の一つである『余所の門下の発表会』って奴を、またまた見てきました。いやあ、余所の門下の発表会って、本当に勉強になります。

 今回、お邪魔したのは、若手バリトン歌手さんの門下の発表会でした。ネットでは有名な先生の門下で、私もそのブログは愛読しているほどですが、今回は記事にする許可をいただいてませんので、あえて匿名にして書きます。もしかして、この記事をご覧になってらっしゃるかもしれませんが、その時は、笑って許してください。

 場所的にはちょっと遠くて二の足を踏んでいたのだけれど、行って良かった~。あれこれとたくさん学んで帰って来れました、感謝感謝です。

 まず、その門下生の方々の共通した特徴は“自然な発声”って奴です。ボリュームたっぷりの声量なのに、ちっとも力んだ感じがしない発声がすごいなあって思いました。

 私はよくY先生に「力付くで声を出さないで、響きで歌いなさい。響きで歌った方が、絶対に声量は増します」と言われてますが、それがなかなか腑に落ちなかったのですが、今回は、こちらの発表会を聞いて、それこそ“すとん”と胸に落ちました。ああ、力付くでなく、自然な声で響きをたっぷりつけて歌えば、こんなにも声って豊かに聞こえるモノなんだなってって思った次第です。

 特に感じたのは、鼻腔周辺の響きが豊かな人が多いなあってことです。もちろん、鼻声という意味ではありません。キレイに鼻腔周辺の響きを使って、声にリンとした張りをつけて歌っている方がたくさんいらっしゃった事です。良い意味で、メタルな響きが声に乗るんですね。このメタルな感じがあるから、楽な発声なのに、力強さを感じさせるのかと…感心しながら、聞きました。いや、学べる学べる。

 しかし、このメタルな響きって、録音しちゃうと聞こえなくなってしまう要素なんだと思います。やはり、生歌を聞かないと学べない事ってたくさんあるなあ。

 あと、広い音域の曲をどう歌うかとい問いに対して、手軽な回答として、曲の中で音程が高い部分は高いポジションで歌い、音程が低い部分は低いポジションで歌うというやり方があるし、私はキング先生からこのやり方で歌えと指導されましたが、この歌い方の特徴は、確かに広い音域の曲への対応が簡単になる一方で、曲の最中で、歌い手の声の音色って奴がコロコロと変わるという欠点もあります。

 ま、多くのアマチュア歌手さんは、ポジション移動を使って、広い音域の曲に対応するケースが多いけれど、ここの門下の方々は、そのやり方は使ってませんでした。あくまでもポジション移動は一定の範囲に留め、同じポジション内で使える音域を広げていくというやり方をしているように感じました。

 その結果、いかにも高い音を出してますとか、低いフレーズを歌っていますとかいう、声の見せびらかし的なアピール度は低くなりますが、その代わり、曲全般がレガートで音楽的に聞こえるわけです。これって実はかなり難しい歌唱方法なんじゃないかなって思います。管楽器で言えば、オクターブキーを使用せずにメロディを吹くようなモンですからね。ほんと、難しい技巧だと思います。

 それと、ここの門下の方々は、それぞれが特徴的で典型的な声をしていると思いました。高声の方も良かったけれど、男女問わず、低声の方が実にすばらしいかったです。これぞメゾ、これぞバリトンという声が聞けてうれしかったです。

 あのような声での歌唱を聞くと「私/あなたは、高音が出ないからアルト/バリトンです」と言うのは、実にアルトやバリトンを侮辱した発言なんだなって思いました。

 バリトンは高い声が出ないからバリトンなのではなく、声が太くて美しいからバリトンなんですね。ほんと、そう思いました。同様に「私/あなたは、裏声で上手に歌えないからアルトです」と言うのも失礼な話だと思いました。本来は、豊かな中低音で歌えるからアルトなんですよ。

 なので、以前、キング先生から高音が出ないという理由で、バリトン転向を薦められた私ですが、それって、実はバリトンの方々を侮辱する行為だったんだなって思いました。本当は「君は高い声が出ないのだから、狭くて低い音域の曲ばかりを選んで歌う人になりなさい」と言うべきだったんだと思います。

 そうそう、こちらの門下は、若い方が大勢いらっしゃって、実にフレッシュでした。若い方々は、声が若々しいだけでも美点となります。私自身がテノールである事もありますが、出演なされた、若いテノールの方は本当に素晴らしかったと思うし、まだまだ伸び代もある方なんだろうなあって思いました。そういう優れた才能を持った若者を見つけると、オジサンは意味なく興奮してしまうのですよ。

蛇足 この発表会の後もしばらく興奮状態が残ってしまい、別の門下の発表会が近い日程で開催されたのてすが、そちらを見に行くのはパスしてしまいました。なんか、歌の印象が消失する前に上書きされるのがイヤだなって思っちゃったからなんだけれどね。

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