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香盤表を見て

 先日、ミュージカル「レ・ミゼラブル」を見に行って、パンフレットを購入した私です。

 帰宅後は、ミュージカルの思い出に浸りながら、購入したパンフレットを眺めている私ですが、今回のパンフレットには、今まで私が目にしたことない記事が載っていました。それが、香盤表って奴です。

 香盤表とは、舞台演劇で使われるもので、俳優ごとに、その出演場面と役割を舞台の進行に沿って表示したモノです。これによって、一人の俳優が、どの場面で何の役をやっているかが分かるわけで、多くの登場人物を少ない俳優陣で演じ分ける時に必要となる進行表のようなものです。

 レミゼの香盤表によると、必要な俳優の数は全部で36名です。この36名が、交代交代で様々な役を演じ分ける事で、ミュージカルの舞台には、36以上の役の登場が可能となるのです。

 主役である、ジャン・バルジャンとジャベールは、最初から最後まで、その役しかやりません。また、準主役たちは、その人物が出てくるまでは、色々な小さな役をやりますが、一度準主役として舞台に出た後は、フォンティーヌ以外は、その他の小さな役を演じる事はありません。

 例えば、マリウスを演じる役者さんは、マリウスになる前に、囚人・農奴・宿屋の客・司教館の外にいる見物人・パリの貧乏人・バルジャンの工場で働く労働者・治安官・裁判官などの役を演じてから、1幕の半ばでマリウスとして登場します。コゼットも同様で、農夫の妻・宿屋の客・司教館の外にいる見物人・パリの貧乏人・バルジャンの工場で働く女工・娼婦を演じてからコゼットとして登場します。清楚なコゼットの直前に、娼婦を演じているのが面白いですね。

 逆にフォンティーヌの役者さんは、最初にフォンティーヌを演じた後は、1幕フィナーレのシーンで民衆として登場した後、第2幕ではずっと民衆の一人として演じ続けますが、劇の最後のシーンで再びフォンティーヌに戻ります。面白いですね。

 脇役の中でも目立つ存在である、バルジャンを導いた司教の役の俳優さんは、最初はずっと影コーラスとして舞台裏で歌い続けてから、司教として登場します。司教の後は、売春婦を買う客・裁判官・パリの貧乏人・学生・治安官・(再び)学生・結婚式の客を演じて、フィナーレでは司教に戻ります。

 本当の脇役である、若い娼婦という役の俳優さんは、司教館の外にいる見物人から始めて、パリの貧乏人・バルジャンの工場で働く女工・娼婦・カートクラッシュの見物人・テナルディの宿屋の“鳩”・パリの貧乏人・パリの若い娼婦・民衆・貧しい女・結婚式の客と演じて、フィナーレとカーテンコールでは民衆の一人として登場します。

 なんか、皆さん、忙しいですね。

 これだけ役の入れ代わりがあって、着替えやメイクにも時間がかかるせいでしょうか、どの場面でも、俳優さんたちは、自分の出番が終わると、舞台上を走ってハケるのが気になっていましたが、それはそういう理由だったのですね(納得)。

 オペラもミュージカルも歌芝居ですが、オペラは一人1役が原則で、一人の歌手が二つの役を演じる時は、それを台本に明記するほど珍しい事です。コーラスはいつも群れで行動しますので、1幕では舞踏会の客をやっていたコーラスが、2幕では民衆をやる…なんて事はありますが、コーラス員一人一人の動きが違うと言う事は、まずありません。

 そこへ行くと、ミュージカルは大忙しです。主役はともかく、準主役の人たちでさえ、コーラスを歌わないといけないし、複数の役をこなさいといけません。それらをカラダに入れる俳優たちも大変でしょうが、それを決める人、つまり演出家の仕事って、大変だなあって思います。

 なるべく少ない数の俳優で、舞台を成り立たせために最低限必要な役の数を揃えるために、一人で何役もやるのが必要になり、それがうまくこなせるように、香盤表って奴があるんでしょうね。

 香盤表を見ると、俳優さんたちの忙しさと、演出家さんの努力が、よく分かりますし、それを支えるために、裏方さんたちも大忙しなんだろうなあって思います。

 一つの舞台を成立させるために、多くの人が色々な工夫をして働いているって事が、分かりました。舞台俳優も、楽な仕事じゃないって事ですね(当たり前か)。

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