いつもお世話になっている、ヤマノのフルート無料調整会に行ってきました。アルタスフルートフェアも同時開催し、田中会長によるワークショップも行われていましたが、今回はパス。今年のワークショップは、初級と中級の二つのクラスに分かれていたのですが、初級は昨年受講したものと同じでしょうから受講する必要はないでしょうし、中級に参加できるほどの演奏技量は私には(永遠に)ありませんからね。残念ですが、仕方のない話です。
さて、ワークショップの方は諦めましたが、新製品の“ブリアコフ監修の新頭部管”には期待していました。どんな音が出るんだろ? どんな吹奏感なんだろ? ちょっぴりワクワクして行ったのですが、残念な事に、現物はありませんでした。なんでも、現在、品切れなんだそうです。秋になると、生産体勢にも、多少の余裕が出てくるので、秋のフェアの時には試奏ができるようなのですが、現在は品切れ。無いものは試せません。ま、半年ほど、お楽しみが先のばしになりました。
新頭部管が品切れの理由ですが…なんでも、フルート工房というのは、春が一番忙しいのだそうです。と言うのも、フルートは春になると売れる楽器なのだそうです。なので、作っても作っても、片っ端から売れてしまうので、工房は休みのない状態で昼も夜も連日フルート作りに没頭しているだそうです。
ちなみに売れ線は“頭部管銀”とか“管体銀”のモデルだそうです。…と書くと、みなさん、察しがつくと思いますが、この時期、日本中で吹奏楽部の学生さんたちが、フルートを新規購入するので、フルートの品不足が発生して、作ったそばから売れていくわけです。ビバ!ブラバン! いや、最近の子は“ブラバン”ではなく“スイブ”と言うそうなので“ビバ!スイブ!”って感じでしょうか?
現在、日本は不況の只中で、楽器メーカーも大変なのだろうなあと思っていましたが、どうやら、この不況と、フルートの売り上げとは直接の関係性はないそうです。フルートは、好不況にかかわらず、コンスタントに売れるものなんだそうですよ。ううむ、フルート製作&販売って、不況に強かったんですね。知らなかった…。
ちなみに、ヴァイオリンはフルートとは全然状況が違って、好不況と言うか、株価の上げ下げで売り上げがコロッと変わるそうです。なので、今はヴァイオリンは全然売れないのだそうです。だから、今は良いヴァイオリンが比較的入手しやすくなっているのだそうです。
これってつまり、フルートをお買い求めいただく方と、ヴァイオリンをお買い求めいただく方の、客層が違うって事でしょうね。どっちがどうとは、私は言いませんので、後はみなさんでご想像ください(笑)。
さて、今回アゲハの調整をしてくださったのは、アゲハの実の父(製作者)のSさんでした。久しぶりなので、私の顔や名前を見ても、すぐにそれとは思い出さなかったSさんですが、アゲハを手にとるや否や、すぐに思い出してくれたみたいで…お客さんを顔や名前でなく、所有している楽器で思い出すなんて、Sさんってホンモノの職人さんですね。
アゲハさんの状態ですが、右手の方はノープロブレムでしたが、左手の方は結構キテいたようです。特に親指部分は念入りに調整してもらいました。また半年後に、親指周辺で違和感があるようなら、次は腰を据えて修理をしてくれるそうです。
アゲハさんを分解して、細かいところまで掃除してもらったのですが、普段の掃除が行き届かないところは、やっぱり、うっすらとサビてますね…。黒くサビルとカッコいいですが、どうやら私の場合は、管の表面が白くサビルみたいです。管内は黒くサビルのですがね。管内と管表面ではサビ方がちょっと違うみたいです。
アゲハは、まだオーバーホールの必要はないけれど、タンポは消耗品なので、固くなってきたら交換だと言われました。とは言え、まだまたタンポは柔らかいそうです。
Sさんが試し吹きをしたので、頭部管の組み立て方を(内向き加減)を確認しました。やっぱり、Sさんも私同様に、かなり内向きに頭部管を回してフルートを吹きます。私も試行錯誤して、その位置に落ち着いたのですが、それが製作者であるSさんとほぼ同じ位置だったのがうれしいですね。
アルタスフルートは、全般的に内向き吹きがベストな状態のフルートなのですが、どうも、そういう部分が、なかなか世間には浸透しないみたいです。他社製フルートは、むしろやや外向きの方が良い音がするのだけれど、アルタスは(国内メーカー品としては例外的に)内向きがいいんです。でもその事が知られていないので、ついつい外吹きをされて「つまらない楽器だ…」とかわいそうな評価を受けがちなんです。そういう意味では、やっぱり特殊なフルートなんでしょうね。
私がアゲハを吹き始めてから、まもなく三年になりますが、少しずつ音色が変わって来た事が分かりますが、Sさんが言うにも、アゲハはまだまだ大きく音色が変わるそうです。どういう方向に変わるかと言うと、これからドンドン明るい音色になっていくそうです。それは楽しみだな。私は明るい音色のフルートが好きだから、それはとっても楽しみです。
ちなみに、すべてのフルートが吹き込むほどに、音色が明るくなっていくわけではなく、それはすべて個体差・モデル差というのがあるのだそうです。だから、吹くほどに渋くなっていく楽器もあれば、深みを増してくるのもあるけれど、アゲハは明るくなっていくタイプなんだそうです。
そんなフルート談義の間に、二人で湘南ローカルネタ(Sさんのご実家は、我が家のすぐそば)に華を咲かせました。いや、湘南ネタを話している時間の方が長かったかもしれません。
調整後のアゲハは、実にバッチリです。どこもかしこも実によく鳴りますよ。やっぱり、半年ごとの調整は必要ですね。
フルートの調整が終わったら、最近はなかなか東京に来れないので、東京土産を買って帰りました。
今回のお土産は以下の三つ。一つ目は、ミュージカル映画「マンマ・ミーア」のDVDです。元々大好きなミュージカルなんですが、これの映画版DVDが、タイムセールで一枚1000円で投げ売っていたので、思わず購入です。
二つ目は「ウェスト・サイド・ストーリー」のヴォーカル譜を買いました。バーンスタインオリジナル譜に基づいた、舞台上演用のヴォーカル譜です。こんなもの、大都会の楽譜屋に行かないと買えませんね。実はこれ、日本で一般に売られている「全曲集」とは、一部の曲で調が違っています。また、舞台の稽古で使う楽譜なので、アンサンブルの曲も全部ちゃんとアンサンブルのカタチで載っているし、インスト曲もすべてピアノ用にアレンジされて載っているので、これ一冊と台本(セリフや演技の指示がある台本)があれば、ピアノによる「ウェスト・サイド・ストーリー」が上演できます(笑)。ちなみに「ウェスト・サイド・ストーリー」って、楽譜を読んでいるだけでも、すごくおもしろいですよ。しかし、このミュージカルは、ミュージカルのくせに、マリアとトニーを歌う歌手には、オペラ歌手並の歌唱力を要求しています。ミュージカルなのに、主役のトニーにHi-Cを要求するなんて…結構手ごわいミュージカルですね。普通のミュージカルでは、男声主役には、せいぜい高くてもA止まりですよ。
で、三つ目の土産は、音楽之友社の「世界の名歌集2」という楽譜集。“Time to say goodbye(君と旅立とう)”が載っているので買いました。発表会が終わったら、やっぱり「Time to say goodbye」が歌いたいかな? 本当はオリジナル歌手のボッチェリの楽譜で欲しかったのだけれど、銀座の楽譜屋でも品切れなんだから、あきらめました。で、中を見たら、結構、歌いたい曲満載でした。“グラナダ”も載ってたよ。この楽譜集は2巻目なので、1巻目もアマゾンで買っちゃいました。これで当面、楽譜には困らないな。
コメント
こんばんは。
自分の楽器の製作者さんに調整してもらえるなんて
はぁぁぁ…うらやましいです~。
田舎に住んでいるとそんな機会まずないです(-“-)
私も一度お話してみたいなぁ。
なんだかお父さん、みたいな感情が湧きそうです(笑)
ところで、製作者さんは、何を見て「あ!これ私が作った!」と判断されるのでしょう?シリアルナンバー?
昔吹いていた学校の備品のヤマハにはイニシャルが彫られてた気がします。アルタスには番号しかついてないですよね??
>いつりんさん
Sさんがおっしゃってましたが、触るだけで、このフルートは誰が作ったのか、分かるんだそうですよ。職人なら、自分が作った楽器が分かるのはもちろん、同じアルタスの同じモデルであっても、これはあの人が作った楽器だ、こっちはこの人のフルートだって、分かるんですって。と言うのも、同じようにフルートを作っていても、職人さん毎に“癖”があるので、その癖で分かるのだそうです。
だから、同じメーカーの同じ楽器と言っても、製作者ごとに違いがあるってわけです。
さらに、Sさんがおっしゃってましたが、Sさんは目の前にある材料に素直に無理の無いようにフルートを作るのだそうです。だから、製作者が同じであっても、使う材料が違えば、自然と出来上がりが変わってくるのだそうです。これって、同じ製作者が同じモデルを作っても、ちょっとずつ違うという意味なのかなって思います。
もちろん、その違いは、私たちには分からない微細な違いなんでしょうが、彼ら職人には、無視できないほどの大きな違いなんだと思います。
ちなみに、アルタスフルートには製作者のイニシャルは入っていませんが、シリアルナンバーは入っています。だから、会社の記録を見れば、どのフルートは誰が作ったのかは、公式にきちんと分かるそうだけれど、Sさんは、そんなものを見なくても、ピンと来るんだそうです。
相変わらずお忙しそうでなによりです
最近なかなかこちらにお邪魔できなくて申し訳ございません
仕事が変わると、大変なんです(変わる前から大変でしたが)
楽器たちを可愛がっている御姿が想像できます
やはり大切にされているのが伝わってくると嬉しいものです♪
>橘さん
転職すると色々と大変ですね。私も今まで、そんなに回数は多くないですが、何度か転職しています。やはりその度ごとに大変でした。ある職場に行った時は、あまりのストレスで1年で40㎏ほどやせてしまった事があります。もっとも、その時は、体重が落ち始めたのをいい事に、便乗ダイエットをしたので、40㎏なんていう、すごい数字が出ちゃったのだけれど(笑)。
今年の私は(仕事が変わったわけじゃなく、立場が変わったので)なんか色々と忙しくて、ブログを含むネット活動に昨年ほど時間が割けなくなってきています。でも「継続は力なり」と信じて、細々と続けています。きっと続ける事で、この先にナニカが見えるんじゃないかなって思ってますから。
橘さん、大丈夫、仕事が変わって大変なのは、最初の数カ月です。やがて慣れますって(笑)。慣れるまでが大変ですが、そこは気合と根性でぜひ乗り越えちゃってください。
こんにちは。吹いていけば音色が変わっていくなんて、楽器ってほんと不思議ですよねえ。生きてるみたい。だから愛着もわくんですよね。
>かずさん
おそらく、一般的には「エイジング」とか「経年変化」と呼ぶ現象なんだろうと思います。でも、楽器に愛着があるからこそ、それを“成長”と捉えたいのですね、私は。
でも、成長の方向が私の希望する方向なのが、ホント、うれしいです。先が楽しみです。
内向き!そうなんですよね!
長い間別のフルートだったのでついつい外向きに合わせてたんです。。
試奏の際に先生から「この楽器は・・・頭部管はここらへんにして~、顔あげて~」と訂正されたときの音色ときたら!
(注)顔あげて=あごをあげるんじゃなくてボディマップをちゃんとした位置です
「この楽器のポジションはここだから覚えてね♪」と言われましたが、長年の癖はなかなかとれない(涙)
もともと下唇がかなり穴にかかった状態で吹いていたのを(このほうが鳴った気がしますもんね 汗)訂正していたのです。
内向きに合わせると、この癖が出たときにかわいそうな音色のなってしまってて・・・。
エールちゃんこんな音じゃなかった!となっていたわけです。
ついついうっかり拭きやすい位置にセットして、こんな音じゃない~とへこんでいた私の目を覚まさせてくれてありがとうございます。
>いがぐりさん
はい“アルタスフルートは内向きがデフォルト”なんですね。記事の中でも書きましたが、この事実が世間一般に普及していないのが残念ですね。
他の国内メーカーのフルートは、標準~外向きでいい音が出るように作られていますから、それらの楽器からアルタスへ転向すると、やはり戸惑いが生じるのでしょう。世の中には強者もいて、数本の楽器を持ち替えて演奏する方もいますが、持ち替えの楽器の中にアルタスが入っていたりすると「アルタスはちゃんと内向きにセッティングしてあるかな?」とか余計な心配をしちゃいます。
どれくらい内向きにするかは、おそらく個人差があるでしょうから、自分のフォームとよくご相談の上で、決めるとよかろうと思います。
最近の私は、内向きとは言え、さほど極端なほどの内向きにはしていません。というのも、やはり度を越した内向き組み立てでは、良い音が出ず、無意識に楽器を向けて調整してしまうので、楽器の構えそのものは標準的(つまりカップがきちんと上を向いている)にして吹ける程度の内向きにしてます。アルタスお薦めの角度より、ほんのちょっと外向いてますが、Sさんも同じ程度の角度だったので、これで良しって思ってます。
>「この楽器のポジションはここだから覚えてね♪」と言われましたが、長年の癖はなかなかとれない(涙)
あ、…分かるような気がします。フルートは真っ白な状態から始めた私ですが、声楽の方は、それなりの経験を経てから、真面目に習いだしたので、それ以前についた癖を取るのに忙しい状態です。長年の癖って…なかなか取れないのですよね(涙)。