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ソーシャル・ディスタンスは貧乏神?

 緊急事態宣言が発令された頃は「死神に殺される前に、貧乏神に殺されてしまう」という言葉を紹介しました。緊急事態宣言が解除され、どうやら死神は一度去ったように見えますが、貧乏神はまだいるみたいですね。
 確かに、店の休業が要請されていた頃と比べれば、条件付きとは言え、開店して営業ができる事は、店舗経営者からすれば、とてもありがたい事だろうと思います。
 でもね…ソーシャル・ディスタンスを守ると、お店もたくさんはお客を入れられないよね。基本は…1席おき? これをやってしまうと、お客は以前の半数しか入れられなくなってしまいます。飲食店で考えてみると、単純計算で、売上は以前の半分程度にしかならないわけです。売上が半分になったら、多くの店は潰れてしまいます。もちろん、潰れちゃ困るので、店員を解雇して人件費を浮かせてみたり(今は無理だけれど)営業時間を延長して少しでも売上を増やしてみたり、それでも厳しければ、値上げが必要になるだろうし、家賃の安い場所に移転してみたり…といった工夫が必要になってきます。
 でも、それでも実はきちんとソーシャル・ディスタンスは守れていないんだよね。1席程度しか空けていなかったら、客と客の間って、1mも離れないんだよね。1m以上確実に離すなら、少なくとも2席は空けないといけないし、テーブル席はテーブル一つに一人の客しか座れません。これだと、以前と比べて、1/3~1/4しか入りません。そうなると、売上は…どうやったって潰れるしかないじゃんって話になります。
 ソーシャル・ディスタンスって、かなり豪腕な貧乏神じゃないかしらって思うわけです。
 音楽業界だって他人事ではありません。コンサートを開いても、そこに入れられるお客は以前の半数程度が限界だし、そうなると当然チケット売上も半減します。でも、コンサートを準備して開催するための経費は以前と変わらないわけだから、コンサートを開いても、経済的にはかなり厳しくなります。
 買い物だって、リアルな店に行けば、どうしても他人と接触せざるをえません。電車に乗れば他人がいるし、道を歩けば他人とすれちがうし、店に入れば他人と同じ空気を吸うわけだし…。どうしたってソーシャル・ディスタンスをきちんと守りきれません。「ああ、怖い」と思ってしまうと、ロクに買い物にも行けません。でも買わないわけにはいかないわけで、そうなると通販を利用する人が増えて…リアルな店は売上を減らすわけです。街から本屋やCD屋が消えてしまったように、今後はあらゆるリアルな店が消えてしまうかもしれません。
 少し前まで「AIが仕事を奪う」と言っていましたが、今はそれよりも先に「ソーシャル・ディスタンスが売上を奪う」って感じになりつつあると思います。ああ、ソーシャル・ディスタンスは貧乏神だよな。

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