スポンサーリンク

最初の先生選びは大切なんだけれど…

 別に音楽に限らないのだけれど、最初に師事する先生の選択って、とても大切だと思います。だって、最初の先生からは、基礎の基礎を習うわけだし、その後に続く音楽人生の根本的な事を学ぶわけです。ここで間違った事を教わったり、方向違いの事を学んでは、無駄足どころか、才能や興味ややる気を潰されかねません。そういう意味でも、最初の先生選びって、とても大切だと思います。

 でも現実は、先生を選べるほど贅沢な環境にいる人って…そんなにいませんよね。大都会とか、高級住宅地周辺部なら音楽関係の先生もゴッチャリいるでしょう。あるいは、子どものピアノ教室ぐらいなら、かなりの地方にでも行かない限り、ご町内に数名程度はいるでしょう。また、ちょっとした繁華街がある町なら、大手楽器店主催の音楽教室だってありますから、選択肢に限りはあると言えども、なんとか先生を選ぶ事ができるでしょう。

 問題は、地方都市とか、もっと地方都市とか、もっともっと地方都市に住んでいたり、あるいは声楽を含んだマイナー楽器(フルートなんぞはここに入るでしょう)を習いたいと思った時です。特に現役世代の男性だと、時間もままならぬ事が多いので、更に輪をかけて、先生を見つけにくいという現実があります。

 いや、それ以前に、先生そのものが選ぶどころでなく、ご近所には一人もいなかったりする事だってあります。そうなると、思いっきり遠距離の先生に師事せざるをえないわけで、実際、私の知り合いでも、電車に片道1時間乗ってフルートを習いに行っている方がいたり、新幹線に乗って声楽の先生のところに通っている方もいらっしゃいます。その姿勢には頭が下がります。

 レッスン代よりも交通費の方にお金がかかるといったケースだって、稀ではないと思うのです。

 音楽の先生を見つけるのって、特に最初の先生を見つけるって、こちらにツテがない事もあるけれど、本当に難しいです。とても選ぶどころの話ではありません。

 それにだいたい、音楽関係の先生たちって、看板を出さず、電話帳にも乗せず、ネットにすら情報を出さずに営業している人もたくさんいるわけじゃないですか? その世界に数年いれば、そういう先生たちの存在も知り、連絡を取ることも可能だけれど、全くの初心者の頃は、連絡すら取れないわけで、本当に先生探しに苦労します。

 そうやって、見つけ出した先生が、良い先生ならば、その人は恵まれた人であると言えます。最初の先生が、たいした人でなかったり、自分の学習目標とは合わなかったり、人間的に合わなかったりしたら、ダメダメですもの。

 せめて、町の音楽の先生が免許制で、どの先生も最低限の演奏能力と教授能力を有している事が保証されていれば良いのですが、現実はそうではなく、演奏はできても、他人に教える事ができない人だったり、演奏能力そのものに問題があったり…なんて人も、町の音楽の先生をやっていたりするんだから、困ったものです。

 よく「音楽を学ぼうと思ったら、複数の先生に師事することが大切だよ」と言われます。これは同時に複数の先生から学ぶ…と言うのではなく、一人の先生にある程度習ったら、ドンドン積極的に先生を変えていく事が大切だという意味です。

 先生にも得手不得手があるわけだから、その先生の良い部分を学んだら、次の先生に足りない部分を補ってもらう…という事もありますが、先生を変える事を前提に考えれば、最初にハズレの先生に付いたとしても、次の先生で挽回してもらうという事も可能になります。そういう意味で、先生を変えていくのは大切ですし、いずれ先生を変えていく…という前提があれば、最初の先生選びも、それほど深刻になる必要がなくなるかもしれません。「この先生、合わないかも…」と思ったら、次の先生に移動すればいいわけです。

 でも私達は人間だもの、情がわくんだよね。ダメな先生かも…と思っていても、なかなか縁を切れないのが、普通に人の感覚ですから、そんなに簡単に先生を変えられないのも現実だったりします。

 ああ、やっぱり最初の先生選びって難しいなあ。

 私個人の話をすると…最初の声楽T先生は、はっきり言って失敗だったなあ。指導力があまりなくて、教えることもありきたりで、おまけに人間的に相性が良くなかったと思います。あれこれあって放逐されて、その後20年近く音楽から遠ざかってしまったのも、その先生のおかげですから(汗)。

 二番目のキング先生は、音楽の楽しさを教えてくれた先生で、よく遊んでくれました。その点については感謝しています。でも教える方はカラッキシで、ちゃんとした歌い方を教えてもらった覚えはなく、声楽テクニック否定派の先生で、テノールの声帯を持っている私を伸ばす事ができず、偽バリトンにしようとしていたくらいの人です。もう少し長く習っていたら、ノドを潰していた事でしょう。危ない所でした。

 三番目のY先生は、キング先生とは真逆で、あまり遊んでくれません。その代わり、みっちり教えくださる方で、声楽テクニック皆無だった私に、筋道立てて、声楽テクニックとその論理を教えてくださってます。おかげさまで、この先生について、私は始めて歌が上達している事を実感しています。

 フルートの最初の先生は、ジャズの笛先生で、この先生には、本当によくしてもらいました。基礎をきちんと教えていただきましたし、音楽は生き物である事を教えてもらいました。一方、私が未熟だったこともあるけれど、大雑把に仕上がっていれば良しとしてくださっていたので、私のフルートには緻密さが欠落していたわけです。

 今のH先生には、音楽演奏における緻密さを仕込まれている最中です。また、演奏以外にも多くのことを教えて下さいます。そういう意味では、いかにも先生先生した先生です。音大教授の前歴もあるため、お弟子さんも星の数ほどいるわけで、いかにも教え慣れている先生で、フルートを習っていても、なんか安心して学べる、安定さを感じています。ただ、最近、引退を考えているような事をおっしゃってますので、いつまでH先生に習い続けられるか、ちょっと心配だったりします。

 ヴァイオリンは、一人の先生にしか習えませんでしたが、これは私のわがまま(さすがに声楽とフルートとヴァイオリンの3つを習い続けるのは、時間的に無理でした)で辞めてしまったので、今でも申し訳無さを感じています。教え方も型どおりではなく、私の必要と実力を見極めて教えてくださっていたので、この先生にある程度習えていたら、私のヴァイオリンももいっぱしになっていたかもしれません。そういう意味ではとても残念だったりします。

 ひとまず私の場合、今習っている、声楽の先生もフルートの先生も、良い人で良かったですし、お二人に習っていて、私が上達している事を私自身が実感できている事が何よりです。

 楽しく遊んでくれるのも嬉しいのですが、やはり上達しなきゃ、何のために謝礼をお支払して学んでいるのか、分かりませんからね。

↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
にほんブログ村 音楽ブログ 大人の音楽活動へ
にほんブログ村

コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    >>>町の音楽の先生が免許制
    これは、ドイツの話でしたっけ?
    フルートのH先生からお聞きの話でしたっけ?

    で、先生一般論ですが、
    人、皆、師、とはよく言ったもので、

    私は会社員ですが、
    職場に新入社員Z君がいまして、
    一流大学の大学院修士修了の秀才で、

    その新入社員の先生役の上司Aが、
    勉強方面は全くダメの、
    そのまた上の上司Bに気に入られているだけの
    典型的ヨイショ型サラリーマンで、

    新入社員Z君の社会人デビューは、
    全くお気の毒、

    と、朝から毒舌を吐いてしまった私を、
    すとん様、お許しください。

    おしまい

  2. アデーレ より:

    声楽の先生って。地方にはあまりいなくて、選べる状態かというと、かなり都会とは違います。
    例えば、本当の初心者なら基礎なんでどの声種でもよいかもしれませんが、、次の段階か、つまり中級以上ならば、絶対に自分と同じくらいの声種がよく、さらにドイツ物かイタリア物か、フランス物か、専門は?となると、例えば、ソプラノ レッジェーロで専門はコロラトゥーラでアジリタが得意な人。なんてことを希望してなら、小さな小さな地方なら1人か2人?か、、いるかいない
    か(笑)なんです。けど間違っても、いないからとメゾやバリトンに習ってはいけません。まるっきり発声が違うからね。だから、選べる段階にないから、最初の先生が合わない場合、もう一人の先生ね、ってさ、。でもね、この二人知り合いだったりするから、かなり気まずいのですよ。だから、頑張って新幹線で他の街か都会まで習いにいく。たまにね(笑)それでなんとか解決していく他になく、声楽って高級な習い事ね、と思います。でもね、発表会を思うと地元の先生についてないと、まさか都会の先生の発表会にでて、見にくる友達、まさか新幹線使ってまでこないからね(笑)発表会には友達を呼びたいしね。だから、地方と都会、2人先生必要。しかし、発表会も2回になり、会場費、伴奏、かかる、ドレスは一緒でよいか(笑)ここまでして、しかし、ただの遊びアマチュアですから、その労力とお金を他のものにしていたら、とっくにその世界の駆け出しの先生クラスになれただろうな、と考えると、なにやってんだろ、私。となるが、しかし、歌うのは楽しいし馬鹿でも辞められない。だから、はい。都会の先生と地方の先生、これからもよろしくお願い致します(笑)新幹線ならまだよいが、飛行機使う人もいるよ、中にはね。日本人はまだまだ余裕ある人はいるのね、とびっくりします。

  3. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     そうそう、町の音楽教師を免許制にして欲しいと言うのは、フルートのH先生の持論です。現実的にはなかなか難しいけれど、そうなったらいいなあと私も思います。

     教えるという仕事って、本当は難しいんですよ。音楽で言えば、演奏できるからと言って教えられるわけじゃありません(もちろん、演奏できない人は教えられませんが…)。
    教える能力と演奏能力は、全く関係ありませんから、すごく感動的な演奏ができても、全然教えられない人もいれば、自分はばっとしない演奏しかできなくても、優秀な生徒さんを次々と輩出しちゃう先生だっています。

     でも町の音楽の先生方の場合、教える事の上手下手もありますが、それ以前に、ちゃんと演奏できない人が教えていたりする(当然、教えるのは下手くそです)んですよ。そういうのは『教える詐欺』じゃないかと思いますが、これが笑い話じゃ済まないから、話は厄介です。

    >新入社員Z君の社会人デビューは、全くお気の毒、

     まあね、でも本当に優秀な人間は、どんな状況からでも、どんな相手からでも、必要な事を広く学んで自分のモノにしますから、そんなに心配すること無いと思いますよ。

     「我以外みな我が師なり」とは、吉川英治の名言ですが、私はこの言葉とは、中学生の時に出会いましたが、それ以来、座右の銘の一つとしています。

  4. すとん より:

    アデーレさん

     ほんと、声楽は金食い虫な趣味だと思います。そこには激しく同意します。

    >けど間違っても、いないからとメゾやバリトンに習ってはいけません。

     はは、私はテノールだけどバリトンの先生に習ってます。妻なんかは、コロラトゥーラソプラノなのに、バリトンの先生に習っていますよ。まあ、私の場合、以前は自分と同声同種類の声の先生に習ってましたが、今考えると、ちっとも上達しませんでした。むしろ、今の先生についてからの方が、ぐんぐん成長しております。

     ただ、アデーレさんの言わんとする事もよく分かります。歌の汎用的なテクニックや曲の解釈、歌詞のディクテーションなどは、声の違う先生からも学べますが、その声種独特のテクニックもあるわけで(例えばテノールならば、アクート周りの発声技巧だね)そういった方面の事は、ぜひ同声の先生からでないと学べませんし、それを習うために、交通費かけて遠方の先生にワンポイントで習いに行くくらいなら、普段からそういう先生に習っていた方が絶対にいいってのも自明です。

     でもね、お金もそうだけれど、今の私は時間が惜しいのです。

    >新幹線ならまだよいが、飛行機使う人もいるよ、中にはね。日本人はまだまだ余裕ある人はいるのね、とびっくりします。

     そうなんだよね。飛行機もそうだけれど、レッスンの時は前泊しちゃう人とか、深夜バスや夜行列車で来る人も知ってます。ほんと、日本人には、まだまだ金銭的にも時間的にも余裕のある人がいるんですわ、びっくりします。

  5. ドロシー より:

    やっぱり、先生を変えるタイミングを本人が見定められるのかってことかなと思います。
    ただ、先生同士も色々つながりがあるらしく、すごく面倒な事情があるらしいです。
    「仕事が忙しくなったから辞めます」とか言いつつ、その直後に知り合いにつくようになったのがわかれば、きっとイヤでしょうね。
    今はSNSとかも流行っていますから、他人の人間関係がよくわかる時代です。
    音大進学とか留学なら先生自身の実績に繋がるからWINWINだし、先生側に何らかの事情があって、というのならまだ良いのですけどね。
    正直、私もこのままじゃ自分の欠点は直らないなと思っていたけど、若くて熱心で人柄も良い先生だったのでなかなか切れなかったことがあります。
    本来は、個々のステップに応じて、ある程度まで行けたら、更に上の先生を勧めるのが誠意ある指導者と思いますが、なかなかお会いしたことはありません。

  6. すとん より:

    ドロシーさん

    >ただ、先生同士も色々つながりがあるらしく、すごく面倒な事情があるらしいです。

     音楽の世界なんて狭いからね。SNSなんて使わなくても、皆さんつながっています。

     特に歌手の皆さんは、学校の同窓会でつながっていたり、歌劇団とかプロ合唱団でつながっていたり、あるいは地縁でつながっていたりと…案外、みんながみんな知り合いだったりするのが普通ですからね。

     まあ、まれに、私が以前習っていたキング先生のように、同業者の知り合いとか友人とかが、極端に少なくて、業界的には無名な方もマレにいますが…そういう先生は、たいてい“訳あり”だったりします。

     知り合いで、熱心に声楽を習っていた方がいらっしゃって、レッスン風景などもアップしていたのですが、ある日を境に、レッスン風景をアップするのを止めちゃったのです。なぜかと言えば、それまで習っていた先生のところから、自然とフェイドアウトして、次の先生に習い始めたからなんですね。で、そのブログは以前の先生も読んでいたため、そうせざるをえなかったんだそうな。

     私も、レッスン記事をアップしなくなったら、先生を変えたのかもしれませんね(笑)。

タイトルとURLをコピーしました