音楽コンクールの話です。
これから夏本番を迎えると、各地で様々な音楽コンクールが開催されます。
音楽コンクールにも色々なレベルのものがあり、その審査対象となる音楽家にもいろいろなタイプがあり、コンテスト参加者はそれぞれに真剣で、その姿勢に関して、私は到底チャチャを入れる気持ちにはなりません。熱心さは、誰であれ、見ていて胸熱となるのです。
で、そんな胸熱となるコンクールが大小様々開催され、そのうちのわずかなモノぐらいしか私は見るチャンスがないのですが、音楽コンクールを見させてもらって、いつも不思議に思うことがあります。
それは『なぜ、優勝と聴衆賞は異なるのか?』って事です。
コンクールである以上、参加者たちには順位が付けられます。その是非についても語りたいことはありますが、今回はそれはパス。それについては、いずれまた稿を改めて書くかもしれません。とにかく、コンクールですから、順位が付けられ、1位、2位、3位とか、優勝、準優勝とか、金賞、銀賞、銅賞とか、呼び方は色々あっても、順位が付けられ、格付けがされる事には違いありません。
この順位を付ける人は、審査員と呼ばれる人で、大抵のコンクールでは、その道のプロの方々が審査員をやります。高名な演奏家たちが審査員を務める場合もあれば、(学校主催のコンクールだと)教授や先生と呼ばれる人たちが審査員を務める場合もあります。
一方、大抵のコンクールでは、聴衆賞とかオーディエンス賞とか観客賞とか呼んで、そのコンクール本番にやってきた観客たちに「本日,一番良かった演奏者は誰ですか?」などと言った内容のアンケートを取り、それらを集計して、いわゆる聴衆賞を決めます。
で、たいていのコンクールで、優勝者と、聴衆賞を受賞した音楽家が一致しないんですよね。まず一致しません。まあ、まれに優勝者と聴衆賞を同時に受賞する音楽家もいますが、そんな事はよっぽどの事がない限り、まあまあ、無いです。皆無です。面白いぐらいにダブりません。
なんででしょうか?
音楽コンクールには「優勝者は聴衆賞の対象から外す」という取り決めでもあるのでしょうか? それならば私にも理解できますが…そんな取り決めって、有るのかな? もしもそうならば、観客が人気投票をする用紙に一言「聴衆賞は優勝者以外から選ばれます」とかの文言が必要だと思うし、その文言がない以上、それは考えづらいです。
となると、考えられる事は一つ。プロの目線で素晴らしいと思った音楽家と、観客目線で素晴らしいと思った音楽家は、異なる…って事です。
プロの目線は(私はプロの音楽家ではないので、あくまでも推測ですが)、演奏の巧拙とか、表現力の豊かさとか、その演奏者の将来性(年齢とか美醜とか師匠筋とか…)とか、そう言ったモノで順位を付けているんじゃないかしら? いわば、その音楽家がコンクール当日までに積み上げてきたものを評価しているわけです。
一方、聴衆賞は、その日、一番観客を喜ばせてくれた音楽家が獲得します。その音楽家がどれほど巧みな技術を持っているかとか、素晴らしい師匠たちに学んできた事とか、そういったモノではなく、当日の演奏にどれだけ熱を込めることが出来たのかとか、美しい容姿や派手なファッションに加え、オーバーアクションによる演奏をしたとか、なにはともあれ、モノによっては、あざとい部分もあるかもしれないけれど、それでも観客の心をつかんで離さなかった人を観客は評価し“この人がこの日の一番!”って書いていくわけです。
音楽家を学生であると考え、音楽コンクールが、学校の卒業試験のようなものなら、専門家の先生方による評価で十分であると考えます。しかし、音楽家をエンターテイナーと考え、音楽コンクールをエンタメ界へ送り出す新人発掘の場であると考えるなら、むしろ聴衆に支持された音楽家を高く評価するべきであり、聴衆賞ではなく、むしろそちらを優勝にするべきではないのかしら? なんて、思ったりもするわけです(ケホケホ)。
違うかな?
音楽家って、狭い狭い音楽家たちの互助会的な世界の中で生きていくのではなく、我々素人の耳目を大いに集めて、我々に一時の享楽を音楽によって与えるのが生業なんじゃないのかしら? 音楽家は、芸術家であると同時に芸能の人であり、エンターティナーなんじゃないかしら?
だから私は、コンクール等で、優勝と聴衆賞を異なる音楽家が受賞する事に、強い違和感を感じるわけなのです。
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コメント
こんにちは。
音楽家をエンターティナーと見る考えに同意です。
基本音楽家は自分の満足も大事ですが
食っていけないと成り立たない人が大半じゃないかと思います。
おっしゃるようにコンクール等で評価を受けるのは
その後の音楽活動に箔を付けるのが
目的のような気がします。
音大を出て大学等で教える人になるのならまだしも
それ以外で食べていこうとしたら
聴衆に気に入られないと成り立たないかと。
既出ですが現在パヴァロッティーが
何がしかのコンクールに出たら
審査員からの評価は低いけれども
聴衆からは賞賛の声が上がる状況ですよね?
自分満足で行くのか、それで食っていくのかで
考えが違ってくるのかもしれません。
ところで、最近のテレビ等で見られる
素人の歌合戦の番組での評価の仕方で
カラオケマシーンの点数評価がありますが
これって”ある意味”コンクールの
審査員評価に近いんですかね?(^^;)
こんにちは。
自分はコンクールのこと知らなかったのですが、聴衆賞と優勝があるんですか!
面白いですね〜
ちなみにすとんさんの主観的な目で見れば聴衆受賞者と優勝者の演奏を聴いてどちらを評価することが多いですか?
歌う立場の人もどうなんでしょう・・どっちが嬉しいんでしょうか・・聴衆賞を取れば嬉しいけど、優勝ではなかったら審査員にどこに問題なのか聞きたくなるかもしれません・・
ただピアノだったりといった楽器のコンクールなら僕は分かりません。テレビでやっている格付けランキングでよくあるどっちのヴァイオリンが高いでしょう?一方は数万円、一方は数億円。自分は全然分かりません(笑)違いはなんとなく分かりますが、その違いを踏まえた上でどっちが高いのか?と言われたらお手上げです(笑)教授や先生から見たら僕は話にならないでしょう(笑)
なのでピアノのコンクールに行っても恐らくよっぽどミスしたら分かるかもしれませんが、そうでなければ難しいですね(笑)下手したら弾いてる曲が好みだからこの人となってしまいそうです(笑)
すいませんまとまりのない投稿になってしまいました(笑)
名無さん
パヴァロッティーの件、名無さんに同意します。晩年の彼は、玄人筋のウケは悪いでしょうが、観客のウケは抜群でしたからね。でも、玄人筋のウケが良くても、観客のウケが悪ければ、プロとして食っていけません。
プロの定義も難しいですが、音大出身者だからプロなのではなく、音楽で食えるからプロなんだと、私は思います。ポール・マッカートニーは音大出てませんが、余裕で音楽で食ってますので、プロもプロなんだと思いますよ。まあ、クラシックとポピュラーを一緒にすると言われそうですが…。
カラオケマシーンによる点数評価の番組ですが、基本的に私、この手の番組は好きです。客観的な採点基準があって、それによってフェアに採点され、順位付けられているのですから、見ていて清々しいですよ。ただ、上位にランクされた人たちの歌が好きかと言われると、否…ですね。むしろ、嫌いです。人が聞いて感じる好き嫌いとか、魂をゆさぶるゆさぶらないってのは、数値ができないわけで、採点マシンが進化して、早くそういう要素も採点できるようにななってくれたら、うれしいなあ…とは思ってます。
ショウさん
>すとんさんの主観的な目で見れば聴衆受賞者と優勝者の演奏を聴いてどちらを評価することが多いですか?
やはり聴衆賞の方かな? だって、感動的だもの。優勝者の演奏って、往々にして、つまらない演奏だったりするんですよ。だから、観客は支持しないんだと思います。
>歌う立場の人もどうなんでしょう
それはもちろん“優勝”がうれしいに決まってます。と言うのも、コンクールで優勝すれば、立派なキャリアになりますが、聴衆賞をとっても、キャリアにはなりません。勝ち負けで言ったら、優勝は勝ちですが、聴衆賞は惨敗になります。聴衆賞を取るくらいなら、まだ二位や三位の方が、キャリアになる分、マシだと思いますよ。
>テレビでやっている格付けランキングでよくあるどっちのヴァイオリンが高いでしょう?
あれは、割りと簡単なんですよ。もちろん、放送の電波に乗った時点で、音のひだのようなモノは削ぎ落とされてしまうので、生で聞くよりはかなり難しくなっているとは思いますが、それでも分かるものです。だって、ショウさんだって、両者の音の違いは分かるでしょ? 後は、高い音と安い音の違いが分かれば、簡単に判定が付きます。
私は自分がヴァイオリンを弾きますし、そこそこ高い楽器も安い楽器も弾いた経験がありますし、もちろん生ヴァイオリンの音もそれなりにたくさん聞いているので、ヴァイオリンの値段の高い音と安い音を知っているんですよ。だから、簡単に分かります。それだけの話です。
優勝者の演奏が往々にしてつまらないっていうのはなんだか本末転倒な気がしてならないですねー
どうでもいいんですが、個人的にはパヴァロッティは1970年代後半から1980年代前半が好きです(笑)
ショウさん
>優勝者の演奏が往々にしてつまらない
これはある意味、仕方のない事なのかもしれません。
まずコンクールなので、優勝狙いの人は、まず審査員ウケをする小難しい選曲をしないといけないわけで、そういう小難しい曲は、たいていつまらないんですよ。それに音楽に限らないけれど、往々にして審査ってやつは“加点方式”ではなく“減点主義”になりやすいわけで、そうなると“素晴らしい演奏”以前に“ミスのない演奏”を心がけるわけだし、ミスを警戒するあまり、表現的にこじんまりとしてしまうってのは、よくある…っていうか、そういう演奏をしないと優勝できないという事情があるようです。
>パヴァロッティは1970年代後半から1980年代前半が好き
まだ声が重くなる前の時代ですね。それこそ“キングオブHi-C”なんて言ってた頃のパヴァロッティですね。その頃のパヴァロッティって、世界中のみんな、好きだと思いますよ(笑)。