私は、メトのライブビューイングを、たまに東京(東劇)や川崎で見ることもありますが、だいたいは横浜で見ています。横浜では、どの映画館で上映しているのか言うと、ついこの前までは、横浜高島町にあった“109シネマズMM”で上映していましたが、この映画館が先月(2015年1月)で閉館になってしまったので、今月から横浜桜木町の“横浜ブルク13”に場所を替えて上映することになったので、そっちに行ってきました。
“109シネマズMM”は、空き地にぽつんとあるような感じの立地で、周辺はちょっと寂しい感じの場所でしたが、横浜駅から徒歩で行けるのがうれしかったです。“MM(=みなとみらい)”と名乗っていましたが、みなとみらいも端の端で、地下鉄の高島町駅がすぐそばにあったくらいですから、そりゃあ寂しいのも無理ないわけです。
今度の“横浜ブルク13”は、JR桜木町駅のすぐ側で、北口改札から映画館の入っているビルまで、徒歩1分ほどの近接地。なかなかに賑わっている地区の映画館です。
映画館そのものは、かなり大きなシネコンで、スクリーンが13もあって、各種ライブビューイングも積極的に上映している映画館だし、松竹の資本も入っている映画館のようなので、まあメトのライブビューイングが、この映画館に引っ越してきたのは、ある意味、必然なのかもなあ…と思いました。
さて、肝心のオペラの話をします。
「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、いわずと知れたワーグナーの楽劇なわけですが、なんでも、一夜のうちに上映するオペラの中では最長作品という話もあるくらいに、上演時間が長いオペラです。
今回のライブビューイングでは5時間34分の上映時間だったけれど、どうも今回は“ライブビューイング”と銘打っているけれど、休憩時間の大幅カットをしているみたいです。と言うのも、第1幕と第2幕の間の休憩時間が約25分に、第2幕と第3幕の間の休憩時間が約30分になっているからです。実際の劇場での休憩時間は、出演者のインタビューによれば、それぞれ45分ずつだったらしいので、都合25分の休憩時間をカットして全体の上映時間の短縮を行ったわけです。…となる、実際の上演時間は約6時間だったのでしょう。
日本での上演は“ライブビューイング”と言いながら、実際はライブビューイングではなく、字幕付けなどの編集作業をしてから、約2ヶ月遅れで上演しているわけです。その際に、休憩時間のカットもしていたのでしょうね。まあ、実際の劇場ならともかく、映画館でダラダラ休憩が長いのも良くないという判断で休憩時間のカットなんでしょうが、私的には、もう少し休憩時間が長くてもいいかなって思います。だって、オペラの休憩時間って、別にトイレに行くためだけにあるわけじゃないでしょ? 食事をしたり、お酒を楽しんだり、前の幕を振り返ってみたり、友人たちとあれこれ雑談をしたり…という楽しみも含まれているわけで、そこが一般映画とは違うはずなんだけれど…せめてあと5分でもいいから休憩時間が長いとうれしいなあって思います。
で、そんな長いオペラ(映画三本分だよね)なんですが、ストーリーが面白いこともあって、そんなに長さを感じません。なにしろ、喜劇だからね。なかなか面白いんですよ。
主役のハンス・ザックス役は、当初はヨハン・ロイターの予定でしたが、降板してしまったので、代役のミヒャエル・フォレが歌っていましたが、フォレのザックスは、飄々としたザックスで、なかなか良かったですよ。
まあ、フォレに限らず、メトは歌手が良いので、歌的にはあまり不満はありませんでした…が、メトは歌劇場自体が大きいためか、ワーグナー作品では、最近の流行りに逆行して、巨漢歌手を採用する傾向があります。今回の歌手の皆さんも、皆さん、実にデップリしている方々ばかりでした。
はっきり言っちゃえば、オペラ歌手なんて、程度の差こそあり、みんなデブだから、デブに対する許容範囲って奴が、かなり広くないとオペラは楽しめません。それでも、許せるデブと許せないデブがいます。
例えば侍女役のマグダレーネなんて、侍女ですから、太っていても痩せていても、どっちでもいいのです。だから、マグダレースの役には太めの歌手さんでもいいですし、実際今回のカレン・カーギルは、かなりの巨漢歌手でしたが、全然問題ありませんでした。これは許せるデブですね。
でもね、今回、ヴァルターを演じたテノールのヨハン・ボータは、さすがに太りすぎ。これはさすがに許せないデブです。と言うのも、体型がビヤ樽体型と言うよりも、ほぼドラえもん体型で、全盛期のパヴァロッティよりも絶対に丸いと思います。問題は、ヴァルターという役は、エファ(このオペラのヒロイン、当然ソプラノ)が一目惚れしちゃう美青年って設定なんだよね。おまけに、貴族で騎士なんです。私のデブに対する寛容な心を持ってしても、これはかなり厳しいです。せめて、もうひと回り小さければ、脳内補正をかけまくって、彼を美青年として認識することも可能ですが、ボータは、見ているだけで微笑んでしまうようなデブなので、彼をイケメンとして脳内補正をするのは…やっぱり無理です(笑)。なので、彼がカッコいい(と思われる)演技をするたびに、私、心の中で「プププッ」と吹き出してしまいます。だって、可笑しいだもん。
とは言え、世界のトップヘルデンテノールって、現在、5人もいないんだそうですね(これは、メトの支配人のピーター・ゲルブの言葉です)。世界で5人しかいない、超希少種ならば、こんな体型でも引く手あまたなのも、仕方ないのかもしれません。そう考えると、声と体型が両立しているヨナス・カウフマンって、奇跡的な存在なのかもしれませんね。
演出は「いかにもメト」って感じの、オールドスタイルの演出でしたが、これがいいんです。最近流行りの現代的な演出って、なんか安っぽい感じがして、私は好きではありません。「ニュルンベルクのマイスタージンガー」も、登場人物たちに普通のスーツを着せて、現代的に演出している上演もありますが、それって、なんか違うような気がするんです。ちゃんとメトのように、昔っぽい衣装を着て、セットも中世っぽくしてくれた方が、私は嬉しいです。
あと、メトは合唱が豪華ですよね。やっぱり合唱は、人数が多くないとつまらないですよね。
で、また映画館の話に戻っちゃうんだけれど、ブルク13、音量大き過ぎ。音が飽和しています。このオペラ、特に合唱が歌うシーンは、かなりの音量があるんだけれど、そこが残念なんだね。全体の音量をもう少し下げれば、pとfの違いもはっきりするのに、全体的に音量が大きいので、すぐに音が飽和して、もう何がなんだか分からない状態になってます。ほんと、残念。そこのところの音量設定は、まだ劇場側が慣れなくて、適切な設定ができないのかな? それとも音響施設が実は貧弱なのかな?(まだ開業して5年ほどの新しい映画館なんだけれどね)
今後も音が悪い状態が続くようなら、横浜ではなく川崎に行って、ライブビューイングを見ても良いかも…。何しろ、横浜と言っても桜木町なので、湘南からだと、時間的に(乗り継ぎの時間もあるので)川崎とほぼ同じなんだよね。同じ時間で同じ値段だったら、良い環境で楽しみたいものね。
もっとも、音響的に悪いと言えば“TOHOシネマズ日本橋”だね。なにしろ、静かなシーンだと、隣のスクリーンの音が聞こえちゃうんだもん。ありゃヒドい。音楽うんぬん以前の問題です。さすがにブルク13は、あそこまでヒドくはないですよ。
今回上演していた11番スクリーンは、音響だけでなく、客席のキャパに対して、スクリーンが小さめなのも残念な感じです。なんか“109シネマズMM”が恋しくなってしまいますよ、無い物ねだりは良くありませんが…。小さなスクリーンなら、前の方の席で見ればいいのかもしれませんが、そうすると、ただでさえ大きな音なのに、もっと大きく聞こえて、音の悪さをより実感しちゃうので、なかなか難しいですよ。
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コメント
昨年末、大晦日、映画「ゴーンガール」を見に行ったら、
映画館のロビーに「クロージング」が何とか、と書いてあって。
何のことかと思ったら、閉館のお知らせだったので、びっくり。
そう、109シネマズMM。
何度も行った映画館ではありませんが、
何度か行った映画館。
いい映画を見た映画館が閉館してしまうのは寂しいことです。
横浜ブルク13は、おととしの大晦日、ゼログラビティを見たんだったなあ。
そんなことを思い出した、今日のすとん様エッセイでした。
おしまい
operazanokaijinnokaijinさん
おぉ、109MMのクロージングに行ったのですか! 私も行きたかったなあ…。ちょうど見たい映画がやっていたので、なんとか出かけようと思っていたのですが、全く時間が取れなくて行けなかった/見れなかったんですよ。ううむ、残念。その見たかった映画と言うのは「サン・オブ・ゴッド」なわけです。まだ、やっている映画館もあるけれど、なかなか出かけられないのですよん(涙)。優先順位って奴もあるし…ねえ。