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帝国劇場で「ミス・サイゴン」を見てきました

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」は…映画も見ましたし、帝劇の舞台も見ましたが、本当に良いミュージカルだと思います、見れば必ず感動しちゃうミュージカルです。特に、オペラ並に音楽で劇が作られているので、オペラファンの私には、とても親しみやすいですしね。

 「レミゼ」があれだけ良かったのですから、同じ作曲家(クロード=ミシェル・シェーンベルク)の他の作品も見たいじゃないですか? 彼は他に何かミュージカルを作曲していないのかな?…と思って調べてみたら「ミス・サイゴン」も作曲しているんですね。で、あれば「ミス・サイゴン」を見なきゃダメじゃないですか?

 「ミス・サイゴン」って、別に「レミゼ」うんぬんを言い出さなくても、有名なミュージカル・ナンバーです。ブロードウェイのロングラン公演では、歴代12位なんだそうです。

 ちなみに、現在の歴代1位は「オペラ座の怪人」で、2位が「キャッツ」、3位は「シカゴ」です。「ライオン・キング」が4位、「レミゼ」は5位、「コーラスライン」が6位、「美女と野獣」が8位、「マンマ・ミーア」が9位、「レント」が10位、「ウィキッド」が11位で、「ミス・サイゴン」が12位ですから、すごいもんです。

 「グリース」が15位で、「屋根の上のバイオリン弾き」が16位、「マイ・フェア・レディ」が20位、「メリー・ポピンズ」が22位、今度映画化される「アニー」が25位です。ね、立派なもんでしょ。

 それだけ有名な作品なのに「ミス・サイゴン」って、映像が全くないんですね。映画化されていませんし、舞台を録画したモノも、放送された映像もありません。サウンド・トラックのCDはありますが、映像がないんですね。これだけ有名な作品なのに、こういう現状ってのは、ほんと珍しい。つまりDVDが無いんです。なので、なおさら舞台を見に行きたいと願っていました。

 それが帝劇の7~8月公演で上演するんですから、見に行くしかないですね。夏休みだし(笑)。

 はい、行ってきましたよ。私が見に行った時のキャストは、エンジニア役が筧利夫氏、キム役が笹本玲奈氏、クリス役が原田優一氏でした。エンジニア役は、本来は筧利夫氏ではなく、市村正親氏がやる予定の公演でした。まあ、市村氏はすでにテレビ等で報道されていますが、7月の5回の公演だけ出演して、8月の舞台はすべて筧利夫氏に交代したわけです。胃がんで舞台を降板されたんですね。胃がんは、今や治る病気ですから、一日も早い回復と舞台復帰をお祈りしています。

 で、この筧利夫氏のエンジニアが良いんですよ。本来の市村氏のエンジニアも良いんだろなあって思うけれど、市村氏が演じると、きっとエンジニアが立派な人間に見えちゃうと思うんだよね。でも、エンジニアって、セコい小物なんですよ。“立派”とは正反対のタイプの役なんです。で、筧利夫氏が演じると、実にエンジニアがセコく見えるんですよ。エンジニアって人間は、悪いこともするけれど、所詮は小物だから憎めない、そこがいいんです。

 キム役の笹本玲奈氏は良かったですよ。さすがなもんです。本来はキムが主役のミュージカルですから、少しは頑張ってもらわないと締まりません。クリスの原田優一氏は…クリスという役そのものが、記号的な存在ですから、いいも悪いもないかな?

 「ミス・サイゴン」って、プッチーニ作曲のオペラ「蝶々夫人」を原作とするミュージカルです。時代と場所を、明治維新直後の日本から、ベトナム戦争終結前後のベトナムに変更した芝居です。「蝶々夫人」の蝶々さんがキムで、ピンカートンがクリスってわけです。

 主人公の男が、遠征先で友人の紹介で女を作って、さんざん楽しんだ挙句に捨てて帰国し、本国で妻を娶り、幸せな家庭を築く。一方、残された女は、男の子どもを産み、ひたすら男を信じて、言い寄る他の男を拒否し、男が自分を迎えに来るのを待っている。妻を連れて遠征先を再び訪れる男。そこで、残した女や子どもで会う男。絶望する女。子どもを男に託して、女が自殺する。…という、あらすじは「蝶々夫人」も「ミス・サイゴン」も全く同じ。

 なので、特に一幕は「蝶々夫人」をなぞるような展開なので「ああ、そうなるのね…」とか比較的冷静に見ていたのですが、物語は一幕の終わり頃から大きく化けてきます。というのも、「ミス・サイゴン」には「蝶々夫人」にはいない狂言回し役(エンジニア)がいるのだけれど、このエンジニアが大きく活躍しはじめるからです。彼が動く事で、物語がダイナミックに動いていきます。主役は一応、ミス・サイゴンであるキムですが、実質的な主役というか、座長はエンジニアなんだと思います。

 演劇の演出的には、二幕のアメリカ大使館のシーンは特筆すべきシーンです。大勢の人々と一緒に大道具がグルグルと動いて、大使館の内と外の人々を瞬時に切り替えて表現していくし、音楽的に力強い合唱でグイグイ来るし、終いにゃヘリコプターが登場するは、もうほんと、大スペクタクルっす。

 「蝶々夫人」も相当重い内容のオペラですが、「ミス・サイゴン」はさらに重たい内容のミュージカルです。劇が断然と現実味を帯び、絶望がより深くなっているわけです。

 確かに、この内容なら、わざわざ劇場にやってきて見るにはいいけれど、映像化は無理ですね。

 だって、これが近所の映画館で上映していたり、うっかりテレビで放送されたのを見てしまったら、心が折れてしまう人もいるでしょうし、怒り出す人もいるだろうし、クレームをつけたくなる人もいるでしょうね。

 何しろ、物語は純粋だけれど、舞台設定が少々下品(売春宿とかナイトクラブとかキャバレーとかなんだもん)だから、そこで嫌がる人もいるね、わざわざ映像化して、そういう良識ある人にクレームつけられるのもなんだしね。とにかく、出演する女優さんは、皆さん、ほとんど裸体ですから(笑)。それが舞台上で股を開いて腰を振っていたりするわけで、目のやり場に困るし、使われている言葉も、ケツとかアソコとかの放送禁止用語も満載だし、平気で人は殺されちゃうし…。そういう物語の表面的なところで拒否反応を示す人も大勢いるでしょうね。

 また劇中でベトナム戦争が描かれているので、そこがトラウマになっている人も(アメリカだと)いるだろうし、そうでなくても戦争に拒否反応がある人には厳しい内容かもしれない。

 でも、そういうあれこれはあるにしても、物語も音楽も、実に感動的な良いミュージカルです。私は帰宅して、すぐにアマゾンでサウンドトラックをポチしたくらいですもの。

 8月中は、帝国劇場で上映し、その後は日本全国を回るそうです。舞台でしか見れないミュージカルだからこそ、ぜひチャンスがあったら、舞台で見てほしいと思います。

 ミュージカルを見終えた私の感想は…もう一度見たいです。それは、再び感激に浸りたいというよりも、もう一度見ないと、あれもこれも理解できないからです。映像化されていない事もあって、事前の予習というのをせずに帝劇に向かったという事もありますが、あれこれと消化不良な感じがします。音楽的にもストーリー的にもお芝居的にも、拾いきれていないものがたくさんあるような気がします。

 だから、もう一度「ミス・サイゴン」を見たいです。できれば、オール日本人キャストではなく、それぞれの役にふさわしい人種の役者を配置したバージョンでみたいです。だって、キムは日本人役者でもいいけれど、クリスはアメリカ人じゃないとダメでしょ。エンジニアがフランス人とベトナム人のハーフという設定(つまり白人っぽい)だから、それとのコントラストで考えれば、クリスは黒人役者の方が良いかも。そんなリアル人種版「ミス・サイゴン」が見たいです。使用言語は…英語でもいいや(笑)、その代わり、きちんと日本語字幕をつけて欲しいです。

 だったら、さっさと映画化してくれればいいんだけど、それはやっぱり無理なんだろうな(ため息)。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    ミスサイゴン、素晴らしいですね。
    私はニューヨークで数回、
    日本で1回、見ました、大昔。
    エンジニアは笹野高史さん。すっごくよかったです。
    日本版の、当時のパンフレットで、日本人女優さん曰く、
    日本で演じる場合は、東洋人役も西洋人役もできて、うれしい。
    ヽ(´▽`)/
    そうですね。ニューヨークの公演では、
    東洋人役は東洋人が演じるに決まっていますから。
    そんな話を思い出した今日でした。

    おしまい

  2. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

    >エンジニアは笹野高史さん。すっごくよかったです。

     それは良かったでしょうね、想像つきます。

    >日本で演じる場合は、東洋人役も西洋人役もできて、うれしい。

     なるほど、演じる側からすれば、そうなんですね。まあ、私も日本語で見れるんだから、日本での上演は歓迎だし、その為、オール日本人キャストになっても仕方ないとは思いますが、それぞれの役にふさわしい人種で演じられる舞台も見たいです。

     オペラ「蝶々夫人」で、ガタイのデカイ白人ソプラノが可憐な蝶々さんを演じていると、ガックリするわけで、それと同じような事をやっているのがオール日本人キャストによる上演だと思うんですよ。

     つべこべ言うなと言われれば、その通りなんですが…。

     いつか、ニューヨークやらロンドンやらに行って見よう。

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