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自分から相手が見えなければ、相手からも自分は見えない?

 『頭隠して尻隠さず』という言葉がありますが、あれって頭を隠していれば、自分から相手の姿が見えず、うまく隠れられたような気になっているけれど、自分の身体イメージと実際の身体が一致していないため、どうにもうまく隠れきれていなくて、ついついお尻とか尻尾とかが隠しきれなくて、簡単に見つかっちゃうって話で、幼児とかイヌネコだとありがちな話です。

 で、どうやら金魚…と言うか、サクラが、今、そんな状態みたいなんです。

 サクラは今、実にモテモテで、毎日、毎時間、毎分、毎瞬間ごとに、ホノカとかキキョウとかに追いかけ回されて、お尻を(ってか総合排泄器)をつっつかれまくって、逃げ回っています。人間で言うと…セクハラされ放題なので逃げ回っているようなモノです。いや、セクハラと言うよりも“セクハラ+ストーカー被害”って感じかも。まあ、見ていて、ちょっとかわいそうな感じがしないでもないくらいに、しつこく追いかけ回されています。

 ホノカは本当にサクラのあの部分が大好きみたいで…。

 それだけ追いかけ回されて、サクラもイヤなんでしょうね。でも水槽だから、逃げられるわけもなく、無駄な足掻きをするわけです。それでも小さな子なら、物陰に潜む事もできるし、ドジョウなら砂利の中にカラダを隠せるけれど、サクラは巨大魚だし、ドジョウでもないので、どこにも隠れられません。かわいそうな話です。

 そんなサクラさんですが、最近、ちょっと行動が変なのです。

 それは水槽の隅に行って、真上か真下を向いて、じっとしているんです。その水槽の隅と言うのは、人から見て水槽の後ろ側で、その部分は水槽のガラスにフィルムが貼ってあったりします。私たち人間から見ると、サクラの後ろ姿しか見えないわけです。そんな姿で直立不動なのです。

 まるで、東海林太郎氏を後ろから見ているような感じです(って、たとえが古くてゴメン)。

 最初の頃の私は、このサクラの行動の意味が分からずに「???」な感じでした。

 やがて、その体勢で、他の金魚とカラダが触れると(ってか、他の子がぶつかってくると)アワ喰って泳ぎだすので、はは~んときました。

 サクラの直立不動の体勢は…隠れているつもりなんですよ。

 確かに、あの姿勢だと、サクラからは誰も見えません。人間も見えなければ、他の金魚たちも見えません。サクラからは何も誰も見えないので、それで隠れたつもりになって、安心している…みたいなんです。そして、何かがカラダに触れると…それは“見つかった!”ってわけで、すぐにパニくって泳ぎだすわけです。

 いやあ、サクラさん、苦労してますね。ホノカが来るまでの、あの、のほほ~んとした日々は、もうサクラさんにはないのでしょうね。なんか、ホノカやキキョウに追いかけ回されるのが、すっかり心の傷になってしまったかのようです。

 そんなサクラを見ていると、ちょっぴり気の毒な反面「きちんと姿を隠す事もできないのかよ~!」と突っ込みを入れたくなります。だってね、自然界で敵から逃げて隠れないといけないのに「自分から見えなきゃ相手からも見えない」なんて甘い考え方だと、すぐに見つかってエサになっちゃうよ。サクラは、金魚は、所詮ペットだから、そのあたりが実になまぬるいわけなんだなって思いました。

 野生が足らんよ、野生がね。

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