先日、ネットで“OperaVision/オペラヴィジョン”というサイトを見つけました。アドレスを見ると、EU(欧州連合)に属するサイトのようです。よく分からないけれど「日本という一国のアドレスではなく、アジア全体共通のアドレスで作ったサイト」のヨーロッパ版のようです。ま、ヨーロッパ全体で管理するアドレスに属する、ヨーロッパ系のサイトって感じですね。
そんなわけでオペラヴィジョンは、ヨーロッパを中心とする、世界中のいくつかの歌劇場が協力しあって作っているサイトのようです。有名どころだと、イギリスのロイヤル歌劇場(コヴェントガーデン)が加わっています。残念なことに、アメリカのメトロポリタン歌劇場とか、オーストリアのウィーン国立歌劇場等のような超有名どころは入っていません。たぶん、自力でどうにかなるからでしょうね。ちなみに、日本の新国立劇場はヨーロッパではありませんが、メンバーに入っています。
オペラヴィジョンでは、これらのヨーロッパを中心として歌劇場の最新公演のうちの、いくつかを、ネットで世界無料公開してくれています。実に有り難いですね。オペラって、YouTubeで検索しても、いくつかは無料で見ることはできますが、大抵は古くて画質の悪い公演ですから、最新のものが見られるのは、実に有り難いです。
で、これらの作品は、いつまでも公開しているわけではなく、どうやらどの公演も、半年程度の期限付きの公開のようですから、オペラヴィジョンを見ていて、気になったら時間を見つけて、ドンドン見るべきなのでしょう。
このサイトの大きな問題は…ほとんどの公演に“日本語字幕”が付いていないことかな? それって我々日本人には厳しい話ですね。
以前なら「ああ、日本語字幕がないのか…」と言って諦めていた私ですが、最近は技術の進歩が著しくて有り難いです。オペラヴィジョンはYouTubeの機能を使って配信しているので、YouTubeの自動翻訳機能(おそらくAI使用)を使って、日本語字幕を付けることができます。AIによる自動生成された日本語字幕は…かなり下手くそですし、分かりやすい誤訳も結構あります。ですから、全くの新作とか、よく知らない演目を見るには厳しいかもしれませんが、よく知っているおなじみの演目ならば、イタリア語や英語の字幕で見るよりも、だいぶ楽に楽しめる…程度の字幕となります。下手くそな字幕でも、無いよりもだいぶ助かります。
そんなわけで、お試しって感じで、さっそく、ラトビア国立歌劇場による、プッチーニ作曲の「ラ・ボエーム」見てみました。最近のテレビは、テレビ放送だけでなく、YouTubeも見られるんだよね、うふふ。
さて、いつものように、スタッフ&キャストです。これらの人物の日本語表記もAIによるものですから、間違っているかもしれません(笑)。
指揮:アルヴォ・フォルマー
演出:ローラ
製作:ラトビア国立歌劇場(2026年4月26日)ロドルフォ:ドミトロ・ポポフ(テノール)
ミミ:インガ・シュルボフスカ=カンツェヴィチャ(ソプラノ)
ムセッタ:カトリーナ・ポーラ・フェルスベルガ(ソプラノ)
マルチェロ:ヤーニス・アペイニス(バリトン)
ショナール:ダニイルス・ポゴリレス(バリトン)
コリーヌ:エドガルス・オシュレヤ(バリトン)
役名が通常表記とはなんか違うのもありますが、それはAIのせいです。役名に限らず、AIによる自動生成された日本語は、分かっていても違和感があります。今回、ボエームを見ながら、強く感じた違和感は…男言葉女言葉がうまく訳されていないってところでしょうか? 男性のセリフが女言葉で訳されていて「こいつ、オカマか?」と感じたり、逆のパターン(女性のセリフがガサツな男言葉に訳されている)では、誰か別の男性のセリフと勘違いしたり…。普段、あまり意識していませんが、我々は会話文だと、結構、男言葉女言葉を無意識に利用しているなあ…と思いました。
そんなアホなAIのせいで分かりづらい部分もあるけれど、そもそもの演出が結構「???」な演出でした。正直、何をやっているのか、ほぼ分からない演出でした。衣装も、主役と脇役とモブたちの区別がよく分からない衣装だし、全体的にどこにもここにも力が入りすぎていて、もう滅茶苦茶なオペラ公演だなあと思いました。
そんなわけで、このオペラ公演、オペラ初心者さんには、絶対に薦めません。むしろ「見ない方がいいよ」と言ってしまうレベルですが…手練のペラゴロさんには「面白いオペラがあるよ」と薦めてしまうでしょう。そういう通向けのオペラ公演でした。
「ボエームなんて、ストーリーも歌も全部知っているよね。知っているっていう前提で、好き勝手やらせてもらいまっせ」という感じでした。そんなわけで、全く初心者さんには優しくないオペラでした。
歌詞と音楽は全く原作通りですが、それ以外がほぼ違います。人物の設定だって、時代や場所の設定だって、なんか違います。同じなのは登場人物の性別くらいかな? ミミの初登場シーンは、部屋のろうそくが消えてしまって、火を借りに来た…という口実で若い男の部屋を訪ねる…はずですが、このオペラでは、歌ではそのように言ってますが、手に持っているのはスマホで、それをミミから受け取ったロドルフォは、そのスマホを充電コードに差して充電してあげるという、明らかに21世紀仕様の行動を取っています。場所も当然、パリの屋根裏部屋ではなく、どこかの国の荒れた地下室(たぶん核シェルターじゃね?)だったりします。
貧しいボヘミアンのはずの登場人物たちも、結構こざっぱりした服装していますし、寒い寒いと言いながら、ロドルフォは半袖を着ていますし、部屋にはコウコウと電気ストープが点いています。我々が知っている「ボエーム」ってのを忘れて楽しんだ方が後腐れなく楽しめると思いました。
本来のストーリーは悲劇なんだけれど、私はこれを喜劇として受け取り、笑いながら楽しく見させてもらいました。真面目に見てちゃダメなんだと思いました。
今までも読み替え演出によるオペラはいくつも見てきましたが、今回のは音楽とテキストだけは原作通りですが、その他はほぼ違うので、読み替えとか新演出というよりも、ボエームというオペラを素材の一つとして使用した、何か別の演劇である…と思ったわけです。
オペラが演出の時代になった…と言ってから、久しいですが、ここまで演出によってオペラをぶっ壊していいんだと思ったわけです。
これが、ヨーロッパの最先端のオペラの現状なんだなって思ったし、だからストレートに日本には入ってこないわけだ…とも思いました。いやあ、日本のオペラファンからは、下手すると反感買いそうな公演だもの(笑)。
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