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浅草で「浅草オペラ」を見てきた

 「浅草オペラ」…往年の浅草で流行っていた、いわゆる“浅草オペラ”をオマージュした「歌と活弁士で誘う ああ夢の街 浅草!」という演芸公演(以下、「浅草オペラ」と略)を見てきました。決して、いわゆる“浅草オペラ”の復刻とか再演とかを見てきたわけじゃありません。

 まずはスタッフ&キャストです。

 演出:田野邦彦
 音楽監督:山田武彦

 ソプラノ:植木稚花、大津佐知子、神保智、根岸奏好
 メゾソプラノ:神谷美郷
 テノール:大石将史
 バリトン:男澤友泰

 ピアノ:大下沙織
 ヴァイオリン:山根あずさ
 クラリネット:加藤亜希子
 アコーディオン:大田智美
 活弁:麻生八咫

 基本的な内容は“浅草オペラ”時代(つまり大正時代)に、浅草界隈で流行った歌をメインに浅草関連の歌を合わせてレビュー形式で上演した作品です。ショーの最後には「浅草版 椿姫」が上演されました。

 セットリストは以下の通りです。

 THE・ASA★KUSA
 裸体~ホフマンの舟唄
 波浮の港
 カチューシャの唄~ゴンドラの唄
 恋はやさし野辺の花よ
 ベアトリ姉ちゃん
 ブン大将
 ある晴れた日に
 流行歌メドレー(僕の青春~街のSOS~もしも月給が上がったら~笑い薬~ウクレレ・ベビー)
 コロッケの唄
   (休憩)
 浅草パラダイス
 待宵草~籠の鳥
 御寺の壁には
 ほっときなさい
 テルミー
 パリの屋根の下
 洒落男
 浅草版「椿姫」
 浅草キッド

 絶対に余所では見られない、面白く興味深い舞台でした。ただ、これを本物の“浅草オペラ”と思って見たら、たぶんダメです。あくまでも“浅草オペラ”をオマージュした演芸作品でした。

 とは言え、歌はアレンジ多めで、歌詞も日本語だけれど音楽は本物だし、歌手はプロのクラシック系の歌手ですし、皆さん歌ばかりでなく、芸の方も達者で、しっかりエンタメしていました。特に「ある晴れた日に」と「花から花へ」を歌った大津佐知子さんなんて(失礼な書き方になってしまうけれど)こんな演芸作品で歌うには勿体無いような立派な歌唱でした。素晴らしい…と思うと同時に、もったいない…とも思ってしまいました(ほんと、ごめんなさい)。

 活弁士が出演者に入っている事からも分かる通り“浅草オペラ”だけでなく、活動写真もオマージュされています。

 確かに、浅草が輝いていた大正時代は、活動写真の時代でもあったわけですから“浅草オペラ”と活動写真は同時代の2大エンタメだったわけです。歌の伴奏をしていた、ピアノ・ヴァイオリン・クラリネット・アコーディオンという楽隊は“浅草オペラ”ではなく、活動写真の劇伴フォーマットです。昔の無声映画は、音が無かったので、活弁士がストーリーの説明をし、劇伴はピアノ・ヴァイオリン・クラリネット・アコーディオンからなる楽隊が演奏して雰囲気を出していたわけです。ちなみに当時の浅草オペラは、ちゃんとオーケストラ伴奏だったそうです。活弁の楽隊では歌っていなかったようです。

 だから、今回上演された「浅草オペラ」は“浅草オペラ”と活動写真を混ぜて、往時の浅草大衆文化を懐かしみましょうって趣旨なわけです。ですから、こちらもオヒネリを投げたり、食べながらショーを見たりと、ラフな気分で楽しんだわけです。

 “浅草オペラ”はオペラと名乗っていますが、オペラではありません。実体は、オペラと言いつつも、オペレッタ(当時は世界的にオペレッタが流行っていました)だったそうです。ですから、今回の「浅草オペラ」も令和の感覚でオペラを期待するとガッカリします。“浅草オペラ”の“オペラ”は、今で言う“洋楽”程度の意味の言葉です。それらを踏まえて、今回の「浅草オペラ」でも、オペラのアリアを歌えば、オペレッタのソングも歌うし、当時浅草で流行った日本の流行歌も歌うわけです。まあ、大正の浅草の音楽シーンを懐かしみましょうなのです。

 浅草版「椿姫」なんて、実になかなかのものでした。椿姫のストーリーと音楽(主に第1幕)を使って、20分程度の音楽劇(それもコメディー)にまとめています。「乾杯」とか「思い出の日から」「花から花へ」などは、割とちゃんと歌っていましたし「第一幕の前奏曲」に歌詞を付けて合唱していたり、「プロヴァンスの海と陸」はタンゴ(当時はラテン音楽も流行っていましたね)にアレンジして踊ってみたり、状況説明の歌は、今っぽくラップだったり、まあやりたい放題で面白かったです。そもそも登場人物の名前も日本風でしたし(笑)。ヴィオレッタは「花魁 小町」なのはともかく、アルフレッドは「佐竹有九郎」、ジェロモンは「佐竹二郎右衛門」です。アルフレッドと有九郎、ジェロンモンと二郎右衛門、よく考えたものです。ちなみに、両者ともに秋田県出身の士族という設定でした。そうか、プロヴァンスって秋田だったんだ…。

 また会場で売られていた「浅草オペラ 100年の回想」という本は、資料的価値もあり、啓蒙的要素もあり、500円では勿体無い本でした。この本は、私の宝物となりました。

 そんなわけで、とても興味深くて、楽しかった「浅草オペラ」でした。ほんと、サイコーです。

 ですが、問題は会場となった東洋館です。東洋館は浅草演芸ホールの上(4階)にある、イロモノ専門劇場なのですが、建物が古くて、階段だらけの上に、その階段は昔の仕様で、狭くて急で登りづらくて、年寄り向けではありません。何より、劇場スタッフの客対応が全然良くなくて、エレベーターはありましたが、ショーの前では、ここには書けないようなヒドい対応が行われていましたし、帰りはエレベーターを使わせてもらえませんでした。

 せっかくの楽しいショーだったのに、東洋館には、ほんとガッカリです。あのスタッフの対応と、あの階段や建物の構造を考えると、演芸ホールには行っても、たぶんもう東洋館には行きません。いや、行けません。無理です。そこはとっても残念です。

 東京の漫才は好きなんだけれど、漫才なら、演芸ホールでも見られるし…ねえ。無理して東洋館に行く必要はないわな。「浅草オペラ」も面白かったけれど、東洋館でやっているうちは、もう行けないなあ。せめて普通にエレベーターを使わせてもらえればいいのだけれど、それが無理なら、あそこはダメだよ。

 次に「浅草オペラ」をやるなら、下の演芸ホールでやってもらえないかな?

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