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声域と声種は関係ないが連動しているのが望ましい

 声域(あるいは音域)と声種は関係ありません。おそらく、何度も何度もこのブログで書いてきた事と思います。いや、実際、声域と声種には何らの関連性もありません。

 しかしこの事をついつい何度も取り上げてしまうのは、ネットサーフィンをしていると、声域と声種をリンクしている話が、あまりに多いからです。曰く「G1まで出るからバス」、曰く「B4まで出るからテノール」…とかね。

 声種にとって大切なのは、どこまで出るのか(出せるのか)という声域ではなく、どんな音色の声なのかが大切です。

 まず、軽い声なのか重い声なのか、深い声なのか浅い声なのか、美しい声なのか滑稽みのある声なのか。自分の声がどういうキャラクターを持っているのか、どういうキャラクターを歌うのにふさわしい声なのか、これが声種なわけです。

 簡単に大雑把に言ってしまえば、女声なら、お姫様の声ならソプラノ、侍女の声ならメゾソプラノ、お母様の声ならアルト。男声なら、英雄の声ならテノール、知的な参謀の声ならバリトン、王様の声ならバス…です。声域なんて、全く関係ないのです。大切なのは、声が持っているキャラクターです。

 しかるに、声域と声種をリンクして語る人が多いのは、合唱の弊害なんだろうと、私は考えます。というのも、女声の高声をソプラノ、女声の低声をアルト、男声の高声をテノール、男声の低声をバスと呼ぶからです。これがすべての誤解の始まりなんだろうなあ…と思ってます。

 例えば、合唱における男声の高声なんて、声域だけ考えれば、テノールはもちろん、多くのバリトンやバスでも歌えます。男声の低声なんて、声域だけ考えれば、バスだけでなく、バリトンやテノールでも歌えます。だったら、合唱におけるテノールとかバスとかの呼び方を止めて、“合唱男子高声”とか“合唱男子低声”とか呼べばよかったのだろうけれど、クラシック音楽発祥の地であるイタリアの人は、西洋における無問題な人たちだから「男声の高いパート? 軽い声のグループだろ? テノールって呼んどきゃあ、いいんじゃねえの?」とかいう認識で、本来声種の呼び名を合唱パートに当てはめただけなのに、そのいい加減さを理解しない日本の合唱人が、声域と声種をリンクして語るわけだから、誤解があたかも真理のように語られちゃうわけだ。

 つまり「これだけの声域を持っているから、このパート」ではなく「この音色の声だから、このパート」ってのが正解なわけですよ。

 「でも、それぞれのパートには求められている音域があるじゃん」

 まあ、その通りなんだけれど、合唱って集団で歌うわけだから、必要とされている音程が歌えなきゃ歌わなきゃいいんだよ。それよりも大切なのは、声としてのキャラクターなわけで、そこを押さえておけば、音楽としては無問題なんだな。

 もちろん、理想は必要とされている音域と自分の声域が重なっている事だけれど、もうそこは、例え音域にも不足があっても、音色を優先して、音域に関しては鍛錬とか修練とかで乗り越えるべき問題だと思います。そもそも、最初から自分の声域の音をきちんと歌える人なんて、いないんだから! 歌を始めたら、まずは自分が持っている声域内の音をきちんと発声して、歌えるようにする事でしょ?

 でも、それはとても難しくて、真面目に取り組めば、何年も何年もかかってしまう人もいるわけなんだよ。かく言う私も、まだまだきちんと自分の声をすべて発声できるわけじゃあないしね。でもそれじゃあ、素人合唱は成り立たないから、今の音域が自分の声域であると信じて歌っていくわけで、歌手としては、なんとも勿体ない話なわけです。

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