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私はトップテナー

 第九の練習に行ってきました。今回は、543~590小節(リハーサル記号:M)と313~333小節(K)と、男声合唱の410~431小節をやりました。今回もたくさん注意されたし、色々な事を思ったので、それらについて書いてみます。

 まず「息が強いと声がもれる」「息が強いと声は鳴らない」。これはS先生のセリフですね。どこの合唱団でもそうでしょうが、みなさん真剣になって、思いっきり歌うわけですが、どうしてもお上手でない人は、息のコントロールが上手くありません。まあ、私も例外ではないわけですが…。ついつい、大きな声とか、高い音とかを出そうとして、息を強くしてしまいがちですが、そんな私たちを見て、S先生がおっしゃった事がこれ。正解ですよ。

 フルートで考えてみれば、フルートに息を吹き込みすぎれば、音がちゃんと鳴らないものだし、変な音が出ることもある。また、それだけ息を吹き込まないと音が出ないのは、明らかに音の出るポイントをハズしている事も多く、そんな人のフルートの音は息モレの音ばかりが目立ったりするわけで、それと全く同じことを歌でもやってしまうわけです。

 だから、息を弱くする…というのは間違いでしょうが、無駄な息は使わずに発声する、この線で歌っていきたいです。

 さらに、使う息は最小限にしつつ、その声を身体全体でどう響かせていくかが、次の課題となってきますが…それができれば、苦労はしないよね。

 それにしても、息の強い声の合唱というのは、やはり美しくなく「それでは合唱ではなく雑唱です」とS先生はジョークでおっしゃってましたが、雑唱とは言い得て妙な言葉ですね。私の中ではヒットしました(笑)。

 ドイツ語は日本語と違って、アクセントが強弱で表されます。ですから、自然とアクセントがある部分は強拍に、無い部分は弱拍に来るわけです(これは知ってました)が、さらにS先生がおっしゃるには、弱拍にはあいまい母音が来るそうです。ほー、言われてみれば、しごく納得、当たり前っちゃあ、そのとおりだけど、そんな事を意識したことがなかったので、ほーっと言った感じです。ならば、弱拍にある、あいまい母音をムリムリにはっきりと歌う必要もないんだな。

 マルカートの歌い方。カラヤンは「奈良の東大寺の鐘の音のように歌え」と言ったそうです。ゴオォォォーンって感じだね。なるほど、レガートでもなく、スタッカートでもなく、マルカートって、ああいう感じなんだね。よーく分かりました。

 私に限らず、テノールという種族は(ノドに力が入りすぎるため)音がぶら下がりがちになるようです。なので、S先生は、高い音のところに来ると、テノールの方を見ながら「音は上から取る!」とおっしゃってアクションをしますが、あれって、音を上から取るってのは、身体の動作としては、うなじを伸ばして歌うことなのかしら?って思いました。間違っているかもしれないけれど、なんかそんな気がします。少し研究してみようっと。

 さて、合唱をやっていると、どうにもこうにも音程の不安定な時があるわけで、今回のS先生はテノールの音程のアバウトさに我慢がならなかったようで、合唱練習中に、ついに“戦犯探し”を始めました。

 戦犯探し…簡単に言うと、一人一人歌わせてみて、誰がヘマな事をしているのか、明らかにする作業です。今回は、566小節の4拍目の Alle Menschen の Al- の音(Dです)が気に入らなかったらしく、そこを一人ずつ、ピアノをポーンと鳴らした後に歌わせてくださいました。

 いやあ、皆さん、ドッキドッキだったみたいです。いやあ、実に色々な音程のDが鳴ってました。寄せ集めのアマチュア合唱団ですからね。そんなモンでしょう。私ですか? 実は私はリラックスしすぎていて、自分の番に気がつかず「君の番だよ、君、君」と言われてしまいました(笑)。

 私は「響きが足りない!」と言われて、やり直しさせられました。合唱では、30~50%程度のハーフヴォイスで歌っている私です。普通に歌っても、響きが足りない人なのに、これだけ小音量で歌えば、やはり響きは足りなくなりますね。むしろ、小音量で歌うのだから、響きを強めにしてというか、響きだけで歌うつもりで、臨んだ方がいいんじゃないかと反省しました。いやあ、今回の第九は、学ぶことが多いです。

 さて、最後は男声合唱です。第九には男声合唱のパートがあるので、時折、女声は早めにあがって、男声だけで練習する日がありますが、今回はその日でした。

 今回は最初だったので、まずはパート分けから。男声合唱は三部合唱で、本来はテノールを二つに分けて、トップテナーとセコンドテナーに分ければ、それで済むわけですが、元々少ないテノールを二つに分けてしまっては、ダメダメになってしまうので、テノールの低めの人とバスの高めの人を集めて、それでセコンドテナーにします。

 本人の希望優先でパート分けをしたのですが、バスの人はバランスよくバスに残る人と、セコンドテナーに移動する人とに分かれました。テノールは…意外なことにセコンドへ行きたがる人が結構いました。特にベテランさんで歌える人は、セコンド希望なんですね。トップ希望者は、実はさきほど戦犯探しの時に、色々な音程で歌っていた人ばかり(つまり新人さん中心ってわけ)、いいのか、それで、本当に(笑)。

 テノールって『高音命!』と言うか、『高音上等!』と言うか、多少外れてても高い声にチャレンジしたいというギャンブラーさんたちが多いと言うか、まあ、そういう種族なんですが、だからこそ「トップとセコンド、どっちに行く?」って聞かれると、テノール気質な人間は、周りを見ずに「トップ(はぁと)」って選択をするんだよなあ。

 おそらくキャリア積んだベテランになると、もう高い音も十分歌ってきたし、しんどい思いをする(高い音を出すのは、確かにしんどいです)のも、もう結構ってわけで、セコンドに行っちゃうのだろうと思います。

 私ですか? 私は別にベテランというわけではないし“セコンド”という言葉の響きがなんとなく(笑)イヤなので、トップテナーを希望しました。

 トップだと、一番高いところが、五線の上のソなんですが、これって、今まで散々苦労してきた音なんですが“今年はハーフヴォイスで歌う”と決めてやっていると、これが案外、ラクにいけるんですよ。高いところは、フルヴォイスでは、まだまだ博打っぽいところがある私ですが、ハーフヴォイスなら安全圏内だという事が分かりました。第九のテナーの最高音は、五線の上のラなんですが、ハーフヴォイスなら、この音も何とかなるかもしれない…そんな気がしてきました。音量・音質重視の独唱ではなく、音程・バランス重視の合唱では、ハーフヴォイスはなかなかの武器になるんじゃないかと思いました。

 次回の練習は、よんどころない理由でサボっちゃいます(笑)。あんまり、進まないで欲しいなあ…

コメント

  1. みるて より:

    第九の内声パート難しいですよね。
    わたし個人的にベートーヴェンって和声学苦手だったのではないかしら?と思っています。
    和声の基本って内声はあまり動かさずに外声を動かして作っていくという概念があるんですが、第九のコーラス見ると
    なにこれ~???ってくらい内声動いてますものね。
    テノールも大変そう!跳躍音多いですからねぇ。がんばって歌ってくださいね!
    そして方やソプラノはきっちり発声ができていないと悲鳴になるし(汗)
    なんにしても大曲です。楽しんできれいに仕上がるといいですね。

  2. すとん より:

    >みるてさん

     私が思うに、ベートーヴェンって歌が苦手だったんじゃないかなあ…って思います。内声部の動きにしてもそうだし、メロディーラインにしても、それぞれの声種の音域のどのを使うかとか、ちょっと美味しくなかったり、無理めだったりするじゃないですか。

     こう言ってもアレだけれど、ベートーヴェンって、歌手ではなく、ピアニストなんだと思う。どうも、歌に関しては、こなれた感じがしないんですよね、第九に限らず。

  3. みーむ より:

    声楽、ぜーんぜん分からないのですが、すとんさんがいわれた『響きが足りない』とはいったいどういうことなんですか。そして、どうすれば声を響かすことが出来るのですか。興味があります。

  4. すとん より:

    >みーむさん

     声楽の用語って、同じ言葉でも流派によって指し示す内容が違ったり、またその説明もどこかオカルトチックであることを前提にして読んでください。

     声楽で使う声は、二つの部分から成り立っていると思ってください。一つは、生声(なまごえ)で、もう一つが、響きです。生声というのは、声帯から出てきた音が割とストレートに声になって出てきたと思ってくれて結構です。対して響きというのは、声帯から出てきた声がら身体のあっちこっちを経由して、それから外に出てきたものと考えてください。

     力強いのが生声なのですが、生声は全く美しくないのです。対して、響きは美しいのですが、これを力強く育てるのはなかなか大変です。ですから、この生声と響きを良い按配でミックスしたものが、声楽的な声です。

     印象的に言うと、平べったくて堅い声が生声で、厚みがあって柔らかい声が響きです。日本人の話し声は、生声主体で成り立っていると言われていますので、話し声が生声と考えてもOKかな。

     では、生声にどうやって響きを付加するかですが、それは身体の内部を広げて、身体を膨らませて、その空間を最大限に利用して、共鳴とか共振という物理的な作用で生声を響きに換えていきます。

     ピアノで言うと、弦を叩いた直接音が生声で、それにボディの共振や共鳴を加えることで、あの美しいピアノ音になると同様です。

     具体的に言うと、口腔を広げる、舌を押し下げる、ノドを広げる、声を鼻腔に入れる(ただし、鼻腔から出してはいけない。鼻から声が出ると鼻声になってしまいます)、声を副鼻腔に入れる、耳を開ける(感覚的にです)、目を見開く(これも感覚的にです)、胸を前後左右上下に広げる、などの動作を同時多発に行います。そのようにして出来上がった体内の空間に、声を入れることで、響きを付加するんです。

     私の声に響きが足りないのは、元々の私の身体の空間が狭く、無意識だとあまり響きが付加されない体型だからです。ですから、意識的に体中の空間をあっちこっち広げてやらないといけないのですが…それはとってもシンドイ作業なので、ついついサボってしまうのですよ(笑)。

     この、声に響きをつける方法は、たぶんフルートでも同様だと思います。フルートは楽器としては、この共振共鳴部分が少ない楽器で、そのために倍音などが少ないのだと思います。ですから、演奏者が自分の体内の空間を広げることで、声楽同様に、フルートの楽音に響きを付加できるのではないかと、私は思ってます。

     非常に大雑把な説明なので、声楽関係の方の中には、違和感を感じる方もいらっしゃると思いますが、まあ、私の説明の足りないところをぜひ補ってください。

  5. みーむ より:

    『元々の私の身体の空間が狭く』

    …なかなか、難しい表現。
    フルート吹く時、口の中をまあるく開けると、
    その口から出された空気がフルートの歌口から入っていい塩梅に震えると、いい塩梅の音が鳴る。
    鳴ってるのはフルートなのに、口腔内に空間を作るほど、響くのは事実ですよね。実感してますし。

    声は声帯を震わせてでるけれど、そのついでに?!身体の中の空間の空気も振るわせて、音をAMPLIFYさせるということでしょうか。

    すみません、フルートに置き換えないと分からない私というのもナンですけどご容赦ください。

  6. すとん より:

    >みーむさん

    >声は声帯を震わせてでるけれど、そのついでに?!身体の中の空間の空気も振るわせて、音をAMPLIFYさせるということでしょうか。

     たぶん、そうです。と言うのも、体中の空間を活用する事で、響きを付加するのはもちろん、音量そのものも増えるからです。

     ま、実際のところは、あまりにオカルトすぎて、なかなか分からないのですが、とにかく、体中の空間という空間を、ガバーと広げることで、響きと音量の両方を得ることができるのです。

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