私は、今も昔も、映画をよく見る人なんだと思います。
映画って、比較的安価で手軽なレジャーだし、ずっと、映画館が近所にある環境で生活をしていたので、それもあって映画をよく見ていたのだと思います。
一時期、ちょうど私の青年期(単館の映画館が廃れ、シネコンの映画館が出来始める、その端境期)に、近所の映画館が一斉に廃業してしまい、気軽に映画が見られなくなった時を除いて、ほんと、コンスタントに年に数本の映画を見てきました。
そんなわけで、今昔の映画鑑賞環境を比較してみると、あれこれ実に多くの点で異なっている事に気づきました。たぶん、今の若い人には想像付かない事だらけだろうなあ…。
昔の映画館では、入場料さえ支払えば、追い出される事なく、いつまでも映画館にいられました。だから、朝、映画館に入場して、夜まで、好きな映画をずっと見ることだって出来ました。何度だって、何時間だって、映画を見れたんですよ。
また、映画館って、好きな時に入場し、好きな時に退場できるモノでした。指定席があるのは、都会の大劇場だけで、地方の映画館なんて、全席自由、立ち見もオーケー…ってか、人気作は、基本的に立ち見ですね。私なんて、いつもいつも立ち見で映画を見てました(涙)。
映画館への出入りが自由なので、当然ですが、映画を始めから見る…という発想はありません。映画とは、物語の途中から見るものなのです。途中から見始めて、最後のオチまで見たら、次の回で最初から見て、最初に見始めたところまで見たら、劇場を出る…というわけで、オチを知りながら、冒頭部を見るという、推理モノなんかだと、台無しな鑑賞をしていたわけです。
映画館への入場料は、今と変わりありませんが、今は映画って、基本的に1本しか見られませんが、当時は、普通に2本立て、3本立てでしたから、映画館に行けば、映画を2つ、3つ見られたわけです。
例えば、寅さん映画(「男はつらいよ」)は、いつもドリフターズの映画と同時上映でしたし、洋画だと、私の記憶に残っているヤツで言いますと「ジョーズ」と「タワーリングインフェルノ」が同時上映でしたし、「かもめのジョナサン」と「華麗なるギャツビー(旧作の方ね)」も同時上映でした。なので、映画館に映画を見に行くと、半日が終わってしまったんです。
それなのに、いつしか映画館では指定席が当たり前になり、映画も一本しか見られなくなった時、なんか損した気分になったものです。「これって、実質上の値上げじゃん」って思ったものでした。
また、映画って、地域や地方によって、上映時期が違いました。大体、テレビや新聞で宣伝するような映画は、まずは東京で上映して、それから1~2ヶ月してから、地方にやってきました。その地方の中でも順番があって、私が住んでいる市はいつも後回しで、まずは隣町の映画館での上映が終わってから、やってきたものです。なので、映画って、封切り(昔は映画の初日をそう呼んでいました)から半年ぐらいの間は、日本のどこかでやっていたので、見逃した映画は、まだやっている映画館を探し出して見る事ができました。
そういう情報は、当時はインターネットなんてありませんでしたから、雑誌(「ぴあ」です)からの情報で探していたんですね。
実際、ウチの近所の映画館って、東京と比べると、話題作はだいたい2ヶ月遅れ、そんなに話題になっていないような映画だと、半年遅れが普通でした。今じゃ、日本全国同じ日に上映するどころか、ハリウッド映画なのに、アメリカ本国よりも上映が早かったりするのを見ると、ほんと、別世界なんですよ。
ちなみに、当時の洋画だと、東京であっても、だいたい本国から半年遅れで上映していました。アメリカではクリスマス映画を、日本ではお盆に上映する…のが当たり前でした。なので、アメリカ(たいていハワイ)に行って、一足先に洋画の話題作を見てくるというマニアの方もいました。
実は米軍キャンプ内の映画館は、アメリカ本土と同じスケジュールで映画をやっていたので、話題作を日本の映画館よりも半年ほど早く上映していましたが、キャンプの中に入るには手づるが必要だったので、私のような庶民には無理な話なので、おとなしく指を咥えて半年待っていました。
そうそう、洋画は字幕が当たり前で、吹き替え版は、ディズニーなどの子供向け映画を除けば、映画館ではやっていませんでした。その字幕も、昔は手書き文字だったし、画面の右端に縦書きで書かれていたんだよ。なので、字幕を見ていると、画面を見損なったりもしていました。
あの頃は、テレビでも毎日のように映画を放送していました。で、テレビで放送する映画は、すべて日本語吹き替えだったんです。なので、映画館で洋画を見ると字幕版で見るので、自然と「字幕で映画を見るのは映画エリートで、吹き替えで見るのは映画庶民」なんていう感覚が芽生えたものです。
あと、テレビで放送される映画って、基本的にカットされて、放送されたものです。カットというのは、映画の一部を省略されちゃうって事です。主に放送時間の都合ですが、それもあって、映画館で映画を見る人は、カット無しで見られる映画貴族だー!みたいな感覚も有ったり無かったりしていました。
また、昔はビデオが無かった事もあって、名画座と呼ばれる、旧作ばかりを上映するタイプの映画館があって、そういう映画館では、普通の映画館の半額程度の入場料で、映画を見ることができました。それも、3~5本立てでした。半日どころか、一日がかりで映画鑑賞をするんです。大学生の頃は、そういう名画座に通って、浴びるほど映画を見たものです。
ほんと、映画を見る環境は、今と昔じゃ、大違いでしょ?
蛇足 そう言えば、昔の映画館って、どこも臭かったよなあ。ほのかに、トイレの消臭剤の匂いがしたものです。あと、映画のおともは、ポップコーンじゃなくてお煎餅だったよね。
↓拍手の代わりにクリックしていただけたら感謝です。
コメント
懐かしい話です。
私は映画に出かける方ではなかったのですが、友人の両親は3本立てなどによく行くようで、連れて行ってもらったことがあります。
ぴあにすら乗っていない小劇場だったようなのですが、おそらく出かけるたびに上映をチェックしていたのでしょう、タブチくんを見た記憶があります。
オトナになってからはETとバックトゥザフューチャーの2本立てに行き、遅ればせで流行に引っ掛かりました。
今でもそういう劇場、残っているんでしょうか。
ぴあの欄外に笑い話が載っていたのを覚えていますか?
私はそれ目当てにぴあを買っていました。
切り抜きが今でも保存されてます。
ともさん
ぴあは…都会の情報しか乗っていなかったので、地元の映画館の情報は、街角に貼られていた映画ポスターで把握していました。今は、街角に映画のポスターなんて貼られていませんが、昔は、辻々に貼られていたんですよ。懐かしい。
というわけで、実は、ぴあは都会の情報を入手したい時ぐらいしか見てなかったかな…。
そうそう、ぴあから出ていた“ぴあまっぷ”はオノボリさん必携のグッズでしたね。若い時は、ぴあまっぷ片手に東京に行ったものです。今はスマホの地図があれば、それで十分なんですがてんてん゜