前回は募金の話をしましたが、その時ふと思ったのは“ふるさと納税”の事。これ、納税って言葉を使ってますが、実質は“寄付”であって、募金の隣接領域なんですよね。
“ふるさと納税”の仕組みをザックリ説明すると…
1)任意の自治体に寄付をする。
2)その自治体からお礼の品が届く。
3)寄付した金額は、所得税および住民税から控除される。
…という仕組み。つまり、我々ユーザーサイドとしては、自己負担額(つまり、手数料みたいなもんだね)の2000円は負担するものの、お上に支払う税金の納め先が変わるだけで、納める金額は変化なく、それどころか寄付した先の自治体から、お礼として、かなりの高額な返礼品が送られてくるってわけで、御礼の品の分だけ、得をする仕組みなのです。もちろん、寄付をされた自治体は、収入が増えるわけで、御礼の品を贈ってもプラスになるわけだし…みんな得をしてウィンウィンじゃん…って言われます…が、それって本当なの?
この“ふるさと納税”という仕組みには、看過できない大きな欠点があると思います。それは“ふるさと納税”をする人が住んでいる自治体にとっては、その住民が“ふるさと納税”をすればするほど、減収になるって事なのです。こちらの新聞記事によれば“ふるさと納税”のおかげで、東京都は249億円の赤字、神奈川県は84億円の赤字、愛知県は53億円の赤字です。本来、納められるはずだった税金なのに、シャレにならない金額がこれらの都県では失われているわけです。財源が無くなれば、当然、予定していた事業や住民サービスができなくなるわけです。
「別に東京や神奈川なんて、住民が多くて、税収もウハウハだから、俺一人が“ふるさと納税”をしても大差ないだろ」 いやいや、違うんですよ。
実際、東京都世田谷区では“ふるさと納税”のために税収が15億~16億円ほど減ってしまうそうです。ここは、待機児童数が全国で最も多くて、そのためにあれこれ対策を施さなきゃならないのに、それをするための予算(つまり税収)が足らないという悲鳴すら上がってます。(情報元は朝日新聞なんだけれど、ここの記事は有料会員しか読めないのでリンクが張れません、勘弁ね)。
確かに東京や神奈川は住民が多くて税収も多くて、一見余力がありそうに見えるけれど、住民が多いって事は、住民サービスに多大な費用がかかるって事になります。
実際問題、大半の地方自治体は赤字経営だと言われています。黒字なのは東京都と鎌倉市ぐらいだとか? でも東京都は黒字でも、世田谷は赤字なんでしょ? 鎌倉は黒字でも神奈川県は赤字なんでしょ? よく分からないけれど、あっちこっちの自治体は、程度の差こそあれ、決して裕福ではないのです。
だから“ふるさと納税”をしてもらう事は、とてもうれしい事だし、高価な返礼品を贈ってでも寄付を募りたいわけだけれど“ふるさと納税”をされちゃう側は、たまったモンじゃないのです。
“ふるさと納税”の盲点は2つあります。一つは『寄付金が控除されるために、本来納められる税収が減ってしまう事』、もう一つは『寄付先が自由に選択できる事』です。この2つの盲点のうち、少なくとも一つぐらいは是正しないと、ほんと、大変な事になってしまうと思ってます。
例えば“ふるさと納税”は寄付なんだし、豪華な返礼品だってもらえるんだから、地元自治体への税金控除を止めてしまえばいいと思うのです。地元へは、住民として、きちんと決まった額の税金を納め、その上で、応援したい自治体があれば、そこへ寄付をする。寄付をされた自治体は、感謝の気持ちとして返礼品を贈る。これでいいじゃん。
あるいは“ふるさと納税”の寄付先を、本来の趣旨に基づき、その人の“ふるさと”への寄付に限定して、税金を控除できるシステムにしてしまう。その際の“ふるさと”の定義は『かつて住民票を置いていた自治体』って事にしちゃえば良し。つまり“故郷への仕送り”ってわけだ。これなら、本当の意味での“故郷への寄付”になるわけだから、返礼品なんて不要でしょ? 自分を育ててくれた自治体への感謝として寄付をするんだから、お礼なんて求めちゃダメでしょ?
私は、今、私が住んでいる自治体が赤字も赤字、大赤字で、企業ならとっくに倒産状態だって事を知っていますので、とてもとても“ふるさと納税”なんてできません。私の微々たる税金であっても、地元のために使ってもらいたいです。もちろん、私も人の子ですから、ふるさと納税をして、美味しい地方特産品を返礼品としてもらいたいという欲はあります。でも、そんな欲よりも、地元の財政危機の方が大きな問題でしょ? 私欲を捨て、公のために役立ちたい…そんな単純な事を考えていますので、私は“ふるさと納税”はしないのです。
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