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老人声の特徴

 子どもには子どもらしい声があり、青年には青年らしい声があり、オトナにはオトナの声があって、老人にはいかにも老人を感じさせる声があります。これは事実です。気もココロも肉体も若いつもりでいる私ですが、年齢だけを考えると、老人の入り口に立っているというか、すでに老人予備軍というか、新人の老人であるというか、自覚のない老人というか、つまり「老人に関する諸問題が他人事ではない私」なんです。

 なので、やがて私もなるであろう『老人声』について、アレコレ考えてみました。

 まず、都市伝説かもしれませんが、よく言われる事に「年を取ると、女性は声が低くなり、男性は高くなる」というのがあります。これは性ホルモンの分泌が若い時よりも減少し、性ホルモンがカラダに与える影響が少なくなってきて、カラダが中性的になってくるからだと言う人もいます。ほんとかな? でも確かに、人間、本格的に老人になってしまうと、外見からでは、オジイチャンなのかオバアチャンなのか、区別がつきづらくなる人が大量にいるわけで、老人の中性化ってのは、まんざらの嘘でもないような気がします。

 それに市民合唱団にいるオジイチャンオバアチャンたちに話を聞くと「若い時はバリトンだったけれど、年を取ってテノールになった」という人や「若い時はソプラノだったけれど、今じゃすっかりアルトよ」という人、たくさんいますしね。

 なので「年を取ると、女性は声が低くなり、男性は高くなる」というのは、性ホルモンだけの影響とは限りませんが、あながち間違いではないのかもしれません。

 年を取ると男性は声が高くなる…と聞くと、私のような高音に苦労しているテノールは「年を取ると高音が楽になるなら、待ち遠しいなあ」と思いがちですが、それは期待しすぎみたいです。いやいや、実際、年を取ると、男性の場合、音域は高い方向に移動するようですが、音域が変わると同時に音色も変わるんですよ。ざっくり言えば“ジジイ声”になるわけです。テノールってのは、実年齢はさておき“若者声”で歌うものです。つまり“声の若作り”というか“声の童顔”がテノールなんです。だから、音域が高い人がテノールなのではなく、声が若々しい(ので音域も高めな)人がテノールなんです。なので、いくら声が高めだから言っても、音色が年寄りになってしまっては、そりゃあテノールじゃないよねって話なんです。

 まあ、合唱では、歌手の一人ひとりの音色なんて、どーでもいいので、ジジイ声になったからと言って、そんなに悩む必要はないのですが、ソロ歌手にとっては、大きな問題です。歌曲はともかく、オペラアリアの中には、若者の声を前提にして作曲されているモノがいくつかあるわけで、それらのアリアを人前で歌うのを諦める必要(あるいは、気にせず歌う厚顔さ)が生じてくるからです。

 老人声の音色的な特徴と言うと…声に色艶がなくなってきて、全体的にパサパサな乾いた音色になります。声の響きが浅く薄くなってくる…とも言えます。そう言えば、いくら頑張っても私の声に深みが加わらないのは、すでに老人声になっているからかもしれませんね(涙)。

 歌いまわし的な事を言うと、早口が苦手になるようです。まあ、私などはすでに早口苦手だし、ろれつが回らなくなって来ていますので、すでに老人声になりつつあるんでしょうね。声量も乏しくなってくるようです。また、女性の場合は、いわゆる“ちりめんビブラート”が目立つようになってきます。

 市民合唱団の方々を見ていると、若い時から継続的に歌ってきた人は、声の若さをキープしている人も多く、案外声が衰えないようです。逆に、年齢が行ってから歌い始めた人は、衰えが早い…と言うか、上手になりづらく、少し間を置くと、元の初心者レベルに戻ってしまうようです。かっこ良く言えば「永遠の初心者」になるわけですが…本人が楽しいなら、別にそれはそれでいいんじゃないかって思います。

 声の若さは、案外、見かけの若さと通じるみたいで、外見がしっかりしている人は、しっかりした声で歌い、よぼよぼしている人はそれなりの声でしか歌えないようです。なので、老人の場合、外見を見れば、どれくらい歌えるのか、ほぼ察しがつきます。まあ、元気な人は、声まで元気って事です。

 声の話から、少し離れてしまうけれど、年を取ると、聴覚が衰えるわけですが、補聴器を使用していても、歌える人は、耳のハンデを感じさせないほどに、しっかり歌えます。ですから、補聴器を使用するようになったからと言って、歌をあきらめる必要はなさそうです。しかし、補聴器ってヤツは、耳から外れると、ピーーとハウるので、そこが厄介かな? 逆に言うと、ハウるほどに大きく拡声している人でも歌えるってわけですね。

 年を取るのは、ある意味、そこまで元気でいられたわけだから、めでたいことです。めでたいついでに、歌まで楽しめるなら、声が老人声になろうが、悔やむことはなく、元気に老人声で歌ってやればいいんじゃないかって思います。

 それは声だけでなく、ハゲもデブも入れ歯も同じ事です。年寄りになれば、ハゲたり、デブったり、入れ歯になったりするわけだけれど、その時その時の自分を愛して受け入れていけば、人生、大いに楽しめるんじゃないかと、老人の中ではまだまだ若造で生意気な私ですが、ホントのホントにそう思ったわけです。

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コメント

  1. アデーレ より:

    恐怖ですね、声の老化!若くから正しい発声でも.60くらいから引退する歌手いますもんね。ナタリーデセイなんか50で引退しました。ナタリーデセイは出番が多すぎるし、なんたってコロのひとだから高音はやはり声帯に負担がかかっていたと思うし、でなくとも声って目減りするのかもしれないから仕方なかったのかも。しかし、私も似たような年だから声を無駄に歌うのはそろそろ控えたい。第九とかにでてコーラスしてる場合ではないと思う今日この頃。やっぱりソロがいいですなぁー。これからは喉を労ろう!やっぱソロの本番を増やし、無駄に歌わない。老化してソプラノからアルトとか絶対に嫌だわ。

  2. すとん より:

    アデーレさん

     デセイの場合は、老化以前に、元々発声に無理があった人ですから、引退が早かったんですよ。なにしろ、3回も声帯を切ってますからね。まあ、3回切ってもトップ歌手だったんだから、スゴイといえばスゴイ人です。

     ただ、一般的に高音歌手ほど、声の消耗は激しく、老化も早いとは言われています。ですから、声を大切にし、自分の声種に合わない曲はなるべく避けて、声の健康管理をして、年をとっても歌い続けていきたいものです。

     まあ、私は、老人声になっても、あつかましく歌い続けていこうと思ってます。やっぱり、歌えなくなったら悲しいものね。

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