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夢は「自分のホールでの演奏を、生で客席から聞くこと」

 フルートのレッスンに行ってきました。今週も遅刻…と書くだけ野暮ですね。ほんと、最近はレッスンを遅刻する事が多くなってきたので、全然姉様と会えません。会うのが楽しみ…ってわけではない(失礼)のですが、でも会えないのは、ちょっと寂しいです。

 で、私が遅刻して教室に入ると、先生は読書中でした。先生が読書している時は、自分のフルートの練習を終え、コーヒーも飲み終えて、いよいよ時間が余りました…って時に本をお読みになるので、読書している先生を見かけたら…かなり待たせてしまった事になります。も、申し訳ない(汗)。

 私が入室して、フルートを組み立てている間ももどかしいようで、さっさと基準音を吹いて、ロングトーンの練習です。今日は“だいたい合っているけれど、紙一枚分の違和感がある”って感じのハモリになりました。許容範囲と言えばそうかもしれないけれど、ビシっと合う時は合うので、なんかちょっと残念でした。

 宿題になっていた、アルテ15課9章dis-mollの8番「dis-mollのスケールとアルペジオ」は合格です。しかし、ダブルシャープっての? ドなのに指はレってのは、やっぱり慣れないね。全くもぉ~。

 次回までの宿題は、いよいよ最後の章、10章になります。ふふ、終わりが見えてきたぜぃ! 15課10章はGes-durから始まります。「Ges-durのロングトーン」と1番「音階準備練習」です。Ges-durは9章でやったFis-durと指は全く同じです。だから、目をつぶってやれば出来なくはないのですが、ここで肝心なのは、しっかり楽譜を見つめながら吹く事なんだそうです。ソbの時に、頭はしっかり“ソ”と認識しつつも、指はしっかり“Fis”を吹く…という練習をするわけです。ううむ、なんかややこしいです。出来るかな?

 さて、ガリボルディは、今回から、プチ・エチュードです。

 「何番ですか?」

 「1番です」

 「何調ですか?」

 「ハ長調です」

 「では、スケールとアルベジオを吹きなさい」と突然言われました? え? “スケールとアルベジオ”?

 「アルテでやっている奴と同じリズムでどうぞ」と言われて合点です。ああ、例のやつね。

 まあ、ハ長調ですから、何の迷いもなくやれました(良かった!)。どうやら、プチ・エチュードの時は、これから毎回、スケールとアルベジオを儀式的にやるようになるのかな?

 とにかく、プチ・エチュードの1番です。さっそく吹き始めて、色々とダメ出しがありました。

 まず「スラーの最後の音はディミニュエンドにして、消えるように音を抜いて吹く」を注意されました。ああ、以前からよく注意されているアレですね(涙)。

 二番目に「中音のレ-ド#-レというフレーズの時は、ド#は正規運指ではなく、替え指を使いなさい」と言われました。で、どういう替え指かと言うと“中音レの運指から、右手はそのままに、左手だけを全解放する”という替え指。

 なぜ、この替え指を使うのかと言うと、1)正規の運指よりも楽器が安定して吹きやすい。2)音色的にこちらの替え指の方が、この場合は良い。…の二つの理由からなんだそうです。

 とくに2)の理由が大切なんだそうです。ド#と言うのは、フルートのホールを全解放して出す音で、いわば、弦楽器の解放弦みたいなもので、音色的に虚ろで薄っぺらいわけです。おまけに音程的にややうわずる傾向がある音なので、替え指を使うことで、音色に実が入る事と、音程的にやや低くなるので、バカっぽい音になりづらいという理由があるそうです。

 ただし、この替え指は、あくまでも“レ-ド#-レ”の時だけの使用に留めないといけないそうです。

 三番目に「強拍と弱拍を吹き分けなさい」とも言われました。つまり“ビートを感じて吹け!”って事ですね。裏拍の音は、それがたとえ高音であっても、やさしく吹かないといけないのです。

 四番目に「息はまっすぐに吹くこと。息の強弱で音のアクセントをつけてはいけない。音のアクセントは、あくまでもタンギングでつける事」と言われました。そして「タンギングは美しく。乱暴なタンギングなんてダメです」とも言われました(グサっ!)

 五番目に「スタッカートは、もっと弾むように吹くこと」とも言われました。滑らかなスラーに対して、弾むスタッカートなんだそうです。

 ああ、難しい。プチになってから、注文が急に増えたような気がする…。でも頑張るよ、私。

 さて、雑談。先生には夢と言うか、ぜひやってみたい事があるんだそうです。それは「自分のホールでの演奏を、生で客席から聞くこと」なんだそうです。

 つまり、録音などではなく、自分の生演奏を聞いてみたいんだそうです。それもホールで演奏しているのを、客席にいながら聞きたいんだそうです。

 …無理ですね(笑)。でも、気持ちは分かります。録音じゃ不満足なんでしょうね。

 「録音なんてしたら、誰の音でもみんな一緒になっちゃうでしょ? おまけに最近の録音はエンジニアが演奏の傷やクセを修正するから、録音だけ聞いていると、誰の演奏だか分からなくなっているでしょ」なんだそうです。

 確かに録音で慣れ親しんだ奏者のライブを聞きに行くと、ライブの音はCDの音とはまるっきり違うなんて…日常茶飯事ですね。私のようなアマチュアですら、ライブとCDの音の違いが分かるんですから、プロ音楽家の先生の耳なら、丸分かりなわけなんです。だから、先生はあまり録音というものを信用していないのだそうです。

 「若い時は、たくさん録音したけれど、どれもこれも録音されちゃうと、自分じゃないようなするんだよね。自分らしさがちっとも録音されないんだ。それはきっと、音楽ってやつが“一過性の芸術”だからなんだろうと思う。一過性のモノをむりやり保存しようとしても、それは無理というものなんだろうね」と深い話をされてました。だから、今では頼まれても録音はしたくないのだそうです。

 演奏者と観客の…一期一会…を大切にしたいんだそうです。

 だから、先生の夢は「自分のホールでの演奏を、生で客席から聞くこと」なんです。見果てぬ夢ですが、それを望む先生のお気持ち、なんか分かるような気がします。

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コメント

  1. operazanokaijinnokaijin より:

    すとん様、毎々、楽しいエッセイ、ありがとうございます。
    サザン、LINE、オリンピック、オペラ団、後輩指導、
    などなどのエッセイ、楽しませていただいています。

    本日の、生演奏と録音、これまた興味深いですね。
    ピアノ演奏は、楽器と奏者がかなり分離していて、
    一方、歌は、奏者ならぬ唱者の体そのものが楽器。

    ピアノ演奏は、自分の生演奏をかなり客観的に聞けるような気もしますが
    (それでも、観客席での聞こえ方とは、だいぶ、違いましょう。)
    歌は、自分の生歌唱を客観的に聞くことは、全く不可能。

    フルートはその中間かしら?
    自分の生演奏を客観的に聞くことはかなり困難で、
    ましてや、観客席での聞こえ方とは、全く違っちゃいそうですね。

    ピアノのグレン・グールドは、ある時期から生演奏をやめちゃって、
    録音に全力を注ぐようになりましたね。

    カラヤンが録音の重要性に気づき、クラシック音楽に革命をもたらし、
    クラシック音楽を普及させた功績は大ですが、
    彼の録音風景、あるいは、録画風景を、今、ドキュメンタリーで見ると、
    うーん、カラヤンも、罪な奴よのう、などと感じてしまいます。

    と、とりとめのないコメントで、失礼しましたあ。

  2. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     フルートの場合、とりわけホール演奏の場合は、ホールそのものがピアノにおけるボディの役割を果たしてくれると思います。つまり、客席ならば、ホールの響きが付加された音で聞けるけれど、ステージ上ではフルートから出てくる生音を聞いているわけで、それはかなり違う音だと思います。なので、H先生のお気持ちは、よくよく分かります。

     そりゃあ聞きたいでしょうね、ご自分のホール演奏。

     グールドもカラヤンも、ちょうど録音がモノラルからステレオに変わる移行期に録音に目覚めた(?)人でしょ。もう、今の私たちには理解できないけれど、モノラル録音からステレオ録音に変わった時に、おそらく、その大きな違いに、無限の可能性を感じられたのだと思います。さらに言えば、あの頃は、録音された音の編集はもちろん、エフェクトを加えることも出来る様になった時代だから、ある意味、生演奏ではできない事でも録音なら出来る…ようになった時代だと思います。

     それこそ、ビートルズがある時から、ライブを止めて、録音スタジオに籠もる様になったのと、同じような理由じゃないかしら?

     それも時代の流れです。

     今の時代は、むしろ逆で、ライブコンサートのチケットはバカ売れだけれど、CDはちっとも売れない、なんてミュージシャンがゴロゴロしているそうです。若い人たちは、録音よりも生演奏の方を好む…って事なんでしょうね。

  3. 河童 より:

    カラヤンは録音でいろいろな逸話を残されていますが、
    ある交響曲を録音して、気に入らない音色の1音だけ再録音して編集させた・・・とか
    録音時間の調整のため、演奏時間を秒単位の精度で調整する指揮ができた・・・などなど

  4. tetsu より:

    > 「自分のホールでの演奏を、生で客席から聞くこと」

    これ、よくわかります。こちらもリサイタル開いたことはありませんが、同じようなことを考えていました。フルートは他の木管楽器のようなリードがなくて、管楽器の中では一番声楽に近い、と勝手におもっています。ホールで他の人の演奏聴くと、まさにその人の音と音楽なんですね。

  5. すとん より:

    河童さん

     私はバーンスタインの逸話を聞いてます。彼は晩年、ライブ録音が多いのですが、あの“ライブ”と言うのは、通常のコンサートを録音したライブではなく、録音セッションに客を入れて行った演奏って意味なんだそうです。もちろん、録音セッションですから、一発取りではなく、差し替えのため、部分的な演奏なども合わせて行って、それらを組み合わせて、販売用音源を作成していたそうです。

     ま、それが悪いことだとは、私、ちっとも思いませんが、誤解をしやすい表現だなって思いました。

  6. すとん より:

    tetsuさん

     カラダが二つあれば…とか、カラダと意識を分離できれば…とか、そんな事が出来ない限り無理ですよね。

     私は自分のナマ歌をぜひ聞いてみたいです…たぶん、酷いんだろうなあ(涙)。

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