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カラスのヒナが、巣から落ちた!

 …んですよ。全くもう…、先週の話ですが。

 休日出勤って奴をして、ウダウダと仕事をこなして「さあ、帰る時間だ!」と思って、腰を上げた途端に、第一報が入ってきました。

 「カラスが生徒を襲撃しています!」

 すぐさま、怪我人の有無を確認して、取るものもとりあえず現場に急行しました。

 現場はグラウンドの端近く。木がたくさん生えていて、ちょっとした林状態になっている箇所。確かにカラスが2羽います。我々から少し離れたところから、人間様の事を明らかに威嚇して、激しい声でカーカー鳴いてます。もうそれだけで、女性陣たちは腰がひけてビビってます。確かにカラスの真剣な威嚇は迫力あります。

 それらの威嚇にめげずに、なぜカラスが人間を威嚇しているのか、理由を探ろうとさらに近づくと、なにやら上からカツカツと音がしてます。カラスがクチバシをそこらにぶつけて音をたてています。まるで人間が、コブシを叩くかのように「脅して分からなけりゃ、カラダで分からせてやる!」とでも言いたげです。

 いくら脅されても、なぜカラスたちが人間を威嚇しているのか、その原因が分からないと、こちらも対応できませんから、ちょっとだけ(笑)ビビりながらも、さらに近づくと…カラスが私に向かって飛んできます。慌てずに、飛んでくるカラスに目を合わせると、カラスが私の頭上をスーと通りすぎました。通りすぎましたが、実は、かなり近くまで接近してきました。どれくらいの距離かと言うと…こっちの手が届かないギリギリのところを飛んでました。だいたい1mぐらい上空でしょうか? 手は確かに届かないけれど、かなりの至近距離です。それでも態度を変えずに堂々と現場に踏み込んで行った私です。カラスは果敢に、何度も私に向かって襲う真似をしてきます。その度ににらみかえしてやります。もう、ハートはドキドキですが、こっちがビビっている事をカラスに気取られないように「来るなら、来い!」という態度をとりました。

 さらに奥に進むと……なぜか地面に九官鳥がいました。 はあ?って感じです。なぜ、ここに、九官鳥が?

 そして私が、その九官鳥に近づけば近づくほど、カラスの威嚇行動が激しくなってきました。今はまだカラスも威嚇だけで、直接的な打撃攻撃などはしてきませんが、とりあえず、カラスが九官鳥を守っている事は分かりましたので、これ以上近づくと、さすがに一線を越えそうな雰囲気もするので、その場を引き上げる事にしました。

 引き上げて、ざっくりネットをググったところ、九官鳥に見えた鳥は、どうやらカラスのヒナのようです。カラスのヒナが巣から落ちて、まだロクに飛べないので、そこらにいる…とまあ、そんな感じです。で、地面にいるヒナを心配して、親鳥がそれを見守っているわけで、そこに人間が近づいてきたものだから、人間を威嚇している…とまあ、そんな事らしいという事が分かりました。

 しかし、場所が悪い。ヒナが歩いてるのは、生徒たちの自転車置き場。休日の部活を終えて、生徒たちが帰宅しようとして、自転車置き場に自転車を取りに行くと…カラスに威嚇されますね。場合によっては攻撃を受けるかも。

 このままでは、誰も自転車置き場に近づけません。

 とりあえず、この場をどうにか収めないといけません。私だけじゃ、うまく対応できません。助けを求めないと…。

 そこで思いついたのが、市役所。野良犬の徘徊とか、スズメバチの巣とか、その手の危険なモノに対する対応は、市役所の仕事じゃなかったかな?と思ったので、さっそく市役所に電話をしてみました。

 で、電話で…カラスに困ってます…と相談したら「今日は休日で、警備の者しかいないので対応できません。週が明けたら、またご連絡ください」だってサ。今、困っているんだけどねえ。

 市役所に断られたので、う~んと考えて、市民が困っている時に助けてくれるのは…お巡りさんかな? という事で、警察に電話してみました。

 で、電話で…カラスに困ってます…と相談したら「カラスが相手ではねえ…。野生の動物は警察では相手できないんですよ」だってサ。ま、確かにカラスが人間を威嚇しても犯罪じゃないしね。

 市役所や警察には助けてもらえないと分かり、仕方がないので、巣から落ちたヒナを守ろうとする親カラスへの対応をネットであれこれ調べてみました。どれもこれも「手の打ちようはありません」「あきらめてください」「近づかない事が一番」とか、そんな答えしかヒットしません。

 そんなわけには、いかなねーんだよー。生徒が自転車で帰れる様にしないといけないじゃないか!

 次に思いついたのが、消防です。レスキューの人なら、助けてくれるかもしれません。溺れるものはワラをも掴むです。とりあえず、電話をかけてみることにしました。

 で、電話で…カラスに困ってます…と相談したら「分かりました。では、検討させてください」という返事をいただきました。おお、市役所や警察とは反応が違う。もしかしたら助けてくれるかもしれない。

 しばらく待ちました。助けてくれるかもしれない。もしも、消防にも断られたら、次は陸上自衛隊に電話をするかな…と決心した時「では、そちらにうかがいます」という返事をいただきました。やったー!

 真っ赤な消防車に乗って、消防のレスキューの人たちがやってきました。

 で「カラスが駐輪場にいて困ってます」と言うと「カラスを駆除する事はできません」と来ました。なんでも、下手にヒナを駆除してしまうと、それをカラスが恨みに思って、生徒たちを襲う様になるかもしれないと言うのです。それは確かにヤバイです。

 じゃあどうするのかと…消防さんが取った方法は、

 1)人海戦術で大勢の人間(生徒たち)を使って、自転車置き場にある自転車を一時的に別の場所に移す。こちらが少人数だとカラスが襲ってくるかもしれないけれど、こちらが大勢だと、カラスは近寄ってこないはずなので、人数にモノを言わせて、まずは現場から自転車を退かしてしまいます。

 2)何もなくなって、カラスのヒナしかいなくなった駐輪場にバリケードを設置して、人が近寄れなくします。まあ、一種の鳥獣保護区を作るわけです。

 3)そのまま放置。夜の間に、ヒナがネコやヘビにでも襲われてくれれば、親鳥も諦めるはずなので、それを待ちましょう。

 …という方法です。とりあえず、その方法で週をまたいだわけです。

 翌週の月曜日、私は誰よりも早く出勤して、現場を確認しました。とりあえず“鳥獣保護区”にはカラスはいません。良かった良かったと思って、バリケードを撤去したところ、カラスのヒナはグラウンドの全然別のところにいました。

 アチャーです。

 どうやら、ネコにもヘビにも襲われず、無事に週末を過ごした様です。

 とりあえず、親鳥が激しく威嚇するので、カラスのいる方のグラウンドは、使用禁止にしました。まったくもう…。

 カラスのヒナも多少は成長したようで、少しは…と言っても、ジャンプに毛が生えた程度に飛べる様になったようで、それで多少は移動できる様になったみたいです。で、グラウンドのあっちこっちを移動するんですよ。その度に親鳥も移動するので、こちらもカラスの移動に合わせて、警戒区域をアレコレと移動しているうちに、その日の午後には、カラスがやっと余所に行ってくれました。やったね。まあ、平日の学校ってのは、人がたくさんいて、居心地が悪かったんだろうね。

 そうやって、週の中日を過ごしていたら、金曜日の放課後になって、またカラスのヒナがやってきました。まるでこれから人気が少なくなることを知ってか知らずか、例の駐輪場にやってきました。で、親鳥は我々を威嚇してます。でも、まだまだ自転車はあるんだよねえ…。これじゃあ、一週間前の再現です。

 今さら市役所や消防や、ましてや陸上自衛隊の世話にはなれません。どうしたものかと思い、とりあえず、武装してみました。武装と言ってもヘルメットをかぶり、手には3m程度の長い棒を持ってみました。カラスとの直接対決も覚悟の上です。

 カラスのヒナに近づいていくと、親鳥が威嚇を始めます。なので「こっちも武器を持っているんだぞ、やるなら、やったるぞ!」と、こっちも威嚇します。カラスもカーカー激しく鳴きますが、こちらに近づいてきません。クチバシをカツカツ鳴らしますが、こちらに近づいてきません。もっとも、こちらも『先週のように飛んできて至近距離まで近づいたら、棒でたたき落としてやる!』というオーラを全開にしてます。私と親鳥でバチバチの威嚇合戦(と言っても、私は物静かにオーラ攻撃ですが…)をしながらも、私は少しずつヒナに近づきます。で、ヒナを見つけたので、にらみつけてやったら、急にヒナが飛び立って、スーと現場から離れていきました。あわてて、親鳥はヒナのあとを追いかけます。

 ふふ、とりあえず、こっちの勝ちだな。まだまだ眼力じゃあ、カラスには負けないぜ!
 という、一週間を過ごした私でした。

 今週は、金魚ネタでなく、カラスネタでごめん。おまけに、話もうまくまとまってません。ははは。でも、カラスの事、書きたかったんだよ。勘弁してください。

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コメント

  1. CuniCo より:

    すとんさん、ご無沙汰です\(^o^)/
    毎日、読んでます。

    いやぁ~カラス。
    私もヒナ絡みで襲われたことあります(-_-;)
    かなり怖かった・・・

    西新宿の高層ビルに勤務していた頃・・・
    その建物の植え込みに、小さなカラス。
    九官鳥ではなかったな(笑)
    既にカラスと認知できるカラス。
    つぶらな瞳、その可愛さに近づくと・・・
    上空から、突然・・・頭をかすめて・・・その距離10cm!!
    全てを悟りました・・・あ~~お母さんが守ってるんだ。。。
    二度目の攻撃から逃れるように、建物の中へ駆け込みました。

    いやぁ~~~久しぶりに思い出しました。あの、恐怖(^^ゞ

    それにしても、陸自に要請したら、どんな反応だったか・・・
    そこが気になりますねぇ・・・

    1週間の真剣勝負、お疲れ様でした(^.^)

  2. operazanokaijinnokaijin より:

    新聞、雑誌、単行本、などなどで、
    今までに大量のエッセイを読みましたが、
    今回の、すとん様の、からす事件、
    いやあ、人生で最高のエッセイです。

    すとん様、最高。
    ヽ(^。^)ノ\(^_^ )( ^_^)/ (^^)/▽☆▽\(^^)
    ヾ(=^▽^=)ノヽ(´▽`)/(^_^)(^^♪(((^-^)))

  3. すとん より:

    CuniCoさん

     いやあ、カラスは怖いですよ。あちらも我が子を守っているわけですから、そりゃあ必死だしね。

     私は幸いにも、外見が恐ろしげで、人にも動物にも怖がられるような強面のオッサンなので、記事の通りで済みましたが、普通に優しげな女性だと、完全にカラスにナメられて、やられているでしょうね。

    >上空から、突然・・・頭をかすめて・・・その距離10cm!!

     カラスからのドギツイ警告でしたね。怪我がなくて良かったです。

     カラスの攻撃は、頭上でホバリングをしながら、頭部や顔面を何度も執拗にクチバシで突っ付いてきます。手で払おうとすると、上に逃げて、スキを見ては何度も突っ付いてきます。ってか、カラスは結構しつこいです。たいていは、流血騒ぎになります。

     なぜ知っているのかと言うと、何度かそういう場面を見ているからです(人生長く生きていると、色々な場面に遭遇しているわけです)。

     カラスは人間を識別しますから、一度そういう関係になったら、ずっと攻撃対象になってしまいます。なので、私も対カラスでは慎重にならざるをえなかったわけです。

     一般論で言いますと、カラスは素手の人間よりも強いと思った方がいいですし、カラスに対しては、手出しをしない、関わりを持たないのが、一番だと思います。私のようなマネはしちゃダメです(笑)。

  4. すとん より:

    operazanokaijinnokaijinさん

     いやあ、喜んでいただけて、ありがとう。…ってか、別に受け狙いでやったのではなく、本当に大変なカラスとの対決でした。

     こっちはカラスのヒナをいじめる気などサラサラないわけで、カラスの親鳥さえ、静かにしてくれたら、何も事は起こらないのですが、なまじカラスが我々を威嚇するから、事が大きくなるわけです。こっちからすれば、いい迷惑です。

     ほんと、世の中って、ままならぬわけです。それにしても、疲れた~。

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