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また、合唱始めました。今度はメサイアです。

 あまり合唱曲に興味のない私ですが、それでも一応、レパートリーに入れておけば、人生色々と楽しいだろうなあと思う曲はあります。そのひとつは「ベートーヴェンの第九」でして、4~5年おきに歌うことで、なんとかレパートリー化を果たしております。実はもう一曲レパートリーに加えたい曲があるのですが、なかなかそれを実現するチャンスがなくて困っていました。

 その曲とは「ヘンデル作曲のメサイア」です。メサイアが歌えると、人生、楽しいですよ。この曲は、結構、あっちこっちで歌うチャンスがあるのですが、第九と違って、どこも「すでに舞台で歌った経験がある事」が参加条件のところがほとんどで、新たにメサイアを勉強して…というチャンスが、なかなかありませんでした。なので、メサイアを歌えるチャンスは数多くあれど、まだ実際に一度も歌った事のない私は、それらのチャンスをモノにできずに、歯がゆく思っていました。“とにかく、どこかで、メサイアを歌った…という実績をモノにせねば…”と、常日頃から思っておりました。

 そんなところに、メサイア未経験者OKの「メサイア団体(笑)」の存在を知りました。その合唱団は、基本的に団員募集というのはしていなく、団員の紹介があって始めて練習に参加できるという、割とよくあるクローズな団でした。そこに妻の友人が所属してまして「よかったら紹介するけど…」という有難いお言葉がありましたので(直接誘われたのは妻だけですが便乗して私も)参加する事にしました。

 いや~、メサイアをちゃんと練習して、レパートリーにしたかったので、これはまさに千載一遇のチャンスって奴ですよ。

 さっそくキング先生に「また合唱を始めます。今度はメサイアです」と事前報告したら、苦笑いをしていました。「メサイア…ですか?」って感じですね。

 そりゃあ、自分でも分かってますよ。すでに私の声が「メサイア」向けではない事ぐらい。いや、それどころか、合唱向けではない事も。でも、メサイア歌いたいのです。

 こんな私ですが、キング先生の元で勉強を重ねて、色々と変わりましたし、分かってきた事もあります。だから、今回の合唱団でも「メサイアを勉強する」というのが第一の参加目的であって「力一杯歌ってくる」とか「合唱を満喫しよう」とか言うつもりは、毛頭ありません。

 だいたい、私が力一杯歌ったら、一人で合唱団全体を凌駕するくらいの声はたやすく出ちゃいます。一応、これでもソリスト(笑)ですから。でも、それじゃあ、合唱壊しちゃうでしょ。そうやって、合唱を壊さないように、声をセーブして歌い続ければ、当然、合唱を満喫する事はできません。だから、その手の楽しみは、最初に諦めちゃいました。

 本当に今回は「メサイアの勉強」に徹するつもりなんです。

 そういう事を先生に言ったら「すとんさんの声は、どんなに小さく歌っても、響くからなあ(そういう点では合唱には向かないんだよなあ…)」というのが先生の危惧です。どうしても歌うなら「声は軽く、ポジションは常に高く、声ではなく鼻腔の響きで歌ってくる事」という条件が付きました。ほぉ、それは、なお良いですね。メサイアの勉強をしながら、発声の練習もしてくる。一石二鳥じゃないですか。さあ、ガンバロ~。

 と先生の許可(?)もいただいたところで、当日になったので、さっそく合唱団に行きました。とりあえず、初回は見学という名の体験練習です。

 場所は山の上にある某学園の講堂。実はこの合唱団、その学校の関係者とその友人知人のための合唱団なんです(だからクローズなんですね)。学校側が団に対して、かなりの補助を出しているようで、参加費がべらぼうに安いのが特徴です。

 パートリーダーの方に、ごくごく簡単に説明を受けました。練習は月2回、1回3時間程度。9月中旬に大きな劇場で1時間程度のメサイア抜粋(いわゆる“本番”ね)を歌い、12月中旬にはホームグランドでメサイア(全曲ではないけれど、有名曲はほぼ全部)を歌う予定なんだそうです。そりゃあ、結構駆け足だね。同時にブルックナーの作品も練習するそうだけれど、私はメサイアだけに参加するので、ブルックナーの方はパスです。

 使用する楽譜は全音版ですが、この楽譜、今はもう絶版なんだそうです。私はたまたまこの楽譜を持っていたのでよかったのですが、妻は全音版ではなく、ノベロ版しか持っていなかったので、団が所有する在庫の楽譜を購入する事にしました。全音版の楽譜って、その中身は、ベーレンライター社のものと同じなので、全音版ではなく、ベーレンライター版の方もチラホラいますが、それ以外の楽譜を使っている方も結構いました。案外、その辺はアバウトみたいです(楽譜の版が違うと、音が違ったりするんだけれどね)。

 そうこうしているうちに、指導の先生が現れて、さっそく練習が始まりました。最初はまず、たっぷりと体操です。歌う前の体操って、どこの合唱団でも念入りにやりますが、それぞれで大切にする事が違うので、おもしろいですね。この団は、肩甲骨周辺をほぐす事と、腹筋を意識する事を重点においた体操でした。

 体操が終わる頃には、遅刻してきたメンバーも到着し、どうやら本日のフルメンバーが揃ったようです。市民混声合唱団の常で、男女比は、3:7くらいでしょうか。ギリギリ、混声として成り立つ比率ですね。バスとテノールはほぼ半々。ソプラノとアルトもほぼ半々って感じです。年齢構成は、女声は「中高生の母(つまり私と同世代)」と「その母の母」って感じです。男声は…みな筋金入りの年金世代でした。いやあ、私の存在って、すごく違和感アリアリでした(汗)。

 声聞きとかオーディションとか、その手のものは一切なく、パートは自己申告制のようなので、躊躇せず、私はテノールに行きました。ちなみに、今回は、私を含めて、テノールに新入りさんが4名加わりました。

 今回が、今年のメサイアの練習の第一回目だそうで、いきなり、4番「And the glory of the Lord」(番号はベーレンライター版に準拠)を合わせました。

 この曲は、大昔に音を取った事があるので、私もだいたい歌えます。歌えると言っても、今回は、音程重視で、声はなるべく出さず、合唱団の陰に隠れて目立たないように歌ってみました。

 なので、大半のところでは、小さくなっていましたが、曲の音程が高くなってくると、周りの人たちがボロボロと落ちていきます(驚)ので、私ともうお一人しか歌っていない箇所もあり、ちょっとビックリしちゃいました。私はそんな時でも、その歌える方の陰に隠れていようと頑張ったのですが…さすがにそのあたりになると、隠れきれずに、遠くのソプラノ席にいた妻の耳にも、私の声が聞こえたそうです。ああ、もっともっと、小さな声で目立たないように歌わないと…

 ま、そういうわけで、たまに声が聞こえてしまいましたが、それでもなるべく目立たないよう歌えたのではないかと思います(頑張ったんだね、私)。とにかく、小さな声で、音程重視で、ポジションを高めにして、軽く軽く声を出していきました。そんな声って、いかにもバロックっぽい声だなあって思いました(メサイアって、一応、パロック音楽ですからね)。歌いながら「こりゃあ、結構いい練習になるなあ…」となぜかワクワクしちゃいました。とにかく、普段のソリスト声は封印できた…んじゃないかな?

 休憩です。休憩だから言って、誰かと話をするでもなく、孤独を満喫しました。女声は和気あいあいなようですが、男声は基本バラバラで人間関係もサバサバしているみたいです。

 休憩後は、11番の「For unto us a Christ born」でした。この曲も音取りをした事があるので、歌うのは大丈夫なんですが、それでもやっぱり、この手の曲は苦手かな。とにかく、本当の本当に、軽くリズミカルに歌わないとダメでしょ。メリスマだってあるし、ポジションは高め高めです。発声のための良い練習曲だ!と思って、歌いました。

 そろそろ終わりかなって思った頃に、19番の「Behold the Lamb of God」に入りました。うへ! この曲は知っていますが、音を取った事ありません。仕方がないので、初見で、少し周りの様子を見ながら、ビクビクしながら歌いました。とにかく、目立っちゃダメだし、音をはずしちゃいけませんからね。

 この曲は音を取った事がなくて、初見で苦労して歌っているのに、リズムの読み替えをする曲なのだそうです。これは指導者さん(本番の指揮者さんでもあります)の好みなんですが、表記されているリズムよりも、リズムをより鋭く演奏する事になりました。まあ、いわゆるバロック仕様って感じのとんがったリズムで歌うわけです。なので、リズムの修正箇所は随所にあるのですが、なんかメモするのも、かったるかった(いけませんねえ~)ので、カラダでなんとなく覚える事にしました(いいのか、それで)。とにかく、この曲は、音取りから始めないと。

 さて、このメサイアですが、実は9月の本番では、ベーレンライター版の番号で言うと、4番、11番、19番、21番、22番、23番、39番、47番の八曲を歌うそうです。4番と11番は、今回の練習で歌えるようになったから良し。39番は有名なハレルヤコーラスだから、OK。47番も有名なアーメンコーラスなので、たぶん歌えるでしょう。なので、9月の本番に向けては、19番、21番、22番、23番の四曲の音取りをしておけば、なんとかなりそうです。で、9月の本番が終わったところで、12月の本番に向けて残りの数曲(抜粋演奏なので全曲ではないでしょう)をやればいいので、案外、気楽に考えてます。

 紹介をしてくれた方にお礼を言って、山をくだって、お昼ごはんを食べて、ウチに帰りました。特に団の運営側からは「団に入ってください」とも「もう二度と来るな~」とも言われず、放置プレイでございました。ううむ、次の練習に行ってもいいんだよね?

 とりあえず、次の練習に向けて、音取りはしておこうっと。でも、こうやって、メサイアを歌った経験を作っておくと、次から色々なメサイア関係の催しに参加して歌えるようになれるので、ちょっぴりうれしいです。

コメント

  1. おぷー より:

    合唱団で外れないように歌っていれば、音感も良くなりますしね。
    (私の音感は、合唱団の中で育ったようなもんです。)
    コロも沢山出てくるので、息をコントロールする良い訓練になります。
    メサイアは、同志社メサイアで4年間歌って、最後の年は、完全に暗譜
    してました。
    でも、その後歌った事がないので、すとんさんの記事を読んで、
    マタイばっかじゃなくて、メサイアも歌いたいなあ、なんて思ってしまいました。
    昔アルトだったので、今度歌う時は、勉強し直しになりますが、
    歌いたいです。
    (オランダ、メサイアがあまり人気がなくて。何時チャンスが来るでしょうか?)

  2. すとん より:

    >おぷーさん

     確かに合唱団で歌っていると相対音感が良くなるでしょうね。上手な所にいると、平均律ではなく純正律で歌えるようになれます。まあ、私はそうなるほど長く合唱をやるつもりはないのですが…。

     今回は半年限りという期間限定での合唱復活のつもりなので、限られた時間の中で多くの事を学び訓練してこようと、割と貪欲な気持ちになっています。ですから、結構、前向きなんですよ。

    >コロも沢山出てくるので、息をコントロールする良い訓練になります。

     コロラチューラ、つまりメリスマ(32分音符が限りなく続くフレーズ)がたくさん出てくるんですよね、メサイアって。ああいうフレーズって、ソプラノ以外では、バロック~古典派でも歌わないと、お目にかかれませんから、いい勉強になります。ほんと、息のコントロールが上手になるでしょうね。

     オランダの年末はマタイなんですか? それもなかなかいいですね。日本はやっぱり第九がメインですが、キリスト教関係のところはメサイアですね。なので、第九とメサイアが歌えると、年末年始は愉快に過ごせす。むしろこっちでは、マタイの方が珍しいです。マタイは歌うどころか、演奏会を聞けるチャンスもなかなかありません。マタイはいい曲がたくさんあって、私も好きです。歌ってみたい気もしますが、メサイア以上に、私の声に合わないだろうなあ(笑)。

  3. おぷー より:

    いえ、年末ではなく、イースターの辺りが、マタイラッシュです。
    殊にオランダでは、多分毎年60から80のマタイのコンサートが開かれてます。
    年末は、クリスマスオラトリオとか他の作曲家のクリスマス関係の
    曲が多いですね。(たまにメサイアが入っていたりします。)
    バッハのミサ曲ロ短調は、音楽がとてもステキで、もう一回どこかで歌ってみたい
    です。
    沢山合唱団で歌われたら、多分声のコントロール力が付いて来ると思いますよ。

  4. すとん より:

    >おぷーさん

     そうですか、クリスマスではなく、イースターシーズンでしたか。そう言えば、メサイアも日本ではクリスマスシーズンに歌われることが多いけれど、本場イギリスでは、イースターシーズンに歌われるものなんだそうですね。…考えてみれば「受難と復活の歌」なんだから、イースターの曲ですよね(汗)。

    >沢山合唱団で歌われたら、多分声のコントロール力が付いて来ると思いますよ。

     そうかもしれませんが…そんな自分の姿が想像できません(笑)。今はまだ、声を巧みにコントロールするよりも、まだまだ声をひけらかして、勢いでバンバンと歌い飛ばしたい年頃なんですよ。

     だから、なかなか歌が上達しないんだな。でも、バカなテノールなんで、勘弁勘弁。

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