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パート(声種)の分け方

 クラシック系の歌、とりわけ合唱をやりたいなあ…と思っている人が最初に思うことは「自分はどのパートを歌えばよいのか」という疑問。女声なら、ソプラノ、メゾソプラノ、アルト、男声なら、テノール、バリトン、バスの、どのパートを歌えばいいの? という疑問。

 ちなみに、ソプラノとテノールが高音歌手で、メゾソプラノとバリトンが中声歌手、アルトとバスが低音歌手になります。ただし混声四部合唱だと中声歌手は低音部にまわされので、メゾソプラノはアルトと一緒にされ「アルト」と呼ばれ、バリトンはバスと一緒にされ「バス」と呼ばれます。

 入団の時に、きちんと指導者に声を聞いてもらってパートを決めてもらった人は良いけれど、どの団も指導者がパート決めをするわけではないし、また指導者にしても実はピアノ出身とかで声の事はよく分からない人が指導していたり、経験だけが長い素人指導者だったりすることも多かったりして、必ずしも正しくパート分けしてもらえるわけでもない。

 それで長く歌っている人でも、自分のパートはこれで良いのだろうかという疑問が、当然出てくるわけ。

 ではちゃんと調べてみようと思っても、案外よく分からない。で結局、各声種の声域を調べて「きっと自分はこの声種だろう」と決めている人、多いんじゃない? それでいくと男性はほとんどがバリトンになっちゃうね。また女性の場合「私はハモるの苦手だしメロディ歌いたいから…」って理由でソプラノを強く希望してそのまま居すわっちゃう人も多いよね。

 かくして、日本の合唱団には、自称ソプラノとバリトンがたくさんいるわけだ。でも、それホント?

 そこで、私なりにパートの分け方を色々と考えたり、調べたりしてみた。で、私の結論は以下の通り。あ、文責は例によって、すとんと言うことで(笑)。

0)希望どおりにはならない事もある

 どういう事か言うと「ソプラノを希望したからと言って、ソプラノになれるわけではない」と言うこと。これは別にソプラノに限った話ではなく、すべてのパートで言えます。

 え? と思われる方も多いと思いますが、声は身体に依存します。私たちはどんなに願っても、この身体を取り替えるわけにはいきません。そして声も、訓練することは可能でも、取り替えることはできません。それぞれの声の個性は打ち消せないものであり、実はパート分けも、その持って生まれた声で、すでに定まっていますので、(残念ながら)希望どおりにならない事もあります。まずは、これを前提条件として、話を進めて参ります。

1)パートと声域は全く関係ない

 よく間違えのがこれ。でも実際の合唱団では、入団希望者の声域で、パートを決めているところの多いこと多いこと、目が眩むばかりです。

 声域とは音域と考えても結構ですが、つまりはどれだけ低い音から、どれだけ高い音まで出せるかという使える声の広さのこと。自分は低い方が得意だからバスとか、高い声ならなんとかなるからソプラノとかは間違い。自分の現在の声域とパートは全く関係ありません。しかし、そうは言っても、各パートごとに必要とされている声域はもちろん存在するので、自分のパートに必要な声域は訓練で獲得する事が必要ですし、パート分けが正しければ声域の方はなんとかなるって。

 でも現実的な話として、自分のパートに必要な声域を獲得するための訓練って、町の合唱団レベルだとなかなかできないところが多いです(だいたい、ほとんどボイトレの類をやらない団もありますしね…)し、少しでも高音が出せる人(男声)や低音が出せる人(女声)は貴重なので、そんな高音低音が出せる人は、何はともあれテノール・アルトにしてしまう団は、たくさんあります。ま、現場的対応と言うか、現実的対処方法というやつですな。

2)パートと声の太さも関係ない

 声域でパート分けをしないって事になると、次は声の太さで考えがちですが、これも間違い。声がかわいいからソプラノとか、太めの立派な声だからバスとかではありません。もちろん、かわいい声のアルトってありえないけれど、そのかわいい声は正しい発声ですか? また、オペラを聴くと分かるけれど、主役クラスのソプラノやテノールって、実に太い声です。細い声の低音歌手っていないけれど、太い声の高音歌手は主役ですから、声の太さでパートを決めてしまうと、主役クラスの高音歌手がみな低音にされてしまいます。これっておかしいでしょ? 脇役の声ばかり揃ったソプラノやテノールを聞きたいですか? ね、ですから、パートと声の太さは関係ありません。

 もちろん、曲によって必要とされる音色が違うのは当然です。だからこそ、そのための訓練をしたり、または団のレパートリーにその曲を加えたり加えなかったりするのです。 歌、とりわけクラシック系の歌は、声域が満たされているから(効果的に)歌えるというわけではありませんが…趣味レベルの場合、そこまで厳密に考えるべきかという問題もあるにはありますね。

3)結論…パートはチェンジの箇所で分けるべき

 では、何に注目してパートを分けるべきかと言うと、実は簡単。歌う側の都合で考えるから分からなくなるのであって、歌わせる側(つまり作曲家)がどう考えてパート分けをしているかを考えれば、答え一発です。

 作曲家は何を考えてそれぞれのパートを作曲しているかと言うと、それは歌手のチェンジの場所です。つまり作曲家は作曲する時、それぞれのパート(声種)のチェンジの箇所に注意しながら、そのパート(合唱パートの旋律)を作曲するのです(無論、チェンジの箇所以外にも色々考えて作曲しているのは当然としてネ)。だから自分のパートが何かと迷ったら、自分のチェンジの場所はどこで、そのチェンジだったら、どのパートがふさわしいのかと考えるがスジというものです。

 チェンジって何?って人のために説明すると、いわゆる地声と裏声との間で声が出しづらくなる部分をチェンジと言います。このあたりは誰でも声が出しづらく、たとえ訓練を十分に積んだ歌手であっても、やはり程度の問題はあれ、声を出しづらいところなのだそうです。だからこそ作曲家は、歌い手のチェンジの場所をきちんと頭に置いて作曲するわけだ。

 だからソプラノのメロディはソプラノのチェンジの場所に注意しながら、バスのメロディはバスのチェンジの場所に注意しながら作曲家は曲を書いています。だから、チェンジの場所が違う歌手がそのメロディを歌ってしまうと、作曲家の考えた意図や効果と違ってしまいます。

 では、具体的にそれぞれのパートのチェンジの場所はどこにあるかと言うと、固定ドでは…

   アルト&バスは「ド♯~レ」
   メゾソプラノ&バリトンは「ミ♭~ミ」
   ソプラノ&テノールは「ファ~ファ#」
      
 って感じ? と書くと「私は日によってチェンジの場所が違う」とか「私のチェンジはドより下だよ」とか「ソより上よ」という人も出てくるでしょう。そこで次の問題となります。

4)パートはある程度声が訓練された状態で考えること

 当たり前だけれど、一通りの訓練が終わった状態でないと、本来パートって決められないと思う。訓練をしていない状態では、声が出しづらいのは、単なる訓練不足なのか、それともチェンジなのかという判別は、なかなか付きません。だから、初心者の人はパートうんぬんに悩むよりも、まずは発声練習から…ってことです。 もちろん、成長期(変声期)にある人は、成長が終わり落ち着くまでは、パートが確定しないのは当然です。

 しかし今すぐに自分のパートを知りたい、すぐにも合唱団に入りたいとかの場合はどうするか…そういう場合でも自己判断は禁物。自分で自分の声は冷静に聞けないものです。やはりその場合は、声が分かる人に聞いてもらうしかないですね。経験豊富で声の分かる指導者は、未訓練の声を聞いて、その声の訓練された状態を想像して、パートを決定するという事ができるそうです。その点はさすがプロですな。

 パート分けの話を書きましたが、今回のは主に合唱のパート分けの話でした。リートの場合も同じような感じになるでしょうか? オペラの場合、パート分けというよりも声種と言った方がより良いでしょうが、これはまた、実に細かく分かれ、私の手に負えるものではありませんし、一般の合唱愛好者には縁のない世界ですネ。

 さらに、ポピュラー系の歌手の場合、パートとか声種とか考えても意味のないことです。ポピュラーの場合は、歌い手が自分のスタイルに曲を合わせて歌うので、歌いたい歌を歌えるようにアレンジしたりキーチェンジをしてしまいます。ある意味、歌はつねにオーダーメイドなのがポピュラーの世界。自分に合わて歌を変えるところから始まるので、そこがクラシック系とはかなり違います。だからこそ、カラオケには、キーを変えるスイッチがあるです。

コメント

  1. みるて より:

    声がどこかわからないとか判断がつかないなら「声帯」を専門にみて下さるお医者さんで
    声帯自体を見ていただくとわかるようですよ。
    声帯のサイズ=リードのサイズなので、楽器の判定ができるんですって。
    個人で声楽の先生について判断していただくのが一番いいのでしょうが
    こんな裏技もあります。
    でもね、わたしは判定外でしたから、たまーにこんな人間もそんざいするかもしれませんが、参考までに♪
    自分で自分の声の判定は難しすぎますよね、本当に。

  2. すとん より:

    >みるてさん
     お医者様に見てもらうというのも確かに一つの手でしょうね。声帯の大きさや厚さで、単なる声種だけでなく、声の太さや軽重などの本来の声も推測できるのでしょうね。私のような、初学者に限りなく近い人間は、自然に声を出しているつもりでも、実は知らず知らずのうちに、作り声を出しているって事が大いにありますので、本来の自分の声を医学的に知ると言うことは、可能であるならば、大切なことだろうと思います。
     問題は、地方在住だと、そんな専門医が身近にいるかどうかというところかな?
     

  3. Cecilia より:

    興味深い記事です。
    自称ソプラノも多いけれど、実際日本ではアルトよりソプラノが多いので、本来ソプラノという人を全部ソプラノにしたら合唱が成り立たなくなる恐れが?
    うちの長女がやっていた小学校のコーラス部では先生がかなり時間をかけてパート決めをしていました。
    長女は「声が太い」というのでアルトになりましたが、私はどちらかといえばソプラノかな・・・と思っていました。
    まあ、子供なので大人と同じようには考えられませんよね。
    あの子は低い声もばっちり、高い声もばっちり・・・音域が広いので得ですね。(しかも音程のとり方がうまいし、裏声・表声を上手に使っていると思います。)
    本人はメゾやアルトパートを歌うのが好きなので、合唱団で重宝されるのではないかと思います。
    そうそう・・・弾きながら歌うのもうまいのですよね。(親ばかですが・・・)
    今日の記事で消音ピアノの話題が出ていますが、長女は伴奏やアンサンブルの練習のために消音ピアノの録音機能をしっかり使いこなしていました。(歌や他のパートを録音していた)

  4. すとん より:

    >Ceciliaさん
     日本人は小柄ということもあり、アルトやバスの方はなかなかいません。特に女性はたしかにソプラノばかりですね。このことについては、ぼーっと考えていることもあるので、いずれ記事にすると思います。
     そうそう、消音ピアノの録音機能について書くのを忘れていました。実は息子君は、ピアノのレッスンが終わると、フロッピィ(今時…)を持って帰って来ます。これは何かというと、先生のお宅で弾いたレッスン内容が録音されています。で、持って帰って来たのをパソコンで聞いたりします。便利な世の中になったものです。

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