六月の声楽発表会に向けて、日夜、歌の練習に励んでいる私です。抱えている曲は三曲。「人知れぬ涙(アリア)」と「ひと言だけでもアディーナ(二重唱)」と「乾杯の歌(ガラコンサート形式)」の三曲。ドニゼッティの「愛の妙薬」から2曲と、ヴェルディの「椿姫」から1曲です。
まあ、まだまだどの曲も完成にはほど遠いのですが、中でも一番悲観的にならざるをえないのがアリアこと「人知れぬ涙」です。実にまだまだ、海のものとも山のものともなっておりません。そろそろ、残り時間はあと三カ月。最初のピアノ合わせまで約一カ月という、この時期なのに、いまだ完成の片鱗すら見せておりませぬ。
大丈夫だろうか?
他の2曲は、何となく完成姿が見えつつあります。
「乾杯の歌」は、本来は二重唱+合唱という形で歌う曲ですが、今度の発表会では、我が歌劇団で束になって(笑)歌うので、よくテレビなどで見かける“ガラコンサート形式”で歌います。なので、私が歌うのは、独唱と重唱と合わせても、全体のほんの一部、46小節くらいかな? あ、結構あるね。でも、やっぱり丸々一曲と比べれば量的には少ないし、だいたい曲自体も簡単なので、油断さえしなければ、なんとかなるでしょう。
二重唱の方は、実はかなりの難物なんですが、それを見越して、早めに準備に着手したおかげもあって、あと三カ月といった現時点で、とにかく形になってきました。あとは、これを緻密に仕上げていくのみです。
で、問題はアリアです。これが何とも…です。レッスン記録の方を見ていただければ、私がいかにこの曲と格闘しているかが、お分かりになると思います。
では、なぜアリアが歌えないのか、ちょっと考えてみました。
実はアリアと二重唱、同じ作曲家の同じ作品からの曲という事もあって、節回しとか歌詞のつけ方とか、色々と似ていますし、同じテノール向けの曲という事もあって、最高音だってわずか半音しか違わない曲なので、本当は曲としての難易度に大きな差はなく、二重唱が歌えて、アリアが歌えない…なんて事はないはずなんですが…二重唱はどうにかなりそうだけれど、アリアはからっきしダメというのが現状です。
この差はどこから?
…そうそう、思い出しました。二重唱だって、ついこの前までは、全然歌えず、箸にも棒にもかからなかったんだっけ?
…どこで歌えるようになったんだっけかな?
と記憶をたどっていけば……前回の歌劇団の練習の休憩時間の時に、団員のみなさん方の前でこの曲を歌った時から、何となく歌えるようになったんだっけ。
では、なぜ、歌劇団で歌って以来、歌えるようになったのか? …それは、その“歌えた時の色々な感覚”をまだ覚えて、それを自宅練習でもうまく再現できているから。
ではなぜ歌劇団で歌えたのか? …それは自宅練習とは異なる条件が色々と重なり、それがよい影響を私に与えてくれて歌えたのだと思う。
自宅練習とは異なる条件…まず、会場の広さ。歌劇団は、演技の練習もしますので、学校の教室よりも広い部屋で練習します。一方、自宅の書斎は(たしか)6畳間です[変形6畳間なので結構横長]。歌って、どうしたって“部屋なり”に歌うものです。6畳間では6畳間なりの歌い方、広い部屋なら広い部屋なりの歌い方をします。広い部屋で歌う時は、それなりに声量も稼がないといけません。普通にボソボソと歌うわけにはいきません。
それに歌劇団では、団員のみなさんの目があります。みなさんの見ている前で歌うわけだから、あまり無様な姿は見せられません。ですから、気合を入れて、ガッツリ歌っていきました。
あと、歌劇団の時は、暗譜で楽譜を見ないで歌った事も大きいかもしれません。自宅では、いくら暗譜をしているとは言え、楽譜を開いてチラチラと眺めるわけだけれど、歌劇団では楽譜は見ないで歌ったわけで、ある意味、全身を歌のために使えたわけです。
この三つの要因のおかげで、結果的に、普段以上に思い切って歌い、それが功を成し、それまでダメだった二重唱が、なにとか歌えるようになったわけです。
そして、この歌劇団で歌った時の感覚を、まだ何となく覚えているのです。だから、あれから二重唱を練習する時は、歌劇団で歌った時の感覚を思い出しながら歌っています。
ところがアリアは、まだ自宅練習とレッスンのみで、人前で歌った事はありません。
先日も、自宅でアリアの練習をして「ああ、今日も今一つだなあ…」と思いつつ、次に二重唱の練習に取りかかった時、歌っている最中に、背骨がボキボキ言うのを感じました。頭蓋骨もボコボコと音を立てて開いていきます。ああ、この感覚は、二重唱を歌っている時はあるけれど、アリアを歌っている時は無いなあ…そう思いました。
もしかしたら、アリアの時は、二重唱ほどに、カラダを使って歌えていないのかな? だから、歌えないのかもしれません。
しかし、この二曲は、歌のシチュエーションが全く違います。二重唱の方は、口論している場面なので、結構思い切りよくパンパンパンと歌えますが、アリアの方はしっとりと内省的に歌う曲なので、気合入れて歌い飛ばせるような曲ではありません。穏やかに歌わないといけない曲で、カラダを使うと言っても、おのずとその使い方も違ってくるはずです。そこが難しいです。
その他にも、アリアと二重唱で、色々と違いを感じています。
アリアはとにかく、一にも二にも、発声で苦しんでおります。発声が難しいんです。最高音はA(テノールのアリアの中では低い方。ただし二重唱より半音高い)だし、全般的に音が高いし、休憩もロクにないし…。
…とは言え…
実は、アリアも二重唱も、その出だしの音は同じ音程(F)なんです。二重唱では歌いだしの音は、ごく普通の高さの音として感じているし、普通に歌いだしている私ですが、アリアでは、なんか高い音だなあって思ってます。もちろん、歌う時は、ちょっと身構えて歌いだします。同じ音程の音なのに、考えてみると、ちょっと変な反応ですよね。
またアリアの最高音は確かにAだけれど、これはカデンツァの中に一回だけ、それも一瞬出るだけで、それ以外の最高音はAsなので、実は二重唱とそんなに変わりません。そして、そのAsも、たしかに高音だけれど、二重唱だとヒョイって感じで出せますが、アリアでは苦労してますし、壁にぶつかって、うまく歌えません。
この感覚の差はどこから来るのでしょうか? ううむ、困ってます。案外、音の高い低いなんて、気分の問題でどうにでもなるのかもしれません。
それと、アリアを歌っている時は、やや棒立ち気味に立っている自分を見つけました。当然、背中はほとんど使えていません。それどころか、アゴを前に突き出して、腰を後ろにそらして、上向いて歌っている始末です。特に高音になるほど、上を向いちゃいます。
ところが、二重唱の時は、自然に“C”の字のように背中を丸めて、背中をボッコリと膨らませて歌えています。音が高くなればなるほど、下を向くし、肩を下げていきます。
これほど、立ち姿が違えば、おのずと結果が違って当然だね。それだけ分かっているなら出来るよね~って感じですが、それができれば苦労はないのです。なんかうまくいかないのですねえ。いつの間にか、アリアでは上向いて歌っている私です(涙)。とりあえず、姿勢、大切なのにね…。理屈で何となく分かっても、それを実行できないってのが、私の抱えている壁って奴ですね。。
道はまだまだ長くて険しいな。なんか、まとまらなくて、申し訳ないです。
コメント
足をしっかり地に付けて、上が伸びていく感じにしたら、大分違うと思います。
あまりニガテ意識があるようだったら、思い切って曲を変えると言う手も
あると思いますが。
Che gelida manina(ラ・ボエーム)なんかすとんさんに向いてそうですけど。
テノールの歌のカラオケサイト見付けちゃいました。
参考まで。
http://www.opera-karaoke.com/tenor_arias.html
>おぷーさん
苦手意識と言うのは特にありません。どうにかやっつけてやりたい、とは思ってますが。
>足をしっかり地に付けて、上が伸びていく感じにしたら、大分違うと思います。
うむ、足を地にしっかりつけるは、かなり意識してますが、上に伸びていくという意識に欠けていたかもしれません。カラダを上下に引っ張らないといけないんでしたよね。ちょっと意識してトライしてみます。
>Che gelida manina(ラ・ボエーム)なんかすとんさんに向いてそうですけど。
Che gelida manina「冷たい手を」ですね。実は、真っ先に歌いたいアリアとして先生に希望したんですが、今回は却下されちゃいました(笑)。理由ですか?…Hi-Cがあるんですよ、この曲。Hi-Cは曲はもちろん、まだ発声練習でもまともに出したことがない音なので、そりゃあ却下されても仕方ないです。でも、あきらめてませんよ。やがて、音域の拡大の後は、ぜひとも歌ってみたい曲ですからね。そういう意味では、目標の曲の一つです。
カラオケサイトは見ました。一曲あたり日本円で500~1000円かかるんですね。プロの方の利用を前提としているみたいですから、それくらいしても当然だと思います。とりあえず今のところは間に合ってます(自作カラオケがありますから)が、必要とあらば、利用させていただくかもしれません。
…探せばなんでもあるんですね、インターネットって。
すとんさんって
リップロールはできますか?もしくは巻き舌。
リップロールで1曲歌ってみてください、体のポジション確認と息の流れの確認ができますよ。
わたしには結構有益な練習方法です。
巻き舌だと喉が閉まっちゃうので、リップロールがお勧めなんですが
巻き舌でも息のとおりと体の(喉以外の)体の使い方がわかるかと思います。
本番前は焦るとなおさら練習が空回りしますから、頑張って!
>みるてさん
リップロールも巻き舌も、決して苦手ではありません。巻き舌なんざぁ、フルート吹きながらも出来まっせ(リップロールはさすがにフルート吹きながらは無理です)。
確かに息を送り続けないとリップロールはできません。そういう意味で、リップロールって、おっしゃるとおり、息の流れの確認に良いかもしれないですね。私は声の方向については、よく考えますが、息の流れには、無頓着だったかもしれません。とりあえず、息は支えときゃいいじゃん、みたいな…感じでした(笑)。
もちろん、息を送り続けることは、フルートを吹いていますから、お茶の子サイサイでございますよ。リップロール、自宅練習で取り入れてみようかな?
話は少しそれるかもしれませんが、最近の私は省エネならぬ省息で歌うように心がけています。もちろん、子音では息を使いますが、母音では本当にごく少量の息しか使わないようにしてます。まるで民謡歌手の修行みたいですね。でも、たぶん、私の場合は、これが今のところ、正解じゃないかなって思っております。それこそ「息は花の香りをかぐ程度吸えばいい」の世界を目指しております。…目指しているだけで、なかなか到達しないんですがね(笑)。