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柔道と剣道 声楽と器楽

 私は柔道マンです。ブラックベルト(黒帯)などを持っていたりします。ガタイもヘビー級ですから、リアルに殴り合いなどをすると、結構強いし野蛮です。

 それはさておき…

 柔道の潔いところは素手で戦うという点です。武器となるのは、鍛練された我が身と勇気だけです。だから、一生懸命、自分を鍛えます。

 重いバーベルやダンベルも喜んで上げ下げします。裸足でどこへでも行けます。殴られてもヘコたれません。首を絞められても動じません。関節が外れても驚きません。筋肉疲労でフラフラになると、なぜか喜びが湧き上がります。痛みの中に快感を感じます。無意識のうちに、人間の価値を筋肉の量でランキングしたりします。

 柔道では、自分を鍛え上げれば「柔よく剛を制する」という言葉どおり、自分よりも体格の大きな人であっても、戦うことができますし、勝つこともできます。

 柔道の快感、それは何よりも“体を鍛えて素手で戦う”という醍醐味でしょう。

 柔道と同じ、いや、それよりももっとメジャーな武道に、剣道というのがあります。こちらは刀という武器を持ちます。武器を使いますから、柔道ほどカラダを鍛えるわけではありません。しかし、武器である刀の使い方を徹底的にマスターします。刀が自分の体の一部であるかのように感じられるほどに、訓練をしていきます。剣道では、自分も武器を持ちますが、相手も武器を持ちます。武器を持った者同士のギリギリの戦いが、剣道の醍醐味かもしれません。

 剣道は武器を使うが故、その武器をどの程度使いこなせるかが、勝負の分かれ目と言えるでしょう。

 なんか、そんな柔道と剣道ですが、私はこれをしばしば、声楽と器楽に置き換えて考える事があります。

 声楽は我が身一つです。自分のカラダを楽器にして音楽をします。歌うこと、そのものが快感となります。

 対して器楽は、武器の代わりに楽器を使います。声楽ほどにはカラダを鍛える事はないかもしれませんが、楽器操作の習熟に熱を上げます。まるで楽器が自分の一部のように感じられるほどに訓練していきます。そして、演奏者の力量が同じ程度ならば、良い楽器を持っているほど、より良い演奏ができます。

 柔道と剣道で他流試合をする時、剣道の三倍の段を持っていないと柔道は相手にならないと聞いたことがあります。どういう事が言うと、剣道初段の相手には柔道三段の猛者でちょうど良く、同じ初段同士だと、柔道は剣道の相手にはならないというそうです。本当かどうか分かりませんが、確かに剣道には武器使用の威力ってのがありますので、それくらいのハンデで妥当なのかもしれません。

 音楽でも同じ事が言えるかもしれません。いわゆる無手勝流の声楽に対して、楽器に助けてもらえる器楽の妙です。実際、趣味レベルとは言え、両方やっている身で言えることは「器楽よりも声楽の方が苦労が多い」です。「苦労が多い」を単純に「難しい」と解釈しても、そう大きく外れないと思います。

 あと、武器もそうだけれど、楽器もより良いもの、より性能の素晴らしいものに買い換えていくことで、簡単にパワーアップできるのが(お財布はツラいかもしれませんが)うらやましいですね。歌では、自分の体を取り替える事など、まず不可能ですから。

 そして、楽器の入手がどうにもならない環境ならば、歌が唯一の音楽になっていくのでしょね。え、って事は、貧乏な地域ほど歌が盛んで、セレブな人々ほど器楽が盛ん? なわけ、ないよね(?)。

コメント

  1. とと より:

    すとんさn おはようございます

    >貧乏な地域ほど歌が盛んで、セレブな人々ほど器楽が盛ん?

    楽器を使う音楽においては、「貴族のたしなみ」なんでしょうね
    んで地方においては、「旅芸人の音楽」が贅沢の限界?

    あとは、手近に有るものを楽器にする?
    体・指・草・葉・竹・木などを、叩いたり吹いたり叫んだり??

    大自然そのものが、音楽だから、毎日がみたされていたのかも?

  2. すとん より:

    >ととさん

     楽器にも色々あります。いわゆる民族楽器は素朴なもの(つまり、値段的にはそれほどでもない感じ)も多々ある一方、クラシック音楽などで使用する楽器は、半端なく高価だったりします。貴金属でできているフルート(驚)とか、貴金属並の価格で取引されているヴァイオリン(涙)とか。

     そうそう、私はついつい歌で考えてしまいますが、体を使った音楽と言えば、打楽器なんかもそうですね。拍手とか膝打ちなんて、音楽の原形みたいなものかもしれません。

     手拍子叩きながら、数人で声を合わせて歌う。これが音楽の最初の風景かもしれませんね。

    >大自然そのものが、音楽だから、毎日がみたされていたのかも?

     かもしれませんね。

  3. ひょっとこ より:

    面白い切り口で来ましたね。

    昔、私は剣道をやっていたわけですが、
    その時の先生に、合気道の延長で剣道されている方がいました。
    非常に強かったことと、構えが独特なことを思い出しました。

    剣道だけやっている人って大抵、背筋が伸びて姿勢が良いのですよね、
    そう教えられるから。しかし、合気道から剣術もやっている人って、
    そのまま素手でも戦える構えなんですよね、少し猫背で前かがみで。
    しかも、剣道の振り方って、真剣だと使えないですから。

    柔道や剣道はある部分を特化させてスポーツにしたものです。
    今の合気道もそうかもしれません。

    武術はそれぞれ得意分野があるにしろ、本来は総合的なものです。
    武器があればそれを使い、なければ素手で戦う。

    合気道に塩田剛三さん(故人)がいます。紹介しておきます。
    「柔道と剣道で他流試合をする時、
     剣道の三倍の段を持っていないと柔道は相手にならない」
    って一文でこの方を思いだしました。
    http://www.google.co.jp/search?q=%E5%A1%A9%E7%94%B0%E5%89%9B%E4%B8%89+youtube&num=100&hl=ja&newwindow=1&safe=off&client=firefox-a&rls=org.mozilla:ja:official&prmd=vo&source=univ&tbs=vid:1&tbo=u&ei=2f88TPqvH8ircbOE6dAC&sa=X&oi=video_result_group&ct=title&resnum=1&ved=0CCAQqwQwAA

    最後に、剣に頼るのと、剣も使えるのは強さが違うと感じますね。
    確かに音楽にも通じてる。

  4. すとん より:

    >ひょっとこさん

     今、YouTUBEを見れる環境にないので、動画の方は後で拝見させていただきます。

     それにしても合気道をされていた先生に剣道を習っていたのですか? それはなかなか希有な経験ですね。

     合気道って、護身術系武道と思われ、世間的にちょっと軽く見られがちなんですが、柔道以上に相手の力や体をうまく利用して戦う武術です。私、以前、合気道の人と組み手をした事がありますが、ああいうタイプの武術は攻めあぐねます。負ける気はしませんでしたが、さりとて、勝てるとも思えませんでした。相手から戦う気力を削いでいく、実に不思議な武術だと思います。

    >武器があればそれを使い、なければ素手で戦う。

     そうですね。戦場ではゼイタクな事は言えませんからね。

     音楽も楽器があって、それを使う事でより深く表現できるなら楽器を使うべきだし、無ければ無いで無いなりに、表現方法を考えていけばいいわけで、歌だけに頼る、楽器(それも特定の楽器)だけに頼るではなく、まずすべきなのは“音楽表現”ってやつで、そのために、どう歌っていくのか、楽器ならばどう奏でていくかを考えて、場合によって、歌うべきか楽器を使うべきか、楽器を使うならば、どの楽器をチョイスしていくのかって考えていくのがスジなんだろうと思います。

     そういう点では、どんな音楽のどんな表現にも対応可能なように、一つの楽器の演奏を極めていく道もありだし、表現方法を常に模索し、多種多様な音楽表現ができるような方向に自分を鍛えていくのもアリですね。

     ま、私は、マルチな方向へ(程度としてはたかがしれてますが)向かって歩いていきたいと思ってます。

  5. Yuki より:

    アイリッシュにはスプーンとか(まあ打楽器の代わりですけど)ありますよね~
    まあ打楽器の才能がある人なら箸だろうがスプーンだろうが……貧乏と言うだけでなく、手拍子足拍子、箸、船バタその他が楽器の源泉だろうとも思います。
    そしてフィドラーの楽器もしょぼいイメージです(断じてクレモナの名器とかではない!!)。今は高名な奏者はそれなりの物を使っているのかもしれませんが。

    その対極でお金のかかる楽器が、私的にはパイプオルガンだと思っています。
    何せその教会なりホールなりで弾かせて貰うしかないんですから(個人所有は事実上不可能ではないかと……)。つか、大聖堂とか音響の素晴らしいハコとセットで初めて成立する楽器ですよね……その豪華さに気が遠くなりそうです。
    歌にしても、
    「カウンターテナーいねえのかよ!!」
    とか編成に拘り出すとお金が掛かるような気もしますので、難しいところかも。

  6. すとん より:

    >Yukiさん

     ほぉ、アイリッシュではスプーンが楽器として活躍するのですか、それは知りませんでした。同じ英国民俗音楽でも、スキッフルだと洗濯板が楽器として活躍しますよね。日本にも、プロの洗濯板奏者の方がいらっしゃって、時々NHKあたりで見ます。洗濯板がとってもかっこ良く見えます。

     フィドラーの楽器は…たしかにしょぼいイメージですね(笑)。そりゃあ、酒場で酔っぱらって演奏する音楽なんだから、億単位の楽器なんか怖くて持ち込めないですよ。酔っぱらいが壊しちゃっても、全然平気な楽器じゃないとダメでしょうね。

     ちなみに、パイプオルガンも現在では電子式のものがありますので、それを自宅に所有して練習三昧しているオルガニストを数人知っています。電子式と言って馬鹿にするなかれ、私、弾かせてもらった事がありますが、練習用としては十分デス。ホンモノとの違いは…やっぱり低音かな? パイプオルガンの低音は電子音では再現できませんからね。

     しかし電子式のオルガンがなかった昔は、オルガニストはどこかの専属にならないと練習もまともにできなかったそうで、時代は変わりましたねえ~と言っておりました。

     もちろん、電子式のオルガンと言っても、エレクトーンの類の電子オルガンではなく、パイプオルガンのコントロール部分とシンセサイザーが合体した、電子式パイプオルガン(ただしパイプ無し)って感じの楽器です。けっこう、ゴツいです。

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