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メトのライブビューイングで「ランメルモールのルチア」を見てきた

 標題の通りです。ドニゼッティのルチアです。
 それにしても、ドニゼッティって、オペラ愛好者にとっては常識的な作曲家ですが、日本人一般には全く無名ですよね、大作曲家なのに…。だいたい、学校で教えないし…。そういうところ、日本の教育って偏っているよなあ…って思います。ドニゼッティって、ロマン派の作曲家で、明らかにシューマンとかベルリオーズとかよりも格上だと私は思うんだけどなあ。正当に評価されていないんだよなあ…とつぶやいておきます。
 それはさておき、今回はこんな布陣の公演でした。
 指揮:リッカルド・フリッツァ
 演出:サイモン・ストーン
 ルチア:ネイディーン・シエラ(ソプラノ)
 エドガルド:ハビエル・カマレナ(テノール)
 エンリーコ:アルトゥール・ルチンスキー(バリトン)
 ライモンド:クリスチャン・ヴァン・ホール(バス・バリトン)
 今回の演出は、いわゆる読み替え演出で、なんと、現代アメリカ、ラストベルトと呼ばれる地域(デトロイトあたりです)が舞台です。登場人物たちは普通にパソコンもスマホも使っています。それどころか、落ちぶれた貴族の話ではなく、シノギに失敗したギャングの話になっているし、ルチアが清純で可憐な乙女ではなく、ハスッパなヤリマンのギャルになってます。
 台本と音楽は「ランメルモールのルチア」だけれど、舞台で繰り広げられる物語は、全くの別物の印象となってます。少なくとも、これはオペラファンが知っている「ランメルモールのルチア」ではないよね。
 なので、オペラ初心者には全く薦められない公演だけれど、面白さで言えば、確実に面白いです。ただし、ヤクザとかギャングとかの暴力系のお話でも大丈夫で、グロテスクとかホラーとかも大丈夫じゃないとキツイです。じゃないと、気分悪くなるかもしれません。そういう意味では、今回の公演は見る人を選びます。
 何はともあれ、この公演は、演出のすごさを楽しむ公演です。元の「ランメルモールのルチア」を知っている人ほど、演出のすごさに驚くと思います。
 演出というと、舞台上には常にカメラマンがいて、そのカメラが映し出す画像が舞台に作られた大スクリーンに映されるので、会場にいる人は、俯瞰で舞台を見ながら、アップで芝居の要所要所を見ることができます。特に、カメラはルチアを追っかけている事が多いので、ストーリーはルチアの感情に寄り添いながら進行していくのも工夫だなって思いました。
 歌唱的には、エンリーコを歌ったルチンスキーがすごいです。ルチアは主役なのだけれど、もう一人の主役と呼んでいいほどにキャラが立っていますし、歌も聴かせます。私はバリトンにはあまり興味の無い人なんだけれど、そんな私ですから、今回のルチンスキーには息を呑むほどに心を持っていかれました。
 ルチアを歌ったシエラは…歌唱はほぼ完璧だよね。実に見事です。ただ、彼女は黒人なので、今回のようなアメリカギャングの物語ならともかく、本来のスコットランド貴族の物語だと、ビジュアル的にキツイよね。まあ、白塗りしてカツラを被るのかもしれないけれど、そういう意味では、非白人系のオペラ歌手って不利だよね。
 エドガルドを歌ったハビエル・カマレナは、容姿には極めて難がありますが、歌声は何とも凄い歌手です。私はこういうテノールを見て学ぶべきだろうなあと思いました。Hi-Cを出すテノールはプロなら結構いますが、Hi-Es出すテノールはそんなにいません。オペラの最後のアリアでHi-Es出したのには、びっくらこきました。そこまで普通に力強い声で歌っていたので、なおさらびっくりです。いやあ、すごい歌手です、容姿には極めて難がありますが(笑)。
 と言うわけで、演出もすごいし、歌唱もすごいのが、今回の公演です。万人向けでは無いけれど、とても良い公演だと思いました。

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