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「勝つか負けるか」の人間ではなく、私も「勝つか逃げるか」の人間になりたい

 「勝つか逃げるか」という言葉は“欽ちゃん”こと萩本欽一氏の言葉です。

 欽ちゃんは現在、駒沢大学で学ぶ大学2年生です。74歳で大学に合格したそうです。すごいね、全くすごい。今は、熱心に大学で学んでいるそうですが、1年の時に、いくつかの単位を落としてしまったのだそうです。

 「年を取っているのだから、仕方ないよね」

 まあ、確かに仕方ない部分はありますが、でも、学力不足で単位を落としたのではなく、試験を欠席したために単位を落としたのだそうです。

 「仕事が忙してくて試験が受けられなかったんだね、仕方ないね」

 どうやら、試験の欠席と仕事は関係ないようなのです。試験の欠席は、欽ちゃん自らの意思で欠席をして、わざと単位を落とし、2年生の今年、再履修をしているのだそうです。

 「???」

 欽ちゃんが言うには、自分は卒業したり資格を得るために大学で学んでいるわけではなく、あくまでも大学で学びたいから学んでいるんだそうです。だから、授業は単位を取ればOKなのではなく、きちんと理解して身に付けることが大切なのだそうです。だから、試験は満点を取れる自信がある科目だけ受験し、満点を取れる自信がないものは欠席したのだそうです。

 この事を欽ちゃんは「あたしの人生は、勝つか負けるかじゃなくて、勝つか逃げるかだからね」とテレビで言っていました。

 私、この話を聞いた時に、目からウロコがボロボロ落ちたんですよ。さすがに、時代を作った人の言葉は、すごいなあ…って単純に思いました。

 「勝つか負けるか」という考え方だと、つまり“負けることもありうる”と考えているわけです。最初から負ける事を織り込んで勝負に挑むんでいるわけだし、実際、負けてしまうこともあるわけです。

 しかし「勝つか逃げるか」という考えだと、絶対に負ける事はないのです。負けるくらいなら逃げてしまうわけで、勝つ事しか考えていない…と言うか、絶対に勝てる自信や保証がない限り、戦わないという事なのです。つまり、戦う前から勝ちが見えない限り戦わない…のです。

 これが欽ちゃんが成功した理由なのだな…と思いました。だって、絶対に負けないのだもの。連戦連勝なのだもの。

 もちろん“必ず勝てる”状態まで自分を高めていくのは、とても大変な事です。一か八か、勝つか負けるかで勝負に挑んだほうが、どれだけ楽ちんなのか! 「勝つか逃げるか」は“勝てそうもなければ逃げちゃえばいいんだから楽だよね”ではなく“いざ勝負となったら、絶対に負けられないのだから、万全の準備をし尽くしてもし足りない”って事なんだと思います。

 本来、勝負というモノは、欽ちゃんの言うように「勝つか逃げるか」でなければいけません。「勝つか負けるか」と言ったリスキーの行動は取るべきではないのです。

 それに加えて、欽ちゃんのすごいのは、自分の目的を見失っていない事です。

 単位を取るために勉強しているのではなく、勉強をしたいからしているのです…それって、学びの本質を突いていると思います。

 我々が凡人が趣味であれこれやっているのは、単位とか資格とか、そういうモノを取るためではなく、純粋にそれが好きだから学んでいるわけです。

 私で言えば、歌を歌ったり、フルートを吹いたりしてますが、別にこれでプロになろうとか、商売を始めようとか、世界を征服しよう(笑)とか思っているわけではなく、ただただ、単純に「歌が好きだから」「笛が好きだから」やっているわけで、教則本をどれだけ進んだとか、どれだけの数の曲を学んできたとか、オペラアリアを歌っているとか、イタリア語がフランス語がドイツ語が…なんて、本当は、どうでもいいことなんだと思います。

 音楽が好きだから音楽を学んでいるわけで、自分が納得できるところまで、きちんとできるようになりたい…ただ、それだけなんです。そういう、純真な気持ちを忘れちゃいけない…って思ったわけです。

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コメント

  1. ドロシー より:

    すとんさん、こんにちは。

    何度失敗しても諦めるな、という言葉も聞きますが、確かに負け癖というのが身に付くのは困りますね。
    難関資格の場合、「記念受験層」という「落ちて当然だが、ダメモトで受ける」人たちが、一定の比率でいます。目的は「チャレンジしたこともあった」という話題作りのようです。

    さて、私たちアマチュア音楽家の言う「勝つ」とはどのようなことを言うのでしょうか?
    本番で他人から褒められても、お世辞に過ぎないこともありますしね。
    コンクールだったら「勝ち負け」というのはありますが、あえて「受けない」という選択は「逃げ」になるでしょう。でも確実に勝てる機会ってどこにあるのでしょうか。コンクールの審査員と徹底的に親密になって、お墨付きをもらえるレベルになってから受けるくらいではないでしょうか。

    結局の所、「大学の試験」という小さいことでも勝ち負けが決まる機会が少ない環境というのは空しいなって思います。

  2. mee より:

    すとんさん、こんにちは。
    「勝って後、戦う」という言葉が長年引っかかっていました。
    そういう事か…と、私も目からウロコです;:゙;`(゚∀゚)`;:゙
    「勝つか負けるかわからないけど、戦う」は日常茶飯事ですが、時々「勝ってる。でも戦うのね」って事があります。
    自分にとっては勝敗が見えているので、プロレスみたいに、成り行きは段取りをしたお約束の戦いになるんです。
    しかし「負けて後、戦う」場合もありました。
    逃げればいいんだ![E:happy02]
    排水の陣では逃げることはできませんが、もっと前の段階で、次があると思われる時に、一旦引く。
    勝てるタイミングが来た時に戦う。
    勝てるように日々準備は欠かせませんね。
    ありがとうございます。

  3. すとん より:

    ドロシーさん

     おっしゃる通り、負け癖はいけません。そんな癖はつけてはいけないと思います。

    >さて、私たちアマチュア音楽家の言う「勝つ」とはどのようなことを言うのでしょうか?

     それはそれぞれの人の心の中で決まってくる事なのではないでしょうか? つまり、何かをした時に生じる感情が、私達に勝ち負けを教えてくれるのではないかと思います。

     それは、かっこよく言えば「自分に勝つ」ことなのかもしれません。バッサリと言っちゃえば「自己満足できたら勝ち」なのかもしれません。正直、私にもよく分かりません。ただ「ああ、ダメだな」と思っているうちは、勝てていないと思います。

     それに、楽しみは勝ち負けを超越したところにあるのかもしれませんし…ね。

  4. すとん より:

    meeさん

     ついつい勝負事になった時に、私たちは勝ち負けしか考えないわけですが、欽ちゃんはそこに“逃げる”という選択肢を加えたわけで、私は、そこに彼の天才性を感じたわけです。

     そう、負けそうなら逃げちゃえばいいんです。逃げて、勝敗無しにしちゃえばいいのです。背水の陣になる前の段階で、引いちゃえばいいんです。で、次に必ず勝てばいいし、勝てそうもなければ、ずっと逃げていればいいのです。

     言うのは簡単だけれど、実行するのは難しいですね。でも、それを実行できる人だけが成功者になれる…のかもしれませんね。

     私も勇気を出して逃げられるようにしようって思ったわけです。

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