なんか、いきなりケンカを売っているようなタイトルで申し訳ありませんが…まあ、そんな事を考えちゃったわけです。
そもそもは、私自身、歌のレパートリーはそこそこあるけれど、フルートのレパートリーはほとんど無いという事実があり、そこがある意味、私のコンプレックスになっているわけです。
まあ、フルートにレパートリーが無いのは、H先生から、いわゆる“フルート名曲”って奴を吹くことを課題として与えられず、ひたすらエチュードばかり吹いているので、エチュードは吹けるようになっても、フルート名曲が吹けるようにはならず、結果として“フルートのレパートリー皆無”という状況にあるからです。
これもそれも、門下の合宿と仕事が常にぶつかっていて、門下の合宿に参加できないのが、一番大きな理由…なんだろうなあって思ってます。と言うのも、ウチの門下の場合、発表会って奴を合宿の中で行うので、合宿に参加できない事は、同時に発表会に参加できないって事なんですね。
やはり、発表会って奴に参加しない限り、フルート名曲を練習する事はないんだろうなあ…。ああ、残念。
…なんて思っていたわけですよ。で、フルート名曲と言えば、やはり『フルート名曲31選』だろうと思って、ひさしぶりに、この楽譜をバラバラとめくってみたんですよ。
そうしたら、この楽譜集のタイトルは『フルート名曲31選』だけれど、あまりに“フルート名曲”が少ない事に気づき、ビックリしたわけです。と言うのも、私は私で一応“フルート名曲”の定義があって、その定義に合致する名曲が、この楽譜にはあまり収録されていなかったからです。
私なりの“フルート名曲”の定義とは…
1)他の楽器の名曲からのアレンジものではなく、フルートのために書かれたオリジナル曲である事。
2)普通のクラオタ(フルート吹き始める前の私が基準)が知っている程度の知名度があるメジャーな曲である事。
たったこれだけの簡単な条件なんですが、この簡単な条件をクリアできる曲のあまりに少ない事、いやあ、ビックリですよ。
『フルート名曲31選』に入っている曲を、具体的に査定するなら…
シチリアーノ…× 名曲だけれど、これチェロの曲じゃん。
子守歌…× 名曲だけれど、これヴァイオリンの曲じゃん。
メヌエット~アルルの女より~…○ ただし、フルート独奏曲ではなく、オーケストラ曲だけれどね。
間奏曲~カルメンより~…○ ただし、フルート独奏曲ではなく、オーケストラ曲だけれどね。
春の歌…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
アンダンテ…△ とても良いフルートの曲だけれど、名曲と名乗れるほどメジャー作品じゃない。
歌の翼による幻想曲…× 名曲だけれど、これリートじゃん。
ナイチンゲール…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
パン!…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
メロディ…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
タイスの瞑想曲…× 名曲だけれど、これヴァイオリンの曲じゃん。
ガボット…◎ バロック名曲で楽器の指定が無いので、ぎりぎり◎です。
妖精の踊り…○ ただし、フルート独奏曲ではなく、オーケストラ曲だけれどね。
子守歌…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
春の海…× だいたい邦楽じゃん。
シチリアーノ…◎ バッハの曲ではないらしいですが、文句なく“フルート名曲”と言えるでしょう。
ポロネーズ…◎ “名曲”と名乗れる程有名な曲かどうかは意見が別れると思いますが…。
バディネリ…◎ “名曲”と名乗れる程有名な曲かどうかは意見が別れると思いますが…。
小舟にて…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
亜麻色の髪の乙女…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
小さな羊飼い…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
シューベルトのセレナーデ…× 名曲だけれど、これリートじゃん。
アベマリア…× 名曲だけれど、これフランス歌曲じゃん。
トロイメライ…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
ラルゴ…× 名曲だけれど、これイタリア歌曲じゃん。
白鳥…× 名曲だけれど、これチェロの曲じゃん。
金婚式…× 名曲だけれど、これオーケストラの曲じゃん。
ユモレスク…× 名曲だけれど、これピアノの曲じゃん。
インドの歌…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
熊蜂の飛行…△ オーケストラの曲だけれど、今やあらゆる楽器で演奏されて、元がオケ曲だと知らない人も多いので、むりやり「フルート名曲です」と言い張るなら…。
ハンガリー田園幻想曲…× 普通のクラオタは知りません。無名曲です。
…でしょ? “フルート名曲集”なのに、フルート名曲と呼べる曲は、7/31ですよ。つまり、フルート名曲と呼べるような曲は、世間には10曲程度しかない?
「いやいや、そんな事はないでしょう。31選に載っていない名曲だってありますよ」
その通りだと思います。モーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」とかチャイコフスキーの「葦笛の踊り」とかドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」などはそうでしょうし、その他にもまだまだあるかもしれません。
でもね、シューベルトの「しぼめる花」ですら、普通のクラオタは知りません。正直、バッハやヘンデルのフルート・ソナタだって、普通のクラオタは知らないと言っていいでしょう。ましてや、プランクやプーランクやライネッケのフルート・ソナタなんて、そんな曲が存在する事すら夢にも思わないでしょう。
「だからどうなんだ!」と言われると、返答に窮する私ですが、フルート名曲のあまりの少なさにビックリした私だったのでした。
まあ、フルート名曲にこだわらずに、名曲のメロディをフルートで吹いて楽しむ分には、問題ないし、むしろ無名なフルート曲にこだわるくらいなら、メジャーな他楽器の名曲のメロディを吹いてる方が、幸せになれそうな気がするので「フルートには名曲がない」と騒ぎ立てる方がヤボなのかもしれませんね。
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コメント
おひさしぶりです
ハンガリー田園幻想曲、無名曲ですか・・・[E:sad]
あの幽霊がどろどろ出そうな冒頭とか大好きなんですが(苦笑)
それはともかく、ある楽器の奏者だけに有名な曲というのは案外ありそうですね。
ピアノ弾きはピアノ曲しか知らない(汗)とよく言われますが、こういう傾向は他の楽器奏者にも言える気がします。
たとえばサン・サーンスの白鳥はチェロおたく以外の音楽愛好者の間でも有名ですが、ショパンのチェロソナタとか、やっぱりチェロを弾く人とショパおた以外には無名だろうし。
ただ、そうなると、学校の教科書やNHKの名曲アルバム(まだあるんでしょうか?)に出てくる曲が最強になっちゃいませんか。
あいかわらず話がずれてすみません。
https://www.youtube.com/watch?v=YEyKM13yf_4
ドビュッシーの「シュリンクス」もフルート吹き以外の人にとってはマイナーだと思いますが、とても美しい名曲だと思います。
正真正銘のフルート独奏曲なのに31選に載ってないのが不思議。
Yokusiaさん
ドビュッシーの「シリンクス」は“名曲”と言うよりも“難曲”だと、私は思います。よく趣味の方で、この曲を吹かれる方がいらっしゃいますが、どれもこれも音楽になっていないと思われます。つまり、この曲は「音を並べただけでは音楽にはならない」タイプの曲なんだと思います。まあ、ドビュッシーにはこの手の曲が多いですね(さすが、現代音楽に片足を突っ込んでいる作曲家の作品だけあります)。
>学校の教科書やNHKの名曲アルバム(まだあるんでしょうか?)に出てくる曲が最強になっちゃいませんか。
…かもしれませんね。あと、CM曲とか、『ジュピター』のようにポピュラー歌手にカバーされた曲とか、フィギュアスケートで取り上げられた曲とか…、冗談じゃなくてね。
まあ、これはある意味、仕方ないと思います。クラシック曲って、過去の音楽であって、現代に生きている音楽ではないので、クラシック曲を積極的に聞こうと思う人が少なくとも仕方ないし、普通に暮らしていて、クラシック曲を耳にするチャンスが少なくても仕方ないです。
どんなに良い曲でも、耳に届かない限り、愛されることはありませんからね。
クラシック系独奏楽器としてのフルートの悲しさは、作曲家たちに愛されなかった事だと私は思います。独奏楽器としては十分な能力を持った楽器にも関わらず、ピアノはもちろん、ヴァイオリンや声楽と較べて、あまりに不人気。まあ、チェロ程度の扱いかな…なんて個人的には思ってます。ショパンやリストやパガニーニのような、その楽器の事(もちろんフルートの事ね)を隅々まで知り尽くした有名作曲家が出現しなかった事…はもちろんですが、交響曲を書くようなメジャー作曲家たちに、フルート曲を書いてもらえなかった事が、返す返すも残念な事だと思います。
はじめて訪問させていただきました。ユニークかつオリジナルな視点からの記事、楽しく読ませていただきました。バックナンバーにもたくさん面白そうな記事がありますので、時折訪問させていただきたいと思います~
私は現在、トルコで箏演奏活動をしておりますが、日本、トルコまた様々な国で、フルート奏者と共演しておりますので、フルートに関する記事は興味があります:)
「トルコと箏(こと)」にトルコのトップフルートアーチストSefika Kutulerについて書きましたので、よろしければ、ご訪問お待ちしております。akkoto
久ししぶりにコメントさせていただきます。
先生からはエチュードしか課題として与えられていないとのこと。それは、H先生がよくないですよね(笑)。残念ながら、フルートのエチュードは、音楽的に面白いものは多くないと思います。
生徒が飽きないように工夫するのも、先生の役目だと思いますね。H先生は、確かカルチャースクールの講師でしたっけ。生徒が一人やめても給料は変わらないので、生徒の気持ちには、あまり考えが及んでいないのでしょうか。
私も、今、ある先生に付いて習っていますが、ずっと習い続けるつもりはないです。実は、そろそろ次を考えていたり。。。(笑)
akkotoさん、いらっしゃいませ。
トルコでお琴ですか! つまり“日の丸背負って音楽活動されている”わけですね、尊敬します。
>にトルコのトップフルートアーチストSefika Kutulerについて書きました
8月21日の記事ですね。さっそく拝見しました。世界のどこにでも素晴らしいフルート奏者がいらっしゃる事、うれしく思います。
それにしても、トルコの音楽事情はなかなかおもしろそうですね。私も楽しみに読ませていただくことにします。では、よろしく。
パスピエさん
>H先生がよくないですよね(笑)
うん、そうかもしれません(大笑)。とにかく、夏の合宿に参加しない限り、フルート名曲をやらせてくれないんです。私のように、夏合宿と仕事がモロ被りをしているような人は、ずっとフルート名曲をやらせてもらえないわけです。
で、以前、クレームではないですが、私も普通に「フルート名曲が吹きたいなあ…」と言ってみたところ、返事は「吹けばいいじゃない。たいていの曲は、吹けるんじゃないの? 出来上がったら、持ってくればいいよ。見てあげるよ。」とのお返事。つまり、レッスンじゃやらないけれど、遊び吹きで色々吹いてみればいいじゃない…ってわけですね。
「いやいや、レッスンで与えられないと、なかなか時間を割いてフルート名曲を吹こうという気になりませんよ」とクチから出かかりましたが、すんでのところで飲み込みました。だって、これって、自分の怠慢を言い訳にしているだけじゃない。実際、忙しくて時間がなくて、フルート名曲を遊び吹きする余裕なんてないけれど、その余裕がなくても何とかするのが“音楽を学ぶ熱意”ってヤツなんだなと思ったので、甘えた事は言ってられないって思ったわけです。
実際問題、私は、課題として与えられたエチュードだけで、手一杯という事実もあるし(涙)。フルート名曲を吹き始めたら、エチュードでの学習が止まってしまうわけで、それも本音ではイヤだなって思ってます。
もっと、たっぷりフルートに時間が使えて、もっと、どっぷりフルートに浸かる事ができたら、状況は違うんでしょうが…。短い自由な時間を、ブログとフルートと声楽で三分割して時間のやりくりをしているので、なかなか難しいんですよ。
でも、H先生の責任も、ちょっとあると思ってます(爆笑)。
そうですねえ・・・フルートって、天上の楽器ですからねえ。人間が美しい音で美しく演奏するのはめっちゃくちゃ難しい楽器なんですよね・・・。
古今東西、ピアノやバイオリンが弾ける作曲家さんはたくさんいても、まともに美しくフルートが演奏できる作曲家はめったに、というか、ほとんどいらっしゃらなかったのではないでしょうか。楽器専用の曲を作るにはその楽器の特性を知ってなくちゃダメでしょ?。なので、私は、専用曲が少ない理由は、フルートがまともに吹けてなおかつ作曲もできる人が、超少ない、まあほとんどいない、ってことだと思いますよ。
フルート曲作曲というとフリードリヒ大王がピコーンとしてしまうのですが。。。
某ブログで(貼って良いのか悩みましたので)お抱え教師?のクヴァンツがフルート協奏曲を300曲…とあったので、
youtubeでクヴァンツで探してみました……
Trio Sonata in C minor. Quantz
……耳馴染みのある曲はないかもですが、フルートのための曲はQuantzのおかげでたくさんある??(あくまでもハテナマークです、そこまで調べていないので)
こんばんは。
横レスで失礼します。
NHKの「名曲アルバム」は地デジに変わってから録画し始めて楽しんでいます。
http://www.nhk.or.jp/meikyoku/library/library.html
この放送で大好きになったのは、武満徹の「小さな空」とデュファイの「うるわし ばらの花」です。どちらも合唱曲ですが、とんでもなくすごいです。
フルートの曲ではモーツァルトの「フルートとハープのための協奏曲」が放送されましたが、ランパル&ラスキーヌを聴いていたこちらにとって、パリの風景はいいのですが・・・
「フルートはバロックと近現代のレパートリーしかないチンケな楽器」と言い放った某フルーティストがいらっしゃいますが、私もほぼ同感です。
発表会のレパートリは
J.S.バッハとヘンデルのフルートソナタ集のベーレンラーター版と
http://www.amazon.co.jp/Flute-Music-French-Composers-Various/dp/0793525764
Flute Music by French Composers
があれば10年以上曲に困ることはありません。こちらも持っているだけで全曲吹いたわけではありません。
音楽史は和声とか楽曲の歴史をきちんと整理したいとおもいつつ手つかずのままです。現代につながるクラシック音楽の始まりは、単旋律のグレゴリア聖歌、その後いろいろあってラモーの和声理論に至るのでしょうが、ここで管楽器はどうだったのでしょうか。
オーケストラが出来て、そこにたまたまフルートも位置を占めることができて、今に至る、ような感じがしています。
だりあさん
>ピアノやバイオリンが弾ける作曲家さんはたくさんいても、まともに美しくフルートが演奏できる作曲家はめったに、というか、ほとんどいらっしゃらなかったのではないでしょうか。
それは正解ですね。多くの作曲家たちは、ピアノとヴァイオリンは嗜んだようですが、フルートまで嗜んだ方は、ほぼ皆無です。
>専用曲が少ない理由は、フルートがまともに吹けてなおかつ作曲もできる人が、超少ない
うん、私、納得しました。きっと、そうなんでしょうね。
YOSHIEさん
クヴァンツはおっしゃるとおり、大量のフルート曲を書いたそうです。きっと、丁寧に探せば、素晴らしい名曲もたくさんあるんでしょうが、その評価はまだですね。…って言うか、評価される時はやってくるのでしょうか? まずそこが疑問です。
無名な作曲家の無名な名曲なら、フルートと言えども、それなりにあると思うのです。でも、それじゃあ、単に“フルート業界のみに流通する名曲”であって、それはそれで立派ですが、世間と言うか、普通のクラオタにも通用しません。それでもいいと言えばいいのですが、私は、それじゃあ、個人的に寂しいなあって感じているだけなんです。
tetsuさん
“Flute Music by French Composers”は、姉様がレッスンで使用しているので知っています。
>「フルートはバロックと近現代のレパートリーしかないチンケな楽器」と言い放った某フルーティストがいらっしゃいます
“チンケ”はどうかと思うけれど、H先生も似たような事をおっしゃってますよ。「フルートのレパートリーは、ドイツ・バロックとフレンチ・モダンしかない」ってね。そして「ロマン派のフルートを堪能したかったら、オーケストラを聞きなさい」ともおっしゃいます。「ブラームスは、フルートのソロ曲は書かなかったけれど、フルートのソロは、そのオーケストラ曲の中でたくさん書いてますよ」とおっしゃってました。私は、そこまでオーケストラに詳しくないのですが、先生がおっしゃるんだから、きっと本当なんでしょうね。