不定期連載の三回目です。今回は、ちょっと屁理屈をこねてみました。
一体、どこからがゴールドフルートなのでしょうか?
フルート界ではよく使われる「ゴールドフルート[英語的には Golden Flute だから、ゴールデンフルートなのでしょうが、業界の慣習に従って、ゴールドフルートと呼称しておきます]」ですが、本当はどのあたりからゴールドフルートと呼ぶべきでしょか?
リップ&ライザーのみゴールドのフルートは、ゴールドフルートとは呼びません。すべてのパーツがゴールド製のフルート(総金)は、もちろんゴールドフルートです。では、管体のみゴールドでメカ銀のフルートは…ゴールドフルートと呼ぶようです。頭部管のみ金製で、その他は銀製のフルートは…あまり見ませんが、ゴールドフルートとは呼ばれないようです。つまり、管体金、または総金のフルートをゴールドフルートと呼び、頭部管金またはリップ&ライザーのみ金製のフルートはゴールドフルートとは呼ばないようです。
次に金の含有量について。アルタスフルートのカタログによると、フランスでは18K以上でないとゴールドと呼ばないそうで、ならば14K以下のものは、ゴールドではなくゴールド合金という事になりますが、14Kや9Kや5Kのフルートを“ゴールド合金フルート”と呼ぶ人はいなく、みな“ゴールドフルート”と呼びますので、フランスはともかく、ここ日本では、たとえ5Kであっても、金色でゴールドを含んだ金属でできたフルートは“ゴールドフルート”なんだと思います。なので、たとえ金を含んでいても、見かけが金色でないフルート(G10フルートなど)はゴールドフルートとは呼ばれません。
では見かけが金色をしていれば、みんなゴールドフルートなのかと言うと、それは違うような気がします。ポッドメタルフルートに金色のペンキを塗ったフルート(チャイナ製にはよくあります)は、見かけはゴールドフルートだけれど、これをゴールドフルート呼ぶ人は、少なくとも我が国にはいないと思います。また同様に、金メッキのフルートも、確かに見かけは金色だけれど、たとえ24Kでメッキをしていたとしても、やっぱり“メッキのフルート”であって、ゴールドフルートは呼びません。いくら見かけがゴールドでも、中身はゴールドではないわけですからね。銀メッキした洋銀フルートを、誰も“総銀フルート”とは呼ばないのと同様です。
さて、難しいのは、パウエルから出ているオーラマイト合金のフルート。それらのうち、9Kの金とAg925の銀を張り合わせたものは、外側が金色だし、実際に9Kだし、一見するとゴールドフルートですが、これは“ゴールドフルート”と呼んでいいのでしょうか? 私個人的には“ゴールドフルート”と呼んであげたい気もします(だって少なくとも表面は本物の金だもん)が、やはり“オーラマイトフルート”であってゴールドフルートとは呼ばない方がよさそうな気がしますが、いかが?
結論。管体部分の金属素材が金または金合金であって、なおかつ見た目が金色であるフルートの事を、我が国では“ゴールドフルート”と呼ぶ…みたいです。
一体、どこからがプラチナフルートなのでしょうか?
金の話が出たので、ついでにプラチナ(白金)フルートについても考えてみましょう。
総白金フルートというのは、この世に存在するのでしょうか? 私が大雑把に見た(本当に大雑把なので見落としがあるかもしれませんが)ところ、総白金フルートを見つけることはできませんでした。なので、プラチナフルートとは、管体白金フルートの事を言うので正解だと思います。
でも、プラチナメッキの総銀フルートの事を“プラチナフルート”って呼んでいませんか? おそらく“プラチナメッキフルート”と呼ぶべきところ、いつしか“メッキ”という言葉が落ちてしまい、そのまま通用するようになってしまったのではないかと推察します。
だいたい「私のフルート、プラチナだから…」というセリフを聞いたら、ほとんどの人が『ああ、PTP(プラチナメッキフルート)だね』と思い『おお、総白金フルートか!』とは思わないものです。
ここでおもしろい事に気付きました。それは素材によって、認定されるレベルが違うという事です。具体的に書きますと…。
素材が『銀』の時は、総銀(すべてのパーツが銀製)の時に、シルバーのフルートの扱いを受ける。しかし、素材が『金』の時は、管体金であれば、メカがシルバーであっても、ゴールドのフルートの扱いを受ける。さらに、素材が『白金』の時は、管体やメカがシルバーであっても、それらにプラチナコーティング加工(つまりメッキですね)がされていれば、プラチナフルートの扱いを受ける。
いやあ、おもしろい。実におもしろい。筋はまったく通っていないし、理論的でもなんでもないけれど、そういう慣習って、おもしろいなあと思います。
なぜ、そうなったのかは、もちろん、費用対効果の面もあるだろうけれど、案外、楽器としての実用性を考えた時には、これくらいがちょうど良いのかもしれませんね。これについては、また後日、考えるかもしれません(笑)。
コメント
言われてみれば、私のPTPも仲間内ではプラチナフルートで通っています。でも、そう言われた後、私は必ず「いや、メッキであることを忘れないで」と補足してしまいますが(笑)万が一間違って1000万円クラスの楽器を持っていると思われると怖いので(苦笑)
>おそらく“プラチナメッキフルート”と呼ぶべきところ、いつしか“メッキ”という言葉が落ちてしまい、そのまま通用するようになってしまったのではないかと推察します。
それもあるかもしれませんが、ゴールドの場合と違って、プラチナの場合メッキのフルートの数が圧倒的に多いからというのもあるのではないでしょうか?逆に、ゴールドの場合はメッキより管体(またはメカも含めて)がゴールド(またはゴールドの合金)の楽器の方が圧倒的に多いように思います。
というか今気付きましたが、メーカーの標準モデルで金メッキって、なぜかあまり無いですよね?特注だったり、買った後で個人で修理工房などに頼んでかけてもらう場合が多いように思います。プラチナメッキは、(作っているメーカーには)ちゃんとそういうモデルがあるのに。
おはようです。
今日は、遅刻してしまいました。
14kや9kは、当然、シルバー地金に金メッキでしょう。総金製だと素材的に柔らかくて、使い物にならんでしょう。マジで!フルートは、シルバーになると音質が柔らかく低音がいい音が出てます。で、14kとか9kの金メッキは、て言うか、試奏したことがないのでコメントできません。(笑)
テナーのネック(マウスピースと本体をつなげる部分。)がシルバー製でピンクゴールドメッキ(自分の持っているフルートより高額)したのを持ってますが、見てくれは一番、音質は柔らかいですが、結構息を入れないと良い音がでません。(泣)
14kや9kの金メッキ製フルートはどうなでしょう?(謎)
コツコツ、お金を貯めましょう。(笑)
>詩音さん
おっしゃる通り、流通量の問題でしょうね。なにせ、プラチナ(白金)は高価ですからね。おそらく24Kよりも高価じゃなかったかな? 24kの総金フルートで約1000万円ですから、総白金フルートが存在したら、24Kと同額がもっと高価になってしまいます。「水と安全はタダ」という神話のある日本とは言え、1000万円クラスの楽器は…盗難が怖いですねえ…。
>メーカーの標準モデルで金メッキって、なぜかあまり無いですよね?
そうですね。ただし、カタログに載せていませんが、我が愛するアルタスでは、金メッキ済みのフルート(A1107GP:一見、総金にみえる管体銀モデル)の発売を開始していますし、フェアなどに行くと、それ以外にも多くの金メッキフルートをラインナップしています。最近の傾向なのだと思いますが、金メッキフルートにも、それなりの需要があるのでしょうね。やっぱり不況が影響しているのでしょうかね?
>はっチャンさん
>14kや9kは、当然、シルバー地金に金メッキでしょう。
いやいや、それが違うんですよ。14Kも9Kもメッキではなく、地金に金(金合金?)を使用しています。当然、素材的には柔らかいですよ。よく「へこんだ」「曲がった」「傷がついた」と叫んでいる人がいますからね。程度の差こそあれ、総銀フルートも柔らかい(私は自分の指力でフルートのメカを曲げてしまいました:笑)ので、似た様なものだと思ってます。
金の音質は…一般的に“強い”感じがします。低音も高音もくっきりで出ますし、音の立ち上がりもかなり良いです。強弱の幅がかなり広く取れるので、表情豊かな演奏ができると思いますが…銀ほど優しくもなければ、まろやかでもないので、そこらへんは好みの問題だと思います。近くで聞くよりも、離れた場所で聞いた方が美しく聞こえるモノが多いので、ある程度の大きな会場で演奏する人には、良い素材なのだと思います。
あと、金は銀よりも、奏者にパワーがないと良い音が出ないそうです。そこらへんはサックスと一緒かもしれませんね。
金メッキのフルートも何本か試奏しています。メッキの無いものと比べると、音は多少、金っぽく変わります。金メッキにも色々とあるそうですが、大抵の場合は9Kあたりのメッキが多い様ですよ。外国製品の場合は、メッキと言いながら塗装のものもあるそうで…怖いですねえ。
金メッキの既製楽器も増えてきているのですか?それは知りませんでした。
金にしてもプラチナにしても、メッキすれば確実に楽器の傾向が変わります(変化の感じ方は人にもよるでしょうけど)。なのになぜプラチナはあるのに金は無いのかと思っていましたが、金はプラチナと違って9Kや14Kなど比較的価格が低い帯域に楽器があるから、金のテイストが欲しいなら金メッキよりこれを買って欲しいとメーカーが考えているのかなと自己完結しかけていました。しかし金メッキの楽器が既製品として今後増えてくるならば、おっしゃるとおり不況が影響しているのかもしれませんね。
あ、それに一応希少な金属ですから、だんだん材料の在庫量が減ってきているのかも(笑)。残念ながら金も無限にあるわけではないですし。となると、いずれはゴールドフルートの購入をと考えているなら早くしないと!これは、買いたいけれど家庭内財務省が予算を回してくれない人には、大臣説得のよい口実になるかもしれませんねぇ(笑)
そういえば、金メッキという技術自体はオーディオやビデオケーブルの端子など他にも多く使われますし、比較的馴染みのある言葉ですが、プラチナメッキは日常的にあまり馴染みがない言葉ですよね。だから金メッキは略して言わないけどプラチナメッキはメッキを省略して言っても違和感がないのかもしれないとふと考えました。
すとんさん、こにちわ
金:白金、田中貴金属のホムペから、
http://gold.tanaka.co.jp/first/chisiki/chisiki_04.html
うえのページの下方にグラフで比率が載っています
プラチナflは、宝飾品に入るのですね・・(金flも、宝飾品だと思っていますw
で、金に比べて圧倒的に供給が少ないそうです
「銀の笛」って言葉が好きです (^^)ニコ
>詩音さん
そうですよ、金メッキの既成楽器も少しずつですが増えてます。ただ、紙のカタログに載せないので、情報が行き渡らないのだろうと思います。おそらくメーカー的には、まずは大都市圏で試してみて、行けそうだと判断すれば、カタログに載せて全国展開って道筋で考えているのかもしれません。私はアルタスに注目していますが、他のメーカーでもそういう傾向がないとは言い切れません。東京の楽器店だと、アルタス以外でも地味に金メッキフルートの既製品(おそらく少ロット品)がポツンと販売されていたりしますしね。
金は9Kや14Kなどという比較的安価な(それでも生活感覚で言うと、相当高価な)フルートはありますが、金メッキにすれば、もっと安価で入手できますから、それなりの需要があると思いますよ。不況ですから…。おそらく、ドゥローンの楽器をソルダードに変更するのと変わらない価格で、銀メッキの楽器を金メッキにする事ができると思います。9Kの楽器を買うほどの財力はないけれど、金っぽい音色が欲しい…という人には良い選択肢になると思います。
もっとも、たとえ金メッキであれ、フルートが売れる日本って、裕福なんだと思います。本当にヤバくなったら、みんな貴金属でできているフルートは買わなくなりますよね。洋銀フルートや真鍮フルートでもぜいたくに思える時代が、やがてやってくるとしたら、それはとても悲しい事です。そうなる前に、政府はきちんと手を打って欲しいと思います。
私はPTPでも総銀フルートの括りとして認識していますが
中には「プラチナ」と呼んじゃう人もいるのでしょうか?
確かに金よりプラチナの方が高価ですし
よしんばメッキであっても「十分やった感」が
プラチナにはあるのかもしれませんね。
人として憎めない感じがします。
>ととさん
私もゴールドフルートは宝飾品だと思ってます。少なくとも、18K以上は宝飾品扱いでいいんじゃないでしょうか? もちろん、宝飾品であって楽器でないとは言いません。宝飾品であり、楽器である…でいいんじゃないかなって思ってます。
それにしても、金も白金も、希少な金属なんですね。金も高価だけれど、白金がさらに高価な理由も、このグラフをみれば一目瞭然ですね。そう考えると、実用品としてのフルートは、やはり総銀モデルどまりかな?
私も「銀の笛」って言葉、大好きです。
>うぉぉんさん
>中には「プラチナ」と呼んじゃう人もいるのでしょうか?
結構いるみたいですよ。私の狭い交友関係にもそこそこいますし、あんまり行かないけれど、笛吹きさんたちがいっぱい集まっている所に行くと、PTPを「プラチナ」と呼んでいる人たちがいます。もちろん、悪気も何にもなくて、単純に「プラチナメッキフルート」の「メッキ」または「メッキフルート」という言葉を悪意なく省略しただけだと思ってます。
>メッキであっても「十分やった感」が、プラチナにはあるのかもしれませんね。
これはマチガイなく、ある、と思います。そういう誇らしげな気持ちが言葉の端々からにじみ出る方をリアルに知ってます(笑)。何しろ、プラチナメッキって高価じゃないですか? 下手すると、安価なフルートが買えるほどのお値段が余計にかかるわけで…そりゃあ、やった感は出ても何の不思議もないです。
金メッキだって「十分やった感」で舞い上がっちゃう人もいるわけだし、やはり高価な金属をメッキしたフルートは、オーナーの気持ちを舞い上がらせる何かがあると思います。その舞い上がった気持ちのおかげで、熱心に音楽に取り組み、練習が楽しくなるなら、それはそれで良いことだと思ってます。
ま、私自身は、楽器はメッキではなく、無垢な金属の方が好きです。単に好みの問題ですけれど。
社団法人 日本金地金流通協会
http://www.jgma.or.jp/
Q13 金やプラチナはあとどのくらいありますか?
http://www.jgma.or.jp/library/l-01-13.html
ととさんと被ってしまいましたね。
失礼。
>ひょっとこさん
ううむ、ととさんのところでも分かりましたか、金も白金も希少な金属なんですね。今日明日、これらの金属の値段が上がるわけでもないし、絶対にゴールドフルートでなければならない理由もないし、だいたい先立つものがないので「へー」って感じでいる私です。
でも、ゴールドフルートって、投機の対象になるのかしら。そう思ったら、音楽以外の理由で、ぜひ欲しくなりました(笑)。
すとんさん!!投機の対象にはならないでしょうw
宝飾品+工芸品だと思うので、貴金属の価値以上の美術品としての値段が入ってる
しかし、バイオリン(すとらでぃばりうす)のような古楽器を愛でる習慣が、fl.にはないそうです。。
金色が美しい楽器は金管楽器w 木管のfl.はいつまでも「銀の笛」で(・_・)ok
>ととさん
>宝飾品+工芸品だと思うので、貴金属の価値以上の美術品としての値段が入ってる
つまり「宝飾品として処理をすると、損するよ」って事ですね。ガッテンです(何が?)。
>しかし、バイオリン(すとらでぃばりうす)のような古楽器を愛でる習慣が、fl.にはないそうです。
一部のお好きな方は古楽器を愛好していますが…管楽器の場合、ピッチの問題があるんですよね。オケなどの標準ピッチって時代によって違うわけで、一般的な傾向としては、時代がこちらに近づくほどに標準ピッチが高くなっているそうです。つまり、古楽器は今の楽器よりも、標準ピッチが低めに製作されているわけで、程度の差こそあれ、どれもこれも現代の音楽シーンで演奏するには、困難な事になってしまっているという事があります。
あと、他の管楽器はよく分かりませんが、フルートって、実はまだ楽器としては、未完成なんじゃないかって思う事があります。未完成という言い方がアレなら、発展途中? キーシステムを始め、使いやすい道具として、まだまだ解決しないといけない諸問題を抱えていると思います。その点ヴァイオリンを始めとする弦楽器は、すでにバロックの時代にほぼ完成されているので、ストラディヴァリウスのような骨董品(失礼)でも、現代の音楽シーンに十分適応できるという利点があります。
そこらへんが違うのではないかと思います。
>木管のfl.はいつまでも「銀の笛」で(・_・)ok
少なくとも、現代フルートを開発したベーム氏は色々な素材を試した上で「フルートは銀で製作する」と決めたのですから、銀無垢がフルートの標準仕様である、とは言えると思います。
すこし、イラっとさせたようですみません m(_ _)m
投機を考えるのなら「塊(いんごっと)」のままが余分な手数料が掛からなくて好いと思います 加工品だと純度の検査・溶解の手数料が掛かるようです
>ととさん
>すこし、イラっとさせたようですみません m(_ _)m
??? 私は思わず自分のコメントを読み返してしまいました。全然、「イラっ」どころか、結構、楽しんでいるつもりですが…、余計な気遣いをさせてしまったようで、こちらこそ、申し訳ない。
フルートの値段は、その材質そのものの値段(ととさん言うところの“インゴット時の値段”)に、職人さんの仕事料が加わっていると思います。で、フルートの価格に対して、この職人さんの取り分の占める割合って、かなりの高率です。だから、フルートを投機対象として考えた場合、職人さんの分がまるまる損失になってしまうと思いました。
>加工品だと純度の検査・溶解の手数料が掛かるようです
これは思い至りませんでした。確かにかかりますね。
そう考えると、フルートは(最初から分かっていた事ですが)、たとえゴールドであっても投機の対象にはなりづらそうですね。ゴールドフルートなど持っていませんが、それでも何となく「損した」ような気分です(笑)。