さてさて、アルテの後は、ポピュラーソングの練習である。これが結構楽しいのである。
まずは1曲目「サマータイム(Summertime:ガーシュウィン)」でございます。
ガーシュウィンが作曲した、オペラ「ポーギーとベス」の曲なので、楽譜は当たり前だが、きちんとある。しかし、各種音源に当たってみたけれど、誰も決してこの楽譜どおり歌っていなかったという、何ともおもしろい曲です。
その事を先生に話したら「そう言えば、確かに誰も譜面通りに演奏しないわねえ…」と妙に納得しておりました。ポピュラーのそういうところが、私は好きです。
とは言え、私は初学者なので、なるべく楽譜に忠実に参ります。
楽譜に忠実…をやると、実に味気ないのですよ。味気ないので、ちょっとリズムを揺らしてみると…すぐに道に迷って、楽譜を見失います。
そんな時は、「譜面通りに演奏する必要はないけれど、小節は必ず合わせてください」と注意を受けます。どういう事が言うと『一拍一拍の長さをきちんと守る必要はないけれど、小節の区切りはきちんと守ってください』これを言い換えると『メロディは変量的に演奏してもいいけれど、和音は定量的に演奏してください』という事です。言い換えた方が、かえって難しくなったか(笑)。
これは前にやった「リズム変換の基本のキ」で勉強したことと通じる話です。小節の時間的な長さを定量的にビタッと合わせて演奏するのが、秘訣って奴ですね。
とりあえず、一小節の時間的な長さに気を使いながら演奏していたら、先生が突然「頭の中でメトロノームを小節の頭で鳴らしているでしょう」と言われました。「いえいえ、小節の頭ではなく、四拍子で鳴らしてます」というと、ご自分のメトロノームを取り出して、鳴らしながら演奏を始めました。でも、聞いているとなんだか変ですが、かっこいいです。
メトロノームの速度を通常の半分ぐらいにして、二拍目と四泊目で「ピッ」と鳴らしながらの演奏でした。「こういう風に、メトロノームを二拍目と四拍目で鳴らして演奏するのです」と言われました。これが、なんだか変だった理由ですね。
メトロノームを鳴らしたままで「では、2-4のリズムで演奏してください」と言われても…何もできないですわな。そこで、メトロノームのリズムを体の中がら切り離して、自分の体内の別のメトロノームに合わせて演奏したらOKでしたが、これでは全くダメなのは素人でも丸分かり。
うまく2-4のリズムって取れません。うまく取れないので、先生と一緒に吹いてみました。やっているうちに、何となく分かってきました。
「よく分からなければ、足でリズムを踏んでください。1と3をカカトで、2と4をつま先で。それでメトロノームの音が2-4に来るように踏みながら、フルートを吹いてください」 やってみました。難しかったです。
何が難しいかと言うと、メトロノームを聴いちゃうと、2-4ではなく、1-3のカウントを無意識に取ってしまうこと。そこを何とか越えても、2-4のリズムを聞いちゃうと、メロディを四拍子では吹けなくなること。メロディの細かい部分、とくにリズムを少し変えないと2-4では吹けません。逆に言うと、同じメロディーでも、四拍子ではなく、2-4のリズムで吹くと、違って聞こえるというわけです。2-4のリズムだと、少しメロディーが跳ねるような気がします。
「2-4のリズムが難しくて、すぐにできなければ、家で足踏みをしながら練習してきてください。ポピュラーは、特別の指定がない限り、2-4のリズムで吹くように心がけてください」 ラジャーです。
この2-4のリズムはアフター・ビートとか、オフ・ビートとか、いうものらしいです。
とにかく、メトロノームと格闘しながら、吹きましたが、「では、仕上げましょう」の一言で、ピアノと合わせると、割と簡単にできました。ピアノと合わせる時は、リズムキープをピアノに任せて、自分はそこに載っかって吹くだけだから、割と簡単にできるんだな。つまり、私の弱点は、リズムキープという点かな? とにかくリズムは理屈ではないのだから、体に入れないとお話になりません。家で練習してこよおっと。
二曲目は「メロディー・フェア(Melody Fair:ビージーズ)」でございます。
こういうカワイイ系の曲は、オクターブ上げ(記譜上の1オクターブ上で吹くこと)が基本だそうです。そうなると、一番高いところが、高音のソになりますが、この辺の音を柔らかく出すのもポイントなんだそうです。
「この曲は譜面通りに吹いても大丈夫ですよ」と言われ、まずは一人で吹いてみました。ところが、さっそくダメが出ました。「ベターと吹かないでください」。“レガート”に吹いていたつもりなんですが…“ベターと”ですか。
先生がおっしゃるには「こういう曲は裏を感じて吹くことが大切なんですよ」とおっしゃって、模範演奏です。同じように、楽譜通りに吹いているのに、やっぱり先生の演奏はカッコいいです。これが裏を感じながらの演奏ってやつですか。
さっそく、先生がメトロノームを取り出しました。今度は四拍子です。しかし、演奏とメトロノームがちょっとズレてます。メトロノームの音が、ちょうど裏、つまり“0.5拍目、1.5拍目、2.5拍目、3.5拍目”といったところで、ピッピッピッ…と鳴るんですよ。これが裏を感じるという奴ね。ちょっと聞いた感じは、リズムがつまづいているような感じなんですが、このつまづくようなリズムに載せて演奏すると、楽譜通りに吹いても、メロディがかっこよくなるんですねえ。不思議不思議。
「では、このメトロノームに合わせて吹いてみてください」って、ムリ! そこで「これはさっき(2-4のリズムね)よりも難しいので、一緒にやってみましょう」と言って、またも二人で一緒にやると…できるんだなあ、これが。「このリズムを忘れないうちに、仕上げましょう」と言って、ピアノと合わせてOK。
どうやら、2-4のリズムにしても、裏を感じるリズムにしても、一応、私の中にあるリズムのようなのだけれど、問題は、それを意識的に引き出す事ができないって事かな? 自分で引き出せないから、先生と一緒に吹いてみたり、ピアノと合わせたりして、うまく引き出してもらえると、なんとかなるわけだ。
しかし、リズムって難しいね。こりゃあ、独学じゃ勉強できないわ。
さて、三曲目は「サウンド・オブ・サイレンス(Sound of Silence:サイモン&ガーファンクル)」です。この曲のメロディーはしごく簡単。リズムは「裏を感じて」演奏すればいいわけで、いくら裏を感じるのが難しいとは言え、今やったばかりなので、この「裏を感じる」のも何とかなりました。すぐにピアノで合わせて仕上げをしました。
最後に先生からダメというか、注意が一言。「ロングトーンが多い曲だけど、ロングトーンをただ漫然と吹くんじゃなくて、せっかく譜面にコードが書いてるあるのだから、ロングトーンはアルペジオ(分散和音のことね、念のため)にして吹いてみてください」
これも模範演奏付き。格好良かったよお~。
でもね、私はまだアルテの7課が終わったばかりなんですけれど…。ギターならこの程度のアルペジオは目をつぶっても演奏できるけれど、フルートでは、まだまだできません。「すぐにはできなくても、これができるようになると、フルートのレベルが一気に上がるので、ぜひトライしてみてください」と言われました。たしかにフルートのレベルは上がりそうだな。
こんな調子で、本日のポピュラー・セッションレッスンは終了。
いやあ、今日は楽しかったわ。楽しいだけでなく、いっぱい学んだわ。すごいすごい、なんかお得感満載なレッスンでした。
この三曲は、これでおしまい。次はまた別の曲を用意すること。そこで、次のポピュラーのレッスンのための曲を軽く打ち合わせをしました。次はもう少し、メロディアスな曲を用意しましょう。
とにかく、ポピュラーソングに関しては、数多く演奏してみる事が肝心だそうです。
一曲を熱心に緻密に仕上げる必要は全然ない(熱心に緻密に仕上げるのは、クラシック系の曲でやる)。ミスブローや演奏中に落ちる事があっても仕方がない。ただし、ミスブローをした場合は、そのミスがミスではなく、カッコいいアドリブに聞こえるように、上手なリカバーをすること。演奏中に落ちた時も、あわてずに、いかにもタメてましたみたいなフリをして、すぐに戻ってくること。そういう訓練もとても大切だし、そういう訓練をするためにも、ドンドン合わせの練習が必要というのです。ま、レッスンで数多くのプチな修羅場を経験しておけば、腕が磨かれますってことですね。
なので、ポピュラーは時間をかけずに、軽く譜面に目を通したら、ドンドンやってみる、吹いてみるという姿勢で行きましょうとのこと。はい、分かりました。
さあ、次のポピュラー・セッションのレッスンでは、何を吹こうかな…。今から楽しみ。
コメント
なるほど~。メトロノームを裏拍で取るのですね♪
今度、ポピュラー系を練習するときにやってみます(^^)
サマータイム、大好きな曲でたまに吹くのですが…棒吹きでダメダメです。
まるで子供が吹いているみたいになってしまう。。。
また気が向いたら練習しようっと。
>小夜子さん
はい、メトロノームを裏拍で取るのです。簡単にできる人には簡単なことでしょうが、私はまだまだです。
この練習を始めてから、色々なポピュラー系の音楽を聴いて思うことは、バスドラのキックは表拍だけど、スネアのショットは裏打ちが多いなあということ。だから、小節の区切りはバスドラを聴いて、個々のリズムについてはスネアを聴けばいいのだ…と分かったのに、なぜできない! ああ、分かっちゃいるのに、全然できないというのは、悲しいです。
サマータイムは、太っただみ声の黒人シンガーが酔っぱらいながら歌っている気分で吹くと、いい感じにできますよ。おそらく本当は、フルートではなく、サックスで吹く方が、いい按配な曲だと思います。
ガーシュウィン…裏始まりが多くて、超・苦手です。今「パリのアメリカ人」で苦戦しております(笑)
それでもドラムスクールへ通っていた事もございますのよ…おほほ(ぉぃぉぃ) 日本人って「裏を感じる事」苦手なんですよねぇ~リズム音痴のワタクシが若い高校生について行かれましたから、、、おじさま達は昔いたずらに叩いていたのでしょう、、、徐々に脱落・・・
それでも無意識に2&4拍は抜いてるんですね(^^;; クレッシェンドなどはその拍を意識しないと「段々」になります(苦笑)
色んなアルペジオ、ささっと吹けると強みですよねー!
音符見失っても構成和音の音を吹いて誤魔化します。演奏中は音楽を止める事は御法度なので、、、アドリブで繋いじゃってる人いますよ。
とっさの機転が利くときはやれる時もありますが、音抜いちゃう時の方が多いかなぁ←本当は反省材料ですからねっ!!(笑)
>めいぷるさん
音頭などの民謡にせよ、演歌に代表される昔の歌謡曲にせよ、私が子どもの頃に聴いて、体に染み込んでいる音楽って、みんな1-3のリズムなんですよねえ。そりゃあ、裏を感じるのが苦手なのも仕方ないでしょ。
J-popのような、新しめの音楽も、よくよく聴いてみれば、1-3のリズムの曲が多いし、人気を得るのも、そのあたりの曲です。裏系(というのもなんだけれど)は、ダンスミュージックに多いかな?って気がします。やっぱり、テクノとかハウスとかは裏だねえ…。
>ガーシュウィン…裏始まりが多くて、超・苦手です。
ジャズ……なんでしょうね。
アルペジオは、すぐに取りかかるつもりはありませんが、いずれはやっつけたい課題です。アルペジオが簡単にできると、即席のフルートアンサンブルなどで、ササっと伴奏ができて、かっこいいものね。
ちなみに、笛先生は、アルテでも何でも、私がフルート吹いていると、たまにアドリブで絡んできます。あれが、かっこよくってねえ…。あこがれです。
カカトとつま先でのリズム取り、これすごくいいです! 書いてくださってありがとうございます。
クラシックのみの先生では教えてくれないことかもしれませんね。
>野鳥さん
>クラシックのみの先生では教えてくれないことかもしれませんね。
と、言うよりも、身体でカウントを取ったら、怒られるんじゃない? クラシックの世界だと、現代音楽以外は、おそらくカウントを取るのではなく「リズムを感じて、感じたリズムのままに、演奏しなさい」とか何とか言うんじゃないかな? あるいは「指揮をよく見ろ」かな?
カカトとつま先のリズム取り、教わった私は、実はやってません。と言うか、うまく足が動きません(笑)。結局、私はメトロノームのカウントを2と4で数えたり、あるいはウラにカウントして、前回のジャズのレッスン時に習った、リズム変換で表の拍を割り出して、そのカウントで音楽に入ってます。私の場合、リズムへの入り方が問題で、いったんリズムの中に入っちゃうと、2-4でもウラでも、うまくリズムが取れるので、とりあえず、今はこのやり方です。
でも、それも速い曲だと、なかなかうまくいかないので、やっぱり足を鍛えて、カカトとつま先でリズムを取った方がいいかなあ…と思う昨今です。