二重唱が終わると、発表会の第一部はそろそろ終わりです。私は気持ちを切らさないように、楽屋には戻らずに(かと言って、舞台袖にいては邪魔になるでしょうから)舞台裏の通路にいました。体操したり、飲み物を買いに行ったりしているうちに、第一部は終わり、休憩も終わってしまいました。本番の舞台裏なんて、案外、時間は早く進みますし、忙しいものです。
第二部では(今度こそ2番目の出演順なので)早めに舞台裏に待機していなければいけません。前の人の演奏を聞きながら、妻の応援を受けて、最後の自分の出番です。
実はこの時の私は、少し油断していたんだと思います。
これまで何度も声楽発表会に出演していた私ですが、未だかつて一度たりとも、発表会を無事に歌い終えた事なんて無いのです。それが今回はここまで、小さな事故はあったものの、まあ無事にここまで歌ってきたわけで…もしかしたら、人生で始めて、無事に発表会を終えることができるかもしれない…なんて思うと、ちょっと気持ちがウキウキしてしまったのかもしれません。
好事魔多しです。舞台には魔物が棲んでいるのです。
さて、自分の出番です。最後の曲、ドニゼッティ作曲「愛の妙薬」のテノールアリア「Quanto e bella/なんと彼女は美しい」です。短いアリアですし、難しい箇所は何箇所かありますが、すべて練習でクリアしてきました。備えは万全です。
で、舞台に出て、ピアノに合わせて歌い始めて、割りとすぐに、なぜか頭の中が真っ白になってしまいました。集中力がいきなり途切れて、自分がどこで何をしているのかが分からなくなり…当然の事ですが、歌が止まってしまいました。
止まった瞬間に我に返り「こりゃヤバい!」となり、頭の中ではエマージェンシーコークが鳴りまくりました。パニック状態に陥りました。やっちまいました。
その後は、とにかく歌を続けることだけに集中し、歌詞は…あっちこっちで間違いまくりの作詞しまくりとなりました。心臓はバクバクで、歌詞の正しさうんぬんよりも、とにかく音楽を止めない事を最優先にしました。
結局、落ち着いたのは、カデンツァ直前です。もう、曲も終わりじゃん! いやあ、何やっているの。
カデンツァの入り口で、やっと落ち着いたものの、カデンツァ自体の出来は…まあ、こんな感じです。これでも、今の自分の全力は出せたと思います。曲そのものはグダグダになってしまいましたが、自分としては最大難所のカデンツァがここまで仕上がったので、まあ良しです。
実際の歌唱はこんな感じです。取り乱している私を、笑ってやってください。
実はゲネプロのリハーサルの方がちゃんと歌えているで、そっちと差し替えてアップしてしまおうかと悪魔の囁きが聞こえないでもなかったのですが、やはり正直が一番ですからね。ミスった歌唱ですが、そのままアップしちゃいます。はい、ブログで偉そうな事を書いていても、私なんてこんな程度のヤツです。
素人でも分かるような大事故を起こしてまったので、そりゃあもう、落ち込みながら舞台袖に戻りました。先生からは、普段絶対間違えないところでミスをしてしまったので心配しまくられました(そりゃそうだよね)。
結局、今年も無事には終われなかった私です。ま、これが通常運転と言えるのかもしれません。
私の後、数人おいて妻の出番となりました。妻の出番の後は、発表会が終わるまで4人の歌唱しかありません。時間が無いのです。急いで楽屋に戻って、普段着に着替えて撤収作業です。タキシードって、着替えに案外時間が掛かるんですよ。3人分の時間を使って着替えて荷物をまとめて、最後の人が歌う時に、なんとか客席に行くことができました。
発表会の最後の方の歌を客席から聞いて、忘れずに録音機を回収して、急いでロビーに行きました。遠路はるばる応援にやってきてくれた方々に挨拶をしなければ!
発表会の後は、楽しい楽しい打ち上げです。今年の打ち上げは中華料理で、満腹になりました。終わりよければ全て良しです。
さて、次はどこで何を歌いましょうか?
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