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谷中オペラ寺劇場で「魔笛」を見た(もちろん配信)

 YouTubeを漁っていたら、面白いサイトを見つけてしまったので、そこでオペラ公演を見てしまいました。

 見つけたのは“日声協YouTubeチャンネル”です。ここにはなかなか興味深い動画がアップされているのですが、とりわけ私の興味を引いたのは、谷中オペラ寺劇場による「魔笛」のアーカイブ配信でした。

日声協YouTubeチャンネル
プロ・アマ問わず、声楽を愛好する方々の志をもとにして、「声楽研究」「声楽家養成」「声楽普及」活動を行っています。当法人は、正会員、個人会員あわせて613名(20…

 谷中オペラ寺劇場…“寺劇場”と書いて“てらこや”と読むそうです。日本にいくつかある、オペラカンパニーの一つです。例によって、スタッフとキャストを書いておきます。

演出:中村敬一
ピアノ:服部容子
製作:NPO法人日本声楽家協会(2021年5月5日)

タミーノ:藤牧正充(テノール)
パミーナ:太田小百合(ソプラノ)
ザラストロ:小田川哲也(バス)
モノスタトス:布施雅也(テノール)
夜の女王:大久保陽子(ソプラノ)
侍女Ⅰ:朝倉春菜(ソプラノ)
侍女Ⅱ:島原有沙(ソプラノ)
侍女Ⅲ:佐間野朋美(メゾソプラノ)
武士Ⅰ・僧侶:下村将太(テノール)
武士Ⅱ・僧侶・弁者:櫻井 航(バリトン)
パパゲーノ:小川陽久(バリトン)
パパゲーナ:加藤 瞳(ソプラノ)
童子Ⅰ:吉田安希(ソプラノ)
童子Ⅱ:井上華那(ソプラノ)
童子Ⅲ:吉原朋子(メゾソプラノ)

 上演場所は、谷中会館初音ホールで、このホールは谷中の観智院というお寺の真下に作られたホールなんだそうで、だから“寺劇場”らしいです。収容人数は100名程度の小ホールのようです。まあ、行ったことがないので、詳細に関しては分かりません。

 実際の動画を見れば分かりますが、オペラ上演そのものは、日本のオペラ上演としては、割とよくあるスタイルの“指揮者無し、オーケストラ無し、合唱無し、大道具無し”です。伴奏はピアノのみ、歌は独唱のみです。動画なので日本語字幕は付いています。実際の上演でも、たぶん日本語字幕は付いているのではないでしょうか?

 私は、このスタイルのオペラ公演は見慣れているので、楽しく見られましたが、海外の歌劇場のオペラ公演しか知らない人が見ると「これってリハーサルですか?」「なんかショボい」と思うでしょうね。いや、思わないとおかしいです。

 でも、これが日本のオペラ公演の現実なのです。新国立劇場とか、二期会とか、藤原歌劇団とかの、日本でも大手のオペラカンパニーでは、海外の歌劇場公演とも肩を並べられるような公演がやれていますが、あれらは特別、あれらは例外であって、大半の日本のオペラカンパニーでオペラ上演をやると、まあ、たいていはこんな感じになります。

 まあ、これが日本のオペラ界隈の現実ってヤツです。

 確かに、あれこれショボくて見劣りしますが、歌だけは、きちんとしています。逆に言うと、きちんとしているのは、歌手だけなんですよ。それも独唱者しかいないのです。これが日本のオペラ界隈の今なんです。

 余計なお世話ですが「歌っている歌手の皆さんたちは、きちんとギャラをもらえているのかしら?」と心配になるレベルです。

 歌手しかいなければ、ロクなオペラができるわけありません。それは兵隊しかいない軍隊がロクな戦争できないのと一緒です。兵站軽視もはなはだしいのですが…それが日本という国なのです。

 結局は、オペラは日本社会には根付いていないので、それに関わる人たちがオペラで生活するのは苦しい…のも仕方ないわけです。

 それはさておき、公演内容に触れると…おそらく公演は1回こっきりでしょうね。もしかすると2日に渡って上演されたかもしれないけれど、その際は出演者は変わるでしょうから、このメンバーにとっては、この公演が初日であって千秋楽であって、それが配信されているわけです。そんな初日公演で、このレベルのものが出来ているのだから、私は個人的に、素晴らしい出来だと思ってます。歌舞伎などなら、1ヶ月ほど毎日公演して、本番をたくさん重ねてから千秋楽に録画されて、それが配信されるわけですから、本番に対する熟練度が全然違うわけです。

 大道具も無いし、照明設備も無いようなものなので、演劇的には評価はできません。合唱も無いので、音楽的には不完全で、これも評価できません。とりあえず、オペラの順番に、ピアノ伴奏のアリア歌唱等を並べた公演として考えるなら、これらの歌唱は素晴らしいと思います。目をつぶって、オペラ音源として楽しむなら、私は素晴らしいと評価します。

 実際に、歌唱はとても良かったです。私は気に入りました。それと同時に、存在しないことで、合唱の大切さとか力とかを感じましたね。合唱って素晴らしいのだなあって思ったわけです。合唱が無いだけで、こんなにオペラから魅力が無くなってしまうのだなあ…と思ったわけです。合唱は大切です。

 無いことを取り上げて文句を言うのは簡単ですが、日本という、いわばアウェーな環境でオペラをやっている事を考えるなら、私は「よくやっていますね、ありがとう」と言いたいです。だって、彼らが頑張らないと、日本のオペラの灯が消えてしまうでしょ? それは、なんとも寂しいことだと、私は、一人のオペラファンとして思うのです。

 頑張れ、頑張れ。

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