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ドイツ音名と調の名前(超おおざっぱ編)

 この記事は、我が歌劇団の団員さん向けの記事ですが、まあ、同じ悩みの方もいらっしゃるかもしれないので、そんな方は、読んでいってくださると勉強になりますよ。もっとも、勉強にはなりますが、ツマンナイかもです(笑)。

 さて、キング先生から出された楽典関係の宿題の解説をします。それは、タイトルどおり「ドイツ音名と調の名前について」。

 まずドイツ音名の読みと、それに相当するドレミ[いわゆる“固定ド”]は以下のとおりです。

C(ツェー:ド)
D(デー:レ)
E(エー:ミ)
F(エフ:ファ)
G(ゲー:ソ)
A(アー:ラ)
H(ハー:シ)

 まずはこれが基本なので、しっかり覚えてください。あと、英語とは若干違うので注意してくださいね。英語で「エー」と言うと“A”ですが、ドイツ語では“E”になるので混乱しないでください。

 派生音ですが、#[シャープ:半音上げる:日本語では嬰記号]の場合は、音名に-isを付けます。

Cis(ツィス:C#:ドシャープ)
Dis(ディス:D#:レシャープ)
Eに#をつけると、Fになります。
Fis(フィス:F#:ファシャープ)
Gis(ギス:G#:ソシャープ)
Ais(アイス:A#:ラシャープ)
Hに#をつけると、Cになります。

 次はb[フラット:半音下げる:日本語では変記号]の場合ですが、音名に-esをつけます。こちらには例外がありますが、それには*を付けたので、注意してください。

Cにbをつけると、Hになります。
Des(デス:Db:レフラット)
Es(エス:Eb:ミフラット)*
Fにbをつけると、Eになります
Ges(ゲス:Gb:ソフラット)
As(アス:Ab:ラフラット)*
B(ベー:Bb:シフラット)*

 ごらんの通り、B周辺で、ドイツ音名と英語の音名では違いがありますので、注意してください。ドイツ音名では“Bb”と言う音がありません。英語には“H”と言う音がありません。分かりやすく、ドレミで相当する音から書いてみると…。

シのフラット :B[ドイツ]:Bb[英語]
シのナチュラル:H[ドイツ]:B[英語]

 …となります。“B”と書いても、英語とドイツ音名では指し示す音が異なりますので、混乱しないでくださいね。ちなみに、日本でのドレミはドイツ音名よりも英語音名の感覚に近いのではないかと思われます。

 さて、次は調の名前になります。長調は、主音の音名のあとに“dur(ドゥア)”を付け、短調では主音の音名の後に“moll(モル)”を付けます。これは簡単。

C dur(ツェードゥア:ハ長調)
Es dur(エスドゥア:変ロ長調)
B dur(ベードゥア:変ロ長調)
A moll(アーモル:イ短調)
H moll(ハーモル:ロ短調)…など。

 次に、音部記号(ト音記号と思ってもいいです)の隣にシャープやフラットが幾つ付いていると、○調かと言う話。

#&b無し→C dur / A moll(ハ長調/イ短調)

#1つ→G dur / E moll(ト長調/ホ短調)
#2つ→D dur / H moll(ニ長調/ロ短調)
#3つ→A dur / Fis moll(イ長調/嬰ヘ短調)
#4つ→E dur / Cis moll(ホ長調/嬰ハ短調)
#5つ→H dur / Gis moll(ロ長調/嬰ト短調)

b1つ→F dur / D moll(ヘ長調/ニ短調)
b2つ→B dur / G moll(変ロ長調/ト短調)
b3つ→Es dur / C moll(変ホ長調/ハ短調)
b4つ→As dur / F moll(変イ長調/へ短調)
b5つ→Ds dur / B moll(変ニ長調/変ロ短調)

 C dur/A mollを基準に考えると、ここから完全5度ずつ主音を上げて行くたびに、#が一つずつ増えます(数えてみると良いですよ)。また逆に、完全4度ずつ主音を下げていくたびに、bが一つずつ増えていきます。このあたりは「調の五度圏」と言う奴を勉強するとバッチリになります。

 で、長調と短調の見分け方は…ザックバランに言って、メロディーの最後の音がその調の主音になりますので、それで判断すると、だいたい正解になります。

 ト音記号の隣に何も書いてなく、その曲がC durか、A mollか、迷ったら、その曲のメロディの最後の音を見てください。C(ド)かA(ラ)のどちらの音で終わっているとはずです。もし、その曲がC(ド)で終わっていたらC durです。A(ラ)で終わっていたらA mollです。同様に、ト音記号の隣に#が二つ書いてあったら、それはD durか、H mollか、のどちらかになりますが、メロディの最後がD(レ)ならD dur(ニ長調)になり、H(シ)ならH moll(ロ短調)になるわけです。

 これだけ知っていれば、たぶん、歌劇団的にはOKだと思います。とは言え、これだけだって、かなり難しいですけれど。ま、一度に全部を覚えようとはせずに、まずはドイツ音名から始めて、少しずつ覚えていけばいいと思います。

 また、これ以上の事が知りたい人は「楽典」を買って、ちゃんとお勉強しましょう。一応“黄色い楽典”のリンクを貼っておきました。どちらにせよ、クラシック系の音楽をする以上は楽典からは逃げられないと思います。楽典は手元に一冊置いておくといいでしょう。ただし、楽典なんてものは、内容はどれも一緒ですから“黄色い楽典”にこだわらずに、本屋や楽器屋で、もっと親しみやすい編集のものを入手してもいいと思います。

 ま、習うより慣れろです。いきなり全部を覚えようと思わずに、少しずつ覚えていけば、いいと思いますよ。

コメント

  1. おざっち より:

    すとんさん、こんにちわ。
    以前からよくこのブログを拝見しておりましたが、今回始めてコメントさせていただきます。
    私は滋賀県 大津市在住のフルート愛好家です。今年でリタイアし、練習時間がグッと多くなりました。フルート歴は40年もあるのですが、30年のブランクがあり、3年ほど前から再開したような次第です。若い時とは違い、音楽を心から楽しめるようになったような気がします。今考えると、ずっと続けていたらよかったのに、と思います。
    自己流でやっておりましたので、この記事にあるような「音楽の基礎」というものを全く知らず、やはり知っておくべきだと最近になって痛感しております。
    京都のフルートアンサンブルに入団し、レッスンにも通う日々ですが、日によって音が良く出る時、出ない時があり、まだまだフルートを通じた「自分探し」の旅の途中、といったところです。
    すとんさんは、声楽やヴァイオリンもされておられますが、心底音楽がお好きなんだなあと思います。楽器演奏というのは、やはり人間の声、歌わせ方にいかに近づくか、ということじゃないかなと思っております。ゴールウェイのレッスンでは、まず声で唄ってみる、ということをさせるらしいですが、私には大いに納得できる話です。そのあたり、すとんさんのご意見をお聞かせ願えればなと思います。

    すとんさんのブログ、いつも読み応えがありますので、これからも愛読させていただきます。
    あ、滋賀県は田舎ですが、結構フルートの盛んなところで、「湖笛(うみぶえ)の会」というアンサンブルがあり、毎年高島フルートコンクールというのもやっています。

  2. すとん より:

    >おざっちさん、いらっしゃいませ。

     以前から当ブログをご愛読されているとの事、大変感謝です。

     最初のフルートは二十代の頃に十年近く学ばれたんですよね。では、その期間にとても上達されたのだと思います。市民楽団などでブイブイ言わせていらしたのでしょう。私の興味は…そこから30年お休みされ、再開された時の心境と言いますか、どこから始められたのかって事です。『再開した時にどこまで技術的に戻っているのか。どんな事を感じてリスタートするのか』と言うのが、最近の私が興味深く思っている事の一つなんですよ。

     人間と言うものは、鍛えれば上達し、辞めれば衰えます。これは真実です。でも「昔取った杵柄」という言葉があります通り、ある程度極めた方はゼロに戻らないと思います。きっと、おざっちさんも“ゼロ”ではなかったから、リスタートしたのだろうと思います。

     さて「音楽の基礎」ですが、大切ですね。私も基礎力の不足に日々悩まされています。基礎力の不足というのは、アマチュア音楽にとっての永遠の課題なんだろうと思います。アマチュアは、どうしても“楽しさ”を優先しがちで、地味で基礎という部分を素通りしてしまいがちです。そこが、プロの方やちゃんと音楽教育を受けたハイ・アマチュアの方とは違うんだと思います。

     かと言って、レイトスターターの皆さんが、今更基礎をゼロから学ぶのでは、時間がかかりすぎます。いつでも、必要なことを必要な分だけ最少の時間で学べる環境というのが必要だと思います。そして、そのための場の一つがサークルとか楽団という奴で、我が歌劇団もそういう場でありたいと思ってます。

    >そのあたり、すとんさんのご意見をお聞かせ願えればなと思います。

     ゴールウェイがフルートのレッスンで、まず声で歌わせる…という件ですね。私のヴァイオリンのレッスンでは、ヴァイオリンを弾く前に、歌いますよ。それに、現在、私が使っているヴァイオリンの教本「篠崎バイオリン教本」でも、曲を弾く前に必ず生徒に歌わせて、それからヴァイオリンで弾かせるように指示されています。なので、楽器の練習で、楽器を持つ前に歌わせるというのは、大切な事であり、実は案外普通の教授法なのではないかと思います。

     最初に歌う事で、音程に注意深くなるでしょう。より細かい表現に気がつくでしょう。感情も入る混みやすくなるでしょう。

     最初の音程の件ですが、歌は自分で音程を作ります。フルートだとそこを楽器任せにしてしまう人(初心者に多い)もいるでしょうが、フルートって実はかなり音痴な楽器なので、自分で音程を調整していかないといけないのですが、そのための感覚を自分で歌って音程を作って行く事で自覚できるでしょうね。

     細かい表現ですが、どんな人であれ、楽器を操作するよりも、歌う方がダイレクトに音楽表現できるはずです。だから、まず歌ってみる事で、自分のやりたい音楽表現を声で一度具体化し、次に楽器を持つ事で、そこに向かって楽器演奏を高めていけるのではないかと思われます。

     そして、感情は…歌えばイヤでも感情が入るものです。その感覚を忘れずに楽器でも感情をいれて…つまり「歌って」いけばいいのだと思います。

     滋賀はフルートが盛んな地域なんですね。私の住んでいる湘南は…それほどでもないです。音楽はやはり、軽音楽(ロックとかフォークとかジャズとか)が盛んだと思いますし、地元から巣立ったプロの方も大勢います。クラシック系に限って言うと、アマチュアでは、楽器も盛んですが、合唱やオペラが盛んかな?って気がします。ま、私のひいき目かもしれませんが(笑)。

     また、よかったら、コメントください。

  3. おざっち より:

    さっそく丁寧なコメントをいただきましてありがとうございます。

    「私の興味は…そこから30年お休みされ、再開された時の心境と言いますか、どこから始められたのかって事です。『再開した時にどこまで技術的に戻っているのか。どんな事を感じてリスタートするのか』と言うのが、最近の私が興味深く思っている事の一つなんですよ。」

    この件に関しましては、まずは再開したきっかけからお話しますと、奈良方面をハイキングしているときに、偶然プロの方と知り合いになりまして、練習場などを見せていただくうちに、「ああ、フルートっていいもんやなあ。またやってみようかなあ」と思い始めたんです。で、しばらく経ってから、昔新宿のムラマツで購入した楽器を取り出し、恐る恐るロングトーンで吹いてみました。「お、結構鳴るやん!」と思い、次はお蔵入りしていた楽譜のホコリを払って曲を吹いてみました。すると昔のように指が回らず、今度はガックリきました。しかしこれで火がついたのか、ほとんど毎日吹くようになり、今に至っている次第です。昨年末にはムラマツの9kに買い換え、4月には還暦リサイタルなるものまでやってしまいました。
    現在は、おそらくほぼ昔のレベルくらい、あるいはもう少し上まで戻ってきているような気がしています。半年前にピッコロも購入しましたが、ピッコロの練習がフルートにも良い影響を与えているように思います。
    今となっては、30年のブランクがあったことが惜しまれてなりません。

    演奏の前に歌うという件につきましては、すとんさんのレッスンではあたりまえなのですね。そして一般のレッスンでも普通のことだとか。そして歌うことのメリットが色々とあることを了解しました。なるほど〜!

    さて、私もブログをやっておりますので、すとんさんがひま〜な時にでもご覧ください。ただし、私は自転車競技やツーリングもフルートと同じくらいのキャリアがあり、このブログはそういう人たちに向けたネタであることをご了承ください。しかし、最近はフルートの方にシフトしてきており、どっちつかずの記事になっている昨今です。

  4. すとん より:

    >おざっちさん

     そうですか、30年のブランクがあっても、3年も熱心にやれば、昔と同様かそれ以上に慣れるのですね。うむ、先人の言った「昔取った杵柄」という言葉は真実なのですね。もちろん「杵柄」に成るほど、ブランク前に熱心にやっておかないといけないのでしょうが…。

     私の腕前は杵柄になっているかな? まだ足りないかな? どちらにせよ、ブランクのないまま年を重ねていけるのが一番です。だって、人生のカウントダウンって奴が始まっているんだから、あまり年月を繰り返しに使いたくないんですよ。

     ブログは遊びにいかせていただきます。

  5. ミルテ より:

    ちょっとだけおせっかいです。

    >Eに#をつけると、Fになります
    これは、これで正しいのですが、楽典からみてEに#がついたものは
    Eis(エイス)とよびます。
    音はFでも、呼び方はあくまでE#をとります。
    なのでほかの音も同じように考えたほうがのちのち楽かと思いますよ。

    どうせおぼえるなら一緒にHisもCesもFesも覚えちゃったほうがらくですよ~。
    ある意味ドイツ音名も慣れですものね。
    がんばって覚えてくださいね。
    老婆心ミルテでした。

  6. すとん より:

    >ミルテさん

     そのEisとかの同音異名は、実はちょっと悩んだんですよ。で、ウチの団員さんの事を考えた時、おそらく頭の中はピアノベースで考えているのだろうと言う結論に達しまして、あえて同音異名には踏み込みませんでした。と言うのも、同音異名に触れると、またその説明をしなきゃいけないわけだし、その手のが出てきた時は、練習の時に補えばいいかって考えたわけです。

     でも、おっしゃるとおり、一度に全部やっちゃうのも手ですね。

     と言うわけで補足です。

     Eis(エイス:E#/F:ミシャープ、または、ファ)
     His(ヒス:H#/C:シシャープ、または、ド)

     Ces(ツェス:Cb/B:ドフラット、または、シ)
     Fes(フェス:Fb/E:ファフラット、または、ミ)

     余裕のある方は、覚えてください。

  7. アルビーナ より:

    こんにちは!
    (現時点で)最新の記事のバレンタイン、聴きましたよ~!ロングトーンが多い曲は、吹くのを想像しただけで頭がクラクラしてきそうですが、とても伸びやかに響いていて心地よかったです♪

    「“B”と書いても、英語とドイツ音名では指し示す音が異なります」…最近ボチボチ楽典を勉強している中で、誰か(例えばアンサンブル仲間とか)と話をする時に、どうすればいいんだー!と悩んでいたことです!

    口頭で伝えるときはベーorビーフラットとなるから分かりますが、筆談(文書で共有する場合など)の場合は、みんなどうやっているんでしょうか?
    (エーは逆に口頭の場合に分からなくなりますね)

    想像としては、グループの中での公用語?をドイツ語か英語か決めておくのかと思うのですが・・・曲のジャンルや吹奏楽or管弦楽でも決まってそうだなと思ってみたり。

    何かご存知でしたらぜひご教示いただけるとありがたいです^^

  8. すとん より:

    >アルビーナさん

     演奏を誉めていただけると、有頂天になる私です。エヘエヘ。

     えっと、住む世界で使われる公用語(?)が違うので、間違えることはないと思いますよ。一般的に、クラシック系の世界ではドイツ語が、ポピュラー系の世界では英語が、合唱系の世界ではイタリア語(つまりドレミ。ただし『移動ド』のようです)が使われるみたいです。

     三つの世界を行き来する私は、自然とそのあたりに詳しくなりました。

     歌劇団は、歌のグループですが、声楽(クラシック系)がベースになっているので、ドイツ語が公用語なのですが、ウチの団員の皆さん、まだドイツ語に不慣れなので、ただ今勉強中なんです。

     管弦楽はモロ、クラシック系なので、ほぼドイツ語が公用語です。吹奏楽は指導者の出身畑によって違うみたいですよ。音大出ている指導者はドイツ語を使う方が多いようですが、そうでない方は、英語かイタリア語(ただし『固定ド』)のようです。

     ちなみに『固定ド』とはCを常に「ド」と呼ぶ唱法です。なので、どんな調でも、常に同じ音は同じ名称で呼びます。一方、『移動ド』はその調の主音を、長調なら「ド」と、短調なら「ラ」と呼ぶ唱法で、同じ音でも調が違うと呼び名が変わる唱法です。ちょっとややこしいのですが、歌う時には便利な唱法です…が私は苦手です(涙)。

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