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音楽は演奏者だけでは成り立たない

 先日、あるコンサートに行きました。そこで、色々と不愉快な目(主に主催者側のホスピタリティの不足が原因)にあったのですが、ブログで私の不満をぶちまけても、面白くないでしょうから、その一件については書かないことにしますが、私がかなりの不機嫌な気分で、そのコンサートを聞いていたと想像してください。

 音楽って、不機嫌な気分で聞くものじゃないですね。

 そのコンサートは歌系のコンサートだったので、歌曲やオペラアリアが歌われていたのです。

 不機嫌な気分でいると、心って、閉じてしまうのですね。だから、舞台で歌手が一生懸命歌っても、こちらの心には何も入ってこないのです。入ってこなければ、感動も何もないわけです。

 それでも歌曲は、まあいいです。歌曲は曲自体が美しいので、不機嫌な気分で聞いても、不機嫌なままでいるくらいですから。

 問題は、オペラアリアです。

 不機嫌な気分の時にオペラアリアを聞くと、不機嫌を通り越して、不愉快な気分になり、怒りがこみ上げてきます。私、不機嫌なはずなのに、アリアを聞いているうちに、いつのまにかイライラしだして、怒り出していている自分を見つけて、この心境の変化にビックリして、表面的には不愉快ですが、深層では実に愉快になってしまいました。

 そう、不機嫌な気分でアリアを聞くと、人って不愉快になって、イライラして、終いには怒り出すんです。

 なぜ、オペラアリアを聞くと、不愉快になるのか…それはオペラアリアって、歌曲と違って、美しいだけじゃないからでしょう。アリアでは、必ず要所要所で、奇声が発せさられるでしょ? この奇声が、不機嫌な神経を逆なで、不機嫌な気分から不愉快な気分に落としてくれるのです。

 「奇声って何?」

 ほら、ソプラノやテノールの発する、あの“高音”です。あれって、ワクワクした気分で聞くと、心を一気に桃源郷に運んでくれるミラクルな声ですが、閉じた心にぶっかけられると、単なる奇声でしかなく、ますます心が冷え、気分を害します。

 「ああ、一般の非オペラファンがオペラアリアを聞くと、一様に拒否反応を示すのは、この心理作用が原因じゃないか?」 私はそう考えました。

 オペラのハイトーンって、オペラ好きが聞くとたまりませんが、非オペラファンが聞くと、地獄の鬼たちの悲鳴にしか聞こえないんでしょうね。

 まるで、納豆や、くさやの干物みたい(笑)。お好きな方にはたまらぬ美味ですが、普通の方には、臭くて臭くてたまらない、とても食えたものではない…ってのと同じかもしれません。

 つまり、オペラアリアを美しい音楽として成り立たせているのは、演奏者の見事な歌唱だけでなく、観客の“オペラ大好き心”があってこそのモノなんですね。

 オペラが美しい音楽として成り立つためには、演奏者だけでは無理って話なんです。

 これって、もしかするとオペラアリアだけの話ではないかもしれません。

 長大な演奏時間を誇る交響曲とか、超絶技巧を魅せつける協奏曲なんかもそうかもしれません。お好きな方にはたまらないでしょうが、そうでない方には退屈の極みだったり、音数が多すぎて耳障りだったりするんじゃないでしょうか?

 良い演奏さえすれば観客は感動する…と演奏者は考えがちですが、それはおそらく大間違いです。良い演奏の前に、良い環境と理解ある観客の存在がないと、音楽は人々に受け入れられるものではないのかもしれません。つまり、演奏者が上手いだけでは、誰も感動なんてしないって事です。

 良い舞台は、決して、演奏者の努力だけでは成り立たない…のかもしれません。演奏者の努力はもちろんだけれど、マネージャーとかスタッフさんも頑張らないと、お客は逃げちゃうって事です。信頼を築くには時間がかかるけれど、信頼を壊すのは一瞬でできるからね。一度逃げた客は、帰ってこないものだよ。

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コメント

  1. アデーレ より:

    わかりますわー!そうかもね!特に歌はわかりやすく、歌だけは聴くの苦手ってひと、かなりいますよ。歌うことが当たり前の私には本当にそんな人達、信じられませんが、、。どうも、あのクラシックの歌唱のビブラートが苦手らしいですよ。それがいいんじゃないのー、と思いますがね、高音も聴くとスカッとする人ばかりではないのね、ひと様々です、本当に。

  2. すとん より:

    アデーレさん

     おそらく、歌って、人の心を揺り動かすものなんだと思うし、オペラアリアのような曲は、激しく心を揺さぶるんだと思います。で、揺さぶられて“ここちよい”と思う人もいるかもしれませんが、逆に“気持ち悪い”と思う人も当然います。

     遊園地のジェットコースターだって「大好き」と言う人もいれば「絶対無理」と言う人だっているわけです。オペラアリアなんて、そんなジェットコースターみたいなものなのかもしれません。お好きな人にはたまらないけれど、キライな人は絶対無理だし、もしかすると、好きな人よりもキライな人の方が多いかもしれない。そんな感じです。

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