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パリオペラ座のライブビューイングで「ジョコンダ」を見てきた

 今回見てきたのは、ポンキエッリ作曲の「ジョコンダ」というオペラ。実に地味と言うか、知る人ぞ知る…と言った感じのマイナーなオペラです。なんでも、長い歴史を誇るパリオペラ座でも、今回の上演が初演だとか。それくらい、なかなか上演してもらえない、珍しいオペラなのでした。

 なかなか上演してもらえない理由は、色々とあるでしょう。例えば…ソリストは、かなり歌えるスター級の歌手(歌劇「ジョコンダ」はどのパートも難しいです)を6人揃えないといけません。ソプラノ、メゾソプラノ、アルト、テノール、バリトン、バスの6人ね。どのパートも、かなり強い声で、テクニック的にも上手い歌手を揃えないといけません。まあ、それだけの歌手を6人も揃えるとギャラが…。何しろ上手な人って、ギャラが高いですからね。オペラ劇場も商売ですから、なるべく人件費を抑えてオペラ公演をしたいのが本音でしょ。たいていのオペラの場合は、ソリストは3~4人いれば、何とかなるし、スター級はそのうち1~2人もいれば何とかなるわけだから、スター級を6人も揃えないと上演できない「ジョコンダ」は、なかなか上演の機会が回ってこないのも不思議ないです。

 さらに言うと、このオペラ、大合唱団が必要です。とにかく、合唱パートがたくさんあるし、人数を要求していますから、合唱団員をたくさん必要としています。オトナの合唱団も必要ですが、児童合唱だって使います。一体このオペラ、何人の歌い手を必要とするんでしょ?

 さらにさらに言うと、バレエ団も必要です。なにしろ「時の踊り」という超有名なバレエ曲がありますからね、第3幕のバレエのシーンの手抜きなんて許されません。このバレエのシーンだけでも、独立した演目して上演することが可能なレベルまで仕上げないといけません。ああ、お金かかりそう。おまけに、船乗りの話なので、大道具として船が必要です。大道具も手が抜けません。出演者が多いという事は、それらのキャストが着る衣装も必要になりわけです。最初っから最後まで同じ衣装を着ているわけにはいかないでしょうから、出演者の数の数倍の衣装が必要になりますが、それはすべて劇場のスタッフがオーダーメイドで作るわけで…とんでもない数の衣装が必要になるでしょうね。さらに小道具となると…もう想像もつきませんよ。

 というわけで、この「ジョコンダ」というオペラ、上演するのに、やたらとお金がかかるタイプのオペラなので、頻繁に上演されないのでしょう。金食い虫オペラなんだね。

 上演にお金がかかる上に、作曲家は一発屋、ってか、この曲しか代表作がないような、ネームバリューのあまりないタイプの作曲家。そりゃあ、上演のチャンスに恵まれなくても仕方ないよね。

 でも、オペラそのものは、実に素晴らしいんですよ。

 何しろ、3時間以上に渡る大作オペラなのに、捨て曲無しで、実に音楽的に充実しているんです。どのソリストにも立派なアリアがあるし、いやいや、テノールとソプラノのアリアは、有名曲にして超難曲だしね。重唱にしても合唱にしても、実に素晴らしい曲ばかりです。バレエ曲「時の踊り」も素晴らしいです。

 そうそう、今回のバレエには驚かされました。最初は音楽に合わせて、12人の時の妖精たちによる群舞が披露されていましたが、途中から、時の女神が現れます。その女神さまですが、登場シーンこそ、金色の衣装を来ていましたが、すぐにその衣装を脱いで裸になってしまうのです。いや、正確に言うと、金色のトゥシューズと金色のティーバックを履いてますが…パッと見、全裸。だって、金色と言っても、光沢のある肌色のような色なんだもん。

 で、トゥシューズとティーバックだけって事は…上半身は裸体ですから、当然、生乳がポロリ…どころがズドーンだったりします。いやあ、びっくりしますよ。まさか、こんなところで白人女性の乳房を見せていただけるとは思ってませんでしたから、もう心臓バクバクです。おまけに映画の大スクリーンに胸部がアップで映されちゃった日には、そりゃあもう…目は釘付けですよ。

 その女神様がソロでしばらく踊っていると、やがてデュエットになって、相棒の、時の神様(男性)が登場するのですが、こちらも金色のパンツとシューズのみ。そのパンツがパッツンパッツンだったわけで、いやあ、目のやり場に困る困る。

 あっちの人と日本人は、裸に対する感覚が違うから、こういう演出は、ほんと、見ているだけで、照れて困ります。でも、オペラ見ていると、こういうシーンって結構あるんだよね。

 さては、バレエはさておき(笑)。歌手の話をしましょう。

 主役のジョコンダ(ソプラノ)もライバルとなるメゾソプラノのラウラも、素晴らしい歌唱でした。目をつぶって聞いていると、実に感動的なまでに美しい声で歌いあげてくれます。でもね、目を開けちゃうと…色々と厳しいです。

 まず、ジョコンダは幸が薄い設定の登場人物なんだけれど、歌っている歌手の体格が良すぎて、ぜんぜん幸薄に見えないんだよねえ。これではなかなかジョコンダに同情できません。それどころか、アルトのお母さんを歌っている歌手が、若くて美人なので、見ているとジョコンダの方がお母さんに見えて見えて…。ジョコンダはパワフルな声を持っていないと歌えない役なので、どうしても大柄な歌手が歌うしかないのだけれど…どうもそのあたりのキャスティングが難しいオペラです。

 メゾのラウラも、絶世の美女という設定なのですが、どう見ても“魔女”。ううむ、視覚的に厳しいなあ~。声と歌は素晴らしいけれど、舞台演劇としてはどうなの?って感じの女性陣でした。

 一方、男性陣はなかなか良かったですよ。特にテノールを歌った、マルセロ・アルバレスは良かったのです。しかし、この人は、よく見るよね(笑)。メトのライブビューイングの「トスラ」や「仮面舞踏会」で見てますし、自宅にある「ランメルモールのルチア」のDVDでも歌ってます。今が旬のテノールなんでしょうね。いやあ、素晴らしい。

 あんまり素晴らしいので、この人について、色々とググってみたら、面白い事が分かりました。まず、この人、30歳まで素人だったんです。30歳で「おら、オペラ歌手さ、なるべ」と決心して歌手修行を始めたという人。それから約10年で、世界のトップ歌手になっちゃったそうです。ううむ、完璧“才能もてあまし型”の歌手なんでしょうね。努力でどうにかなる経歴じゃないですね。たぶん、天才なんだと思います。

 さらに言うと、声が実に激変してますね。デビューが遅くて、すぐにトップに登っちゃったので、割と初期の歌声もYouTubeに残っているのですが、最初の頃は、実に美しい歌声でびっくりしちゃいました。今は、美しいと言うよりも、タフでたくましい声になってますからね。いやあ、声って変われば変わるものですね。ってか、おそらく初期の美しい声は、まだまだ未完成だった頃の声なんでしょうね。

 美しい声から始めて、キャリアを重ねていくうちに、自然と声がタフになっていった…んでしょうね。そういう声の変遷を見れるんだから、YouTubeってありがたいです。私は彼の最近の声しか知りませんから、初期の声を聞いて、ビックリでした。ネットでは初期の声の方が好きって人が多いみたいだけれど、私は今の声の方が好きだな。

 女性はドレスを着るので体型のたくましさがどうしても出ちゃうけれど、男性はコートを羽織ったりして、体型をある程度隠せるので、アルバレスもかなり太い人なんだけれど、そこはそんなに気になりませんでした。そういえば、バスの人も、ずっとマントを羽織っていて体型隠していたっけ(笑)。バリトンさんは…細くて長身で、なかなかのナイスなオッサンだったので、体型を隠していませんでした。

 そう言えば、昨今のバリトンさんって、皆さん、長身細身でカッコイイって人が多くなってきたような気がします。でもね、バリトンばかりが格好良くなっても、テノールやソプラノが太いと、なんかオペラに説得力が感じられなくなるんだよね。困ったものです。

 さて、これで、今年のパリオペラ座のライブビューイングはお終い。来年は…やってくれるのかな? ちなみに、メトの方は、現在、アンコール上映の期間中で、来シーズンは11月からだね、ああ、そっちも楽しみ楽しみ。

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コメント

  1. tetsu より:

    こんばんは。

    ポンキエルリの「時の踊り」というとなぜかダチョウ、カバ、ゾウ、ワニのイメージしかありません。「ジョコンダ」についてあまりにも知らなさすぎでした。機会があればぜひ聴いて、見てみたいです。

  2. すとん より:

    tetsuさん

     なぜ、ダチョウ? カバ? ゾウ? ワニ? ああ~、ディズニーの「ファンタジア」ですね。納得。「ファンタジア」と言うと「魔法使いの弟子」が有名ですが、この「時の踊り」もなかなかの名シーンだと思います。いかにも、アニメならではの振り付けで、ほんと、ダンスの振り付けにも色々あるんだなあ~って思いました。

     今回のパリオペラ座のバレエは生乳に驚きましたが、ダンスそのものは“時”の神様たちのダンスでしたが、以前(DVDで)見たドミンゴ&マルトンの時は、それまでのオペラのストーリーを総括する内容の振り付けでした。振付師や演出家の意図で、ダンスの内容は変わりますから…ディズニーではダチョウやカバの出てきても全然不思議ではないですね。

     まあ、ポンキエッリに関して言えば、オペラ「ジョコンダ」よりも、その挿入歌である「時の踊り」の方が有名ですが、その理由の一つは、ディズニーの「ファンタジア」になると思います。実際、このアニメ、すごいですよね。

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