何の話かと言うと、オペラ鑑賞の話です。
実は私、この秋、ほぼ一週間(正確には8日)で3度、生のオペラを見るチャンスがありました。普段はオペラ鑑賞を始めとした、音楽鑑賞の話は、ブログには書かない(一々書いていたら、音楽鑑賞ブログになってしまいますからね)のですが、一週間に3度も生オペラを見るという体験は、私的にも極めて稀なので、記録として書いておきたいと思った次第なのです。
まず最初が、東京芸術大学の奏楽堂で行われた『魔笛』です。いわゆる大学オペラという奴です。
大学オペラと言うのは、大学のオペラ専攻科が主催して行う、授業の一環として行うオペラ公演です。入場料は極めて安価で、舞台装置や衣装は豪華、演出はオーソドックス、出演者は、ソリストは大学院生か卒業生(もちろん若手)、合唱や黙役、舞踏、各種裏方スタッフは学部生という布陣で行うモノです。オーケストラは先生方や外部のオーケストラを使う場合もあれば、大学の学生たちや卒業生を使う場合もあります。芸大の場合は、ソリストはほぼほぼ大学院生のようですし、オーケストラは先生方のようでした。
学生および卒業生たちの学びの場としてのオペラ公演ですから、出演者たちは皆熱心ですが、その出来具合には多少のばらつきがあります。これは仕方がありません。観客サイドも教育の場としてのオペラ公演であると認識していますので、皆さん、暖かい目で見守るわけですし、親御さんたちは何はともあれ、感激しちゃうし、受験生たちは憧れの眼差しで舞台を見つめるわけです。そういう暖かさに包まれているのが、大学オペラなんです。
で、『魔笛』の話ですが、よかったですよ。押しなべて女声が良かったです。水準高いですね、さすが芸大。合唱も分厚くて良し良しです。演出は、実にオーソドックスすぎるほどで、私は気に入りました。チケット代のお手軽さを考えると、見る側にとっても、初心者向けのオペラ公演と言えるかもしれません。妻は今度の発表会で夜女を歌うのですが、とても参考になったそうです。
芸大で一つ気になったのは、奏楽堂のすぐそばの池の鯉たちです。ここの鯉は、どうも人間が嫌いみたいなのです。ここの鯉は、人影の無い方無い方に動くんですよ。鯉と言うのは、基本的に人懐っこい魚で、普通は人のいる方いる方に寄ってくるものなんですが、それがここの鯉たちは違うんです。そこが(オペラとは関係ないけれど)気になりました。
その翌日に『ファルスタッフ』を昭和音大で見ました。こちらも大学オペラです。こちらのソリストやオーケストラは卒業生たちが中心でした。この卒業生たちが、普通に上手だったのにはびっくりしました。昭和音大、立派に人材を育ててます。
こちらのオペラは演出が面白かったです。基本的にはオーソドックなんだけれど、第一幕では舞台を左右2つに割って小さな舞台で演じ、第二幕では全面を使うものの、あまり奥行きを強調しない舞台とし、第三幕の第1場では、舞台の手前に大道具無しの狭い狭い舞台で演じ、最後の第三幕の第2場で、舞台を広々と使った迫力のある場面を作り出しました。で、最後の場面は、舞台が広いだけでなく、出演者たちも合唱および黙役を含めて、大勢の出演者たちで舞台を作って、本当に迫力のある面白い芝居になっていました。
演出がよかったんですよ。
そんな面白かった『ファルスタッフ』ですが、実は私、第二幕の記憶があまり定かではないのです。オペラが始まったばかりの頃は元気いっぱいだったのですが、オペラを見ているうちに徐々に弱っていき、第二幕、特に第2場のあたりでは気持ち悪いし、気持ちは集中できないし、だいぶ参っていました。
第二幕後の休憩で、ペットボトル2本ほどの水を飲んで正気を取り戻しましたので、第三幕はとても楽しめたのですが、第二幕の私は、後から思うに、熱中症になっていたみたいです。オペラを見ていて熱中症になるなんて、人生始めての体験でした。
会場のテアトロ・ジーリオ・ショウワの館内が、むやみに熱くて熱くて…それが原因で熱中症になってしまったと思います。いやあ、ほんと、とにかく熱かったんですよ。なにしろ、汗が流れるままに観劇していたんだもの。
この日の暑さがまた特別だった事に加え、観客たちから発せられる熱が結構強烈でした。特に私の真後ろにいたお兄さん(には罪はありませんが)が放出する熱はかなりなもので、まるでストーブの前で観劇しているような気分でした。あのホール、冷房は入っていたのかな? とにかく、デブには辛い熱い熱いオペラだったのです(涙)。
三つ目は隣町の市民オペラ主催の藤原歌劇団の『椿姫』を見に行きました。これは普通のオペラ公演です。なので、大学オペラと比べてしまうと、大道具が最低限で貧弱と言えば貧弱だし、こんな舞台装置でもオペラはきちんとできると言えばできるのです。ちなみに、オーケストラは昭和音大のテアトロ・ジーリオ・ショウワのオーケストラでした。合唱も(大学オペラと比べると)そんなに多くはないし、バレーダンサーは最低限の二人だし…とまあ、経費的に節約できるところは大胆に節約しつつも、歌手の皆さんは一線級を揃え、それは実に聴き応えのあるオペラでございました。私は次の発表会でアルフレードを歌うので、今回の公演を勉強目線で見ていたのですが、正直に申し上げて、これはちっとも勉強になりません。あれを真似したり参考にしたら、私、ノド壊すって(笑)。
アマチュアとか若手歌手の歌は、勉強になったり参考になったりしますが、一線級のオペラ歌手の歌唱は、あまりに私と違いすぎて、参考にもなりません。あれを参考にするには、まだまだ多くを学ばないといけないなあって思いました。うむ、残念。
ま、とにかく、生のオペラ公演を見に行くのは、これで一段落です。世間では毎日のようにオペラ公演が行われているのかもしれませんが、私は、しばらく聞きにいけません。その変わり、この秋は、オペラ以外の各種演奏会が目白押しで、私、毎週のように、あれやこれやと出かける予定です。ほんと、秋は忙しいのよ(涙)。
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