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読解力が無い…じゃ済まされない話

 皆さんは、次の1)の文章と、2)の文章、同じ内容だと思いますか、思いませんか?

1)幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

2)1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

 また、次の文章を読んで、オセアニアに広がっている宗教は何だか分かりますでしょうか?

3)仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。

 
 
 
 
 
 
 答えです。1)と2)はもちろん、同じ内容ではありません…ってか、2)は内容的に間違っているよね。3)は、もちろんオセアニアに広がっている宗教は、キリスト教です。

 実はこの調査、国立情報学研究所による調査だそうです。これは、中高生を中心とした約2万5千人を対象にした調査結果なんだそうです。で、1)2)の問題を間違えた人(つまり、二つの文章は同じ内容だと理解した人)は、中学生は約43%、高校生でも約28%もいたそうです。3)の問題を間違えた人(オセアニアの宗教はイスラム教だと回答しています)は、中学生は約38%、高校生では約28%となったそうです。

元ネタはこちらです。

 この調査が示すものは何かと言えば、中学生では4割の子が、高校生でも3割の子が、文章をきちんと読んで理解する事ができない…って事なのです。

 中学生の4割、高校生の3割…すごく高い割合だと思いませんか? 我々の身の回りを見回した時、そんなに高確率で文章が読めない中高生がいる…とは、とても思えません。もちろん、世の中には低学力の子も大勢いますが、さすがにこの程度の平易な文章が読めないほどの子が、そんなにたくさんいるとは思えません。

 この調査結果を信用するならば、実はこれらの読めない子は、読めないことが悟られていないだけ…で、実はこの調査結果のように、多くの文章の読めない子が存在する…って事なんじゃないでしょうか?

 つまり、本当は文章なんて、ちゃんと読めないけれど、読解力以外の能力を駆使して判断をしていて、傍目からはきちんと文章を読んで理解しているように振る舞っているだけなのではないか…と、私は思うわけです。だって、本当に文章を正しく読み取って行動しているかなんて、傍目から見ているだけじゃ分からないよね。理解した上で行動しているのか、誤解して動いているのか、何かも考えずに直感で動いているのかなんて…他人の日常生活なんて、そんなに興味深く観察しないしね。

 では読解力に大いに欠ける人たちが、読解力以外の、どんな能力を使って、文章を判断して行動しているのかと言えば…ずばり『ヤマカン』でしょう(笑)。つまり、知的作業ではなく、直感的作業で、文章内容を判断して、日々の暮らしを営んでいるわけです。だって、そうとしか思えないじゃない?

 「ヤマカンって…。すとんさん、いくらなんでも、乱暴…」

 確かに乱暴かもしれません。ならば、ヤマカンという言葉を『キーワード選択』と呼び変えましょう。つまり、文章を(読むのではなく)ザーっと見て、目立ついくつかの単語(キーワード)をピックアップして、そこから自分の都合の良いように組み合わせて、判断する…のです。ほら、ヤマカンとやっている事、一緒でしょ?

 問題に戻ります。1)と2)は、キーワードが全く同じなので、同じ内容の文章だと判断して間違え、3)は『オセアニア』は文章内で『イスラム教』のすぐそばにあるので、“オセアニア=イスラム教”と判断して間違えるわけです。

 こんなレベルのストラテジーしか持ち合わていなくても、日常生活を送るには、大きな支障はないでしょうね。だから、こういう意地悪な(ごめんなさい)調査でもしない限りは、読解力の無さなんて、明るみに出ないわけです。

 そして読解力というのは、我々が思っている以上に、高度な知的作業だと言うことなのです。

 実はこの『キーワード選択』は、人工知能(ってか人工無能というか、単純な演繹だけで物事を判断する装置)が文章を判断する時の基本ルーチンなのです。つまり、読解力のない人は(高度な知的作業を放棄して)人工知能と同じ手続きで文章判断をしているって事になります。

 ちなみに、この基本ルーチンには(当然)限界があって、この基本ルーチンでは判断できない文というのは、山のようにあります。だから人工知能の研究者たちは「人工知能は、文章を判断できても、読み解くことはできない」と嘆いているわけです。だから、上にあるような設問だと、読解力の無い人同様、人工知能は、コロッとひっかかって間違えてしまうんだそうてす。

 人工知能と同じ事をやっていたら、人工知能の方が計算が速いし、扱えるテータベースも大きいのだから、いずれ人工知能に抜かれてしまいます。つまり、読解力のない人間は、いずれ人工知能にとって代わられ、ホワイトカラーの仕事ができなくなってしまうって話なのです。ほら、パソコンって事務仕事得意だからね…。

 逆に言えば、人間が人工知能に優っているのが読解力だから、文章を正しく書き、正しく読める人間、つまり文章作成&処理能力の高い人は、簡単に人工知能に仕事が奪われない…とも言えます。もちろんこれは、人工知能の文章判断ルーチンの発展にブレイクスルーが無ければ…という話ですが。

 それにしても、読解力の無い子って、こんなにたくさんいたんですね。子どもがこれなら、オトナだって推して知るべしです。おそらく、オトナも高校生と大きく変わらない割合で読解力の無い人がいるんでしょうね。

 日本国民の少なからぬ人数の人たちが、読解力が不足しているために、矛盾していたり、大声で叫ぶだけで中身のない発言とか、耳に心地よいだけの言葉、刺激の強い言葉などに惑わされて、その発言者の発言内容を吟味したり、その矛盾を見抜いたり、実現可能性や発言の妥当性などを、きちんと理解して評価できる読解力がないのだとしたら…あああ、なんと恐ろしい事だろう。

 “馬鹿の壁”ではないけれど、いくら正論を述べても、きちんと理解してもらえず、筋道立てて説明しても理解してもらえず、専ら刺激的で耳に心地よい言葉ばかりに反応するだけの人たちが、こんなにたくさんいるなら…民主主義も考えものかもしれません。

 たぶん、マスコミの人たちは、こういう事を、ずっと昔から経験的に知っていたんだと思います。

 なんか、とってもヤバイ箱を開いてしまったような気がします。

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コメント

  1. Hiro.MTB より:

    例題の1)と2)のような矛盾を、すとんさんが書かれた投稿本文中に(意図的に)仕込んでいるのではないかと思って4回読み直した私は、ただのひねくれ者でしょうか(笑)。

    実は「虚構新聞」にそのような記事があるのです。
    http://kyoko-np.net/2016062901.html

    この記事を読んで「あるある」と納得するか「おい、ここが(意図的に)間違ってるぞ」と気付くか。気付けないと楽しめない記事です。

  2. すとん より:

    Hiro.MTBさん

     虚構新聞読みました。最初のタイトルから「??」と来ました(笑)。

     私は自分の記事に、そんな楽しい仕掛けは入れないので、安心してください。私は、過去に読解力の大いに不足している人たちにひどい目にあった経験があるので、割と易しめの、読解力に欠けていても、誤解しづい文章を心がけて書いています。ほんとだよ。

     読解力に欠ける人は、自分に読解力が欠けているという自覚がないのが特徴なんです。思い込みが激しいというか、信念強すぎるというか、他人の話に耳を傾けないというか…。ほんと、厄介なんですよ、その手の人たちって…。

     だから私は、この調査結果を知って、ああそうだったんだ…と納得したわけなんです。

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